2011/03/19

能と線

先週の大地震で福島では大変なことが起きているのだ!
そう、福島第一原子力発電所の事故・・・。
まだなんとか持ちこたえているけど、目が離せない状態なのだ(>o<)
で、この事故に関連して、新聞報道なんかでよく「放射能」とか「放射線」という言葉を見るようになったよね。
でも、実は必ずしも正確に使われなかったりするので、一度きちんとおさらいをするのだ。
正しい情報を得ることが何より大事だからね。

まず、誤解してはいけないのが放射能と放射線の違い。
放射線は放射性物質から出てくるエネルギーを持つ粒子の並や電磁波で、周りにあるものを電離させる(イオン化する)能力があるものなのだ。
それが靱帯に影響すると、タンパク質が破壊されたり、DNAが傷ついたりして傷害が発生するわけ。
で、その放射線を出す能力のことを放射能と言うんだよね。
よく「放射能漏れ」とか表現するけど、これは正しくなくて、「放射性物質漏れ」が正しいのだ。
一般には放射性物質のことを放射能と表現する傾向にあることから出てくるものなんだけど。

この手の話がわかってきたのは19世紀の終わり。
まさにキュリー夫人はこの分野の研究でノーベル賞を受賞しているのだ。
レントゲンさんによるX線の発見の後、ベクレルさんにより放射性物質であるウランの化合物を黒い紙で包んだ写真乾板の上に置いておくと感光する現象が知られるようになり、何かがウランから出ていることがわかったのが。
これがまさに放射線の発見で、この後、キュリー夫人と夫のピエールさんはいろんな鉱物から同じような放射線が出ていることをつきとめ、ポロニウムやラジウムを発見するんだ。
ここから一気に放射能の研究が始まるのだ。

歴史的に「何かが出ている」というところから始まったので、その「何か」である放射線を出す能力のことを放射能と呼ぶようになったんだ。
放射能の単位は国際標準ではベクレル(Bq)を使うけど、これは最初に発見したベクレルさんにちなんでいるんだよ。
ベクレルは1秒間に1つの原子核が崩壊して放射能が出す能力のこと。
以前はキュリー夫妻にちなんだキュリー(Ci)という単位を使っていたんだけど、これは1gのラジウムの持つ放射線を出す能力を基本としているのだ。
ベクレルでいうと1Ci=3.7×1010Bq=3.7MBqになるそうだよ。

ところが、放射線というのはいろいろ種類があって、有名なところでは、ヘリウムの原子核のアルファ線、電子のベータ線、高エネルギーの電磁波のガンマ線、中性子の中性子線などが知られているのだ。
放射能という観点で見るとどれでもいいからとりあえず放射線が出る、というところに着目しているんだよね。
放射能のサーベイに使われるガイガー・カウンター(ガイガー・ミュラー計数管)は筒の中に不活性ガスが封入されていて、それが放射線で電離されるときに出る電気で放射線を検知しているんだけど、放射線のエネルギーは測れないので、まさに放射能を計測しているのだ。

ところが、放射線は種類ごとにエネルギーが異なって、そのために影響度も違うのだ。
そこで、放射線が与えるエネルギーに着目した単位が放射線の強さを表すグレイ(Gy)。
1kgの物質が放射線により1Jのエネルギーを吸収したときが1Gy。
むかしは実際に気体1cm3にどれだけの電離を生じさせたかで定義されるレントゲン(R)という単位を使っていたんだけど、国際単位系に合わせるときにグレイが使われるようになったのだ。

さらに、人体への影響を評価するために、放射線の種類ごとの係数をかけるのがシーベルト(Sv)という単位。
今テレビでホットな(?)単位だよね。
ベータ線やガンマ線の場合は1なのでグレイ単位の数字と同じなんだけど、アルファ線だと20なので20倍になるのだ!
原子炉の中で大量に発生している中性子線の場合はエネルギーの大きさによって変わるんだけど、5~20なのだ。
ちなみに、放射線が人体に与える影響については文部科学省のHPにわりとわかりやすい資料「日常生活と放射線」があるよ。

でも、実はテレビではこの値は正確に表現されていないのだ(ToT)
報道で出てくる数字は線量率というやつで、単位時間当たりの放射線量を表す値。
一方で、人体に影響を与えるかどうかを評価するときは、実際に照射された放射線量で見る必要があって、さっきの資料は年間当たりの線量で書かれているよ(=年間当たりの線量率)。
報道でよく出てくる単位はシーベルト毎時(Sv/h)なんだけど、1時間その場に滞在するとそれだけの線量の放射線を浴びるということなので、線量で考えると、2時間なら2倍、30分なら半分で考えないといけないんだ。
ちゃんと積分値でどれだけの線量になるかを見ないといけないというのがポイントで、闇雲に数字が多きとか小さいとかで判断できないので注意なのだ!

加えて、外部被ばくと内部被ばくというのがあるんだよね。
外部被ばくというのは体の外に放射性物質が付着したり、体の外部にある放射性物質から出る放射線に当たることによる被ばく。
体に付着した場合は洗い落とせばよいし(これは報道では「除染」と仰々しく言っているのだ。)、外部の放射性物質の影響なら単純に離れればよいだけ。
内部被ばくは、放射性物質を含むほこりを吸い込んでしまったり、食べ物に含まれる放射性物質を摂取してしまった場合に起こる被ばくだよ。
すぐに体外に排出される場合もあるけど、ヨウ素なんかだと甲状腺ホルモンの材料としてのどにある甲状腺に貯まるし、ストロンチウムだとカルシウムの代わりに骨に沈着するので、けっこう長期間被ばくし続けるのだ。
でも、一般には、DNAやタンパク質が損害を受けても、生体は修復機構も持っているので、線量が小さくてすぐに体外に排出される場合は、外部被ばくより内部被ばくの方が影響が少ないと言われているんだ。
ただし、ヨウ素やストロンチウムのように長期間とどまり続けるものはずっと影響し続けるのでこわいんだよね・・・。

これでテレビで放射能や放射線の話が出てきてもだいたいどんなものかがわかるはずなのだ。
どれだけの時間を浴びるかによるので評価は難しいんだけど、額面上の数字の大きさだけに踊らされてはいけない、というのは重要なことだから覚えておかないとね。
なお、今のところ、避難地域より離れていれば、健康上影響があるレベルの放射線は確認されていないので、そんなに心配する必要はないみたいだよ。
もちろん、楽観視はできないんだけどね。

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