2010/01/30

麺と歯ごたえ

昨日夕食にパスタを食べたんだけど、超アルデンテだったのだ!
っていうか、固ゆでを通り越して普通に芯が残っている感じ・・・(>_<)
確かに日本ではアルデンテが好まれると言うけど、口の中でぼきぼきと折れる感触があるのはまずいよね(笑)

アルデンテはイタリア語で「al dente」(歯に・・・)という意味。
かんだときにかすかに歯に残った芯が当たるくらいのかみごたえという少しかためのゆで加減で、理想的なゆで加減とされるのだ。
スパゲティでもペンネでもラザニアでも、乾麺(?)になっているパスタには共通だし、お米を使ったリゾットでもかすかに芯が残るくらいのアルデンテがよいと言われるのだ。
でも、どうもそれって日本が過剰にそう思っているだけで、本場のイタリアではそんなにこだわっていないらしいのだ。
乾麺を食べることが多い南イタリアではそれなりに認知されているようだけど、そもそも生麺を食べることが多い北イタリアではあまり一般的でないらしいよ。
ソフト麺のように柔らかくゆでてしまう米国は別としても、欧州でも通常は「固めで」と頼まない限りはアルデンテでは出て来ないらしいのだ。
豚骨ラーメンなんかでは麺の固さを選べるけど、それと同じで本来は個人の好みで好きなゆで加減にすればよいのだ。

よくアルデンテの状態というのは(スパゲティの場合)髪の毛の細さほどの芯が残ってて、それがぷつんという独特のゆで加減になるというのだけど、これは本来ゆであげた時点での話。
パスタの場合はゆでた後に水でしめたりしないので、通常はそこからさらに余熱で火が通っていくのだ。
すると、ソースとからめて食卓に上るころにはその芯の部分にも火が通っているような状態になるはず。
逆に言うと、芯がなくなるまでゆでてしまうと食べるころにはすこし伸びている状態になるので、早めにあげておいて余熱で最後まで火を通す、というのがもともとのはずなのだ。

かつての日本では、スパゲティと言えばトマトケチャップで炒めたナポリタンが主流で、その場合はゆであげた後にさらに火を通すのでそもそもアルデンテなんて概念はなかったんだよね。
ところが、俳優から映画監督になった伊丹十三さんが海外では固めにゆでた「アルデンテ」という歯ごたえのある状態のパスタを食べる、とエッセイで紹介したころから、そういう「本場志向」が出てきたみたい。
で、今となっては、ファミリーレストランでもアルデンテと言って固めにゆでたパスタが出てくるようになったんだよね。
その結果、日本がアルデンテ大国になってしまったのだ。
本来は好きな固さにゆでて出してもらうのがよいんだろうけど、お店の側としては一定のゆで加減で統一した方が品質管理をしやすいので、アルデンテということで早めのタイミングでゆであげる、ということでマニュアルを作っていったんだろうね。

日本人が麺の固さにこだわるのは何も舶来のパスタだけでなく、そばやうどんでも同様。
のどごしを楽しむと言われるそばではそれほどでもないけど、うどんはそれこそ「コシ」ということでかなりのこだわりがあるよね。
よく言われるのは、讃岐うどん系のしっかりとコシのあるうどんがよいとか、関西風のやわらかいうどんがよいとかだよね。
めずらしいものでは、まったくコシが存在しないくらいまでしっかりゆでた伊勢うどんや、生麺を味噌味の出しで煮てしまう名古屋のみそ煮込みうどんなんてのもあるよ。
みそ煮込みうどんの老舗ではうどんに芯が残った状態で出てくるって話はわりと有名だよね(通称「アルデンテ」と呼ばれているのだ。)。

いわゆるうどんのコシはうどんをゆであげてから、冷水でしめることによって出てくるのだ。
コシと言われる弾力性の正体はうどんの中に含まれるタンパク質のグルテンと言われるけど、これはうどんの生地を練るときにこねればこねるほど弾力がますみたい。
讃岐うどんでは足で踏んでしっかりと生地を打つというよね。
たぶん、グルテンが全体に分散した方が弾力性が出るのだ。

でも、タンパク質は熱で変性していくので、ゆですぎるとかえって弾力が失われるわけ。
一方、うどんの主成分である小麦粉のデンプンはゆでることで糊化(こか)していわゆる麺の形状になるわけで、ちょうどよいゆで加減で抑える必要があるんだよね。
デンプンが糊化するとぬめりが出てくるし、余熱でそれ以上火が通らないようにゆであげた後に水でしめるのだ。
そうすることでコシのあるうどんができあがるわけ。
温うどんの場合は、それを再度新しいお湯で温めてからつゆに入れるんだけど、これを「湯だめ」というんだよね。
うどんをゆでるのはけっこう時間がかかるんだけど、湯だめにしておくことでさっと提供することができるのだ。

これに対し、水でしめないでゆであげた状態そのままで食べるのが釜揚げ。
これは時間の経過とともに余熱で火が通っていってしまってどんどんのびていくので、その場でさっと食べることが必要なのだ。
でも、釜揚げの場合はゆでたてのもちもちした食感が楽しめるということで人気があるんだよね。
水でしめるとそのもちもちした食感がコシに変わるのだ。

そんな麺の固さにはもともとこだわる日本人なので、ラーメンなんかだとゆで加減を気にするんだけど、パスタだけはアルデンテ一本槍なんだよね。
ま、これもそのうちゆで加減を選ぶのがスタンダードになるのかもしれないけど。
きっと、パスタでも種類やソースによって、固めがよいもの、むしろやわらかいものがよいものなんかがあるはずだからね。

0 件のコメント: