2010/03/20

マグロ問題はマクロな視点で

最近ニュースでよく取り上げられている食材と言えばクロマグロ。
日本人の食生活には欠かせない存在が禁輸措置で価格が高騰するかも、ということだったんだけど、なんとか回避できたみたいだね。
でも、クロマグロって超高級品だから、もともと庶民が口にする機会はごくごくまれだったような・・・。
更に手が出せなくなるってことかな?
で、せっかくなので(?)、今回はマグロについて調べてみたよ。

マグロはあたたかい海を回遊している大型肉食魚類のひとつで、海の食物連鎖でも最上位に位置する海の王様。
日本近海でもとれるけど、多くはインド洋や太平洋、大西洋といった外洋で水揚げされるのだ。
広い海を悠々と、というか、かなりの超スピードで泳いでいるんだよね。
その時速は最大で100ノットと言われるから、時速180kmを超える速さだよ!
おそろしく速く泳いでいるのだ。

でもでも、よく言われるように、マグロは泳いでないと死んでしまうんだよね・・・。
これは、自分でえらぶたを動かして呼吸することができないためで、えらぶたを開いた状態で泳ぎ続けることでえらに海水を通し、呼吸をしているのだ。
止まるとえらに海水が入らなくなり、呼吸できなくなるというわけ。
これはサメも同じだよ。

そのため、マグロは持久力に優れていて、その証拠があの独特の赤身なのだ。
赤身の肉質は筋肉中にミオグロビンが多い証拠。
これは有酸素運動に必要な酸素と結合するタンパク質で、人間でも長距離走のランナーは筋肉が赤いというのだ。
逆に、スプリント型の瞬発力が必要とされるアスリートは筋肉中にミオグロビンが少なくて肉質が白っぽくなるよ。
これが白身の魚で、普段はゆったり泳いでいるけど、とっさの時にさっと急加速や急展開して逃げ回るような魚に多いのだ。
さらに、マグロの場合は独特の紡錘形の体型による水の抵抗を抑え、より少ないエネルギーで泳げるようになっているんだ。
しかも、トロに代表されるように脂肪も蓄えているので、その脂肪を有酸素運動で燃焼させながら長時間の運動ができるようになっているよ。

ただし、常に泳いでいるためか、マグロは水揚げされてからも脂肪の燃焼が続いていて、放っておくと体温が上昇していってしまうのだ。
それにより、すぐに冷やしたり、尾の付け根を切って血を抜いて「活け締め」しめないと身が白っぽくなってしまうのだ。
これがいわゆる「身焼け」という現象で、せっかくの味が損なわれてしまうんだよね。
なので、つり上げられたマグロはすぐに氷水につけられたり、冷凍されたりするのだ。
そうしないと鮮度と味が保てないんだ。
泳いでいる間は海水でどんどん冷やされているようで、この体温上昇は侮れないもののようなのだ。

このマグロにもいくつか種類があって、その中でも最上等のものと言われるのが本マグロ。
今回まさに話題になったクロマグロだよ。
希少価値が高く、なかなか本物にはお目にかかれない高級魚なのだ。
次に高級なのはクロマグロとして市場に並ぶタイセイヨウクロマグロ。
本マグロが日本近海から太平洋にかけて生息しているのに対し、こちらは名前のとおり大西洋に生息していて、大きさもちょっと大きめみたい。
そして、インド洋のあたりにいるのがミナミマグロで、これが寿司屋でもよく名前を見かけるインドマグロ。
身に脂が豊富なので、寿司ネタのトロとして珍重されるのだ。

以上が高級マグロで、そのほかが庶民的(?)なマグロ。
その代表格は目が大きいことから名付けられたメバチマグロ。
日本での流通量は最大で、スーパーなんかで見かけるお刺身はこのメバチマグロが多いよ。
ツナ缶として加工されることが多いのはビンナガマグロ(ビンチョウマグロ)やキハダマグロ。
小型のマグロで、赤身が多く脂肪分が少ないのでツナ缶に加工されるんだけど、その中でもビンナガマグロはホワイトミートと呼ばれ高級品なのだ。
生食需要の高まりでビンナガマグロが「ビントロ」としてトロの部分が寿司ネタに使われることも増えてきたみたい。

いずれも世界的に食用に供されるようになったのでだんだん漁獲量が減ってきていて、それで絶滅危惧種に指定されているものもあるのだ。
今回のクロマグロの禁輸措置もそういった乱獲を抑制する意味合いがあったわけだけど、マグロを食べている国と輸出している国の意向が合致して賛成・可決に至らなかったようなのだ。
とは言え、そのままとり続けたら減っていくわけで、漁獲量を制限したりする必要はあって、その調整の枠組みはあるのだ。
さらに、ハマチなどの魚のように養殖の技術も開発されつつあって、現在では幼魚を育てるだけでなく、卵を孵化させてからの完全養殖にも成功しているみたい。
ただし、もともと長距離を回遊する性質があるし、皮が弱く、すぐに傷ついて死んでしまう、成熟に時間がかかるなどの課題があって、コスト高みたい。
ただし、とれなくなれば重要な技術にはなるんだよね。
ちなみに、稚魚から育てる養殖の場合、逆に稚魚の乱獲にもつながるので、生体数の維持という点では問題があるのだ。

マグロは日本ではかなりむかしから食べられていたことが知られていて、縄文時代の貝塚からも骨が見つかったりしているんだって。
でも、すぐに実が腐敗してしまって扱いづらく、今のように全国各地で食べられるというようなものではなかったようなのだ。
江戸時代には赤身を長期保存されるために醤油ベースの調味ダレにつけた「ヅケ」がメインで、それが寿司ネタにも使われていたようだけど、今とは違って下魚扱いで庶民の食べ物だったそうだよ。
お金持ちは鯛などの白身の魚を珍重していたのだ(落語の「目黒のさんま」もそうで、むかしは脂がのった魚はどちらかというと下品な食べ物だったのだ。)。
それが戦後になって冷蔵・冷凍保存技術が進んで流通が可能になると全国的に食べられるようになり、更に、味覚の変化で脂ののった身が好まれるようになると、トロがもてはやされるようになり、現在のように高級魚になっていったのだ。
近代化後もツナ缶に加工されることが多かったわけで、大きく扱いが変わったみたい。

ちなみに、俗にカジキマグロと呼ばれるカジキ類はマグロとはまったくの別種で、身の肉質や味がマグロに似ているのでそのように呼ばれるみたい。
カジキは口先が剣状に鋭く延びている分だけマグロより体長は大きいけど、ほぼ同じくらいの大きさの大型肉食魚類。
やはり海の食物連鎖では最上位に位置しているのだ。
カジキの場合、新鮮なものなら刺身も食べられるようだけど、主には焼いたり揚げたりと火を通すことが多いよね。
身は蛋白でありながら適度に脂ものっていてぱさつかないので、普通にソテーにしてもおいしいのだ。

マグロやカジキでもうひとつよく話題になるのは水銀等の生物濃縮の問題。
食物連鎖の頂点に立つので、水質の汚染があると、水銀などの有害物質が体内に貯まってしまうのだ。
これは水銀などの有害物質はなかなか排出されないので、体の中に蓄積されてしまうからなのだ。
マグロなんかは大量の小魚を食べるので、その分がどんどん貯まっていってしまうんだ。
なので、妊婦さんにはできるだけマグロやカジキなどの大型魚類を食べさせない方がよい、と指導されているよ。
最近はそういうところも気をつけないといけないから大変だよ(>_<)

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