2011/08/06

風通しよく

節電ブーム(?)の今夏に注目されている、日本古来の道具と言えば、「すだれ」と「よしず」。
細い竹やアシ(ヨシ)を糸で束ねてシート状にしたものだよ。
ホームセンターなんかでは前から見かけたけど、今年は特に需要が高まっているそうだよ。
いまのボクのうちは賃貸マンションなのでなかなか使う場面がないけど、ちょっと使ってみたい気もするのだ(>o<)
風流だし、見た目が涼しそうだよね。

「すだれ」と「よしず」の違いは必ずしも明確ではないし、いろいろと説があるらしいんだけど、一般的には、軒に横向きにぶら下げて使うのが「すだれ」で、使わないときはくるくる丸めておくのだ。
一方、縁側などの屋外に縦向きに立てかけて使うのが「よしず」で、海の家や古い駄菓子屋さんなんかでよく見かけるよね。
こっちも使わないときはくるくると巻いておくわけだけど、丈があるからけっこう場所をとるのだ(ToT)
むかしだったら家の横にでも立てかけておけたんだろうけど・・・。

すだれやよしずはカーテンと同じように遮光して、その分太陽熱を遮断してくれるんだけど、一本一本の竹又はアシの間には隙間が空いているので、そこから風が通るんだよね。
これで涼しさアップなのだ。
むしろブラインドに近いのかな?
ブラインドだと光量が調節できるけど、すだれとかよしずはそこまではできないけどね。
でも、よしずの場合は水をかけておくと、隙間を通ってくる風が気化熱で冷やされるので、冷風機にもなるんだよ!
この機能はよしずの方が優れているよね(笑)

竹やアシを糸で編んだだけの単純な構造なので、その歴史は古く、すでに万葉集にも登場しているんだって。
それだけ長い間日本の風土・気候とともに生きてきたというわけ。
でも、これは機能面からだけじゃなく、文化的な意味でも使われていたんだよね。
例えば、天皇や公家なんかの偉い人は、下々の者が直接顔を見てはいけないので、御簾(みす)と呼ばれるすだれをはさんで面会したのだ。
ぼんやり姿がわかり、声も聞こえるけどはっきりとは見えない、そんな微妙な演出をする道具にもなっていたわけ。
これは一種の境界を意味するわけだよね。
その間は連続的ではなくて、「隔たりがある」ということを象徴的に示すものとして使われたのだ。
それだけ、すだれというものが内と外を区別する境界にある、という認識が広まっていたということだよ。

ちなみに、昭和の時代まではまだ国産品が多かったようなんだけど、河川の改修・整備などで日本産のアシが手に入りにくくなったため、現在では多くのものが中国産なんだって!
さすがに農薬とかを使っているというわけではないだろうけど、糸がすぐほどけてばらばらになったりと、丈夫さなんかには不安が残るよね。
何度も巻いたり広げたりするものだから、きちんとしたものを買った方が後々お得かも。
原産地標記(があればの話だけど、)注意してみよう♪

最後に、このすだれを名前をいただく偉大な科学機器の話。
それは、日本のX線天文学の草分け、小田稔先生の開発した「すだれコリメーター」だよ。
1970年代、宇宙の世界ではX線を放出している天体(X線天体)の存在が予言されたのだ。
ブラックホールや恒星(太陽を含む。)、中性子星などは電磁波としてX線を出しているのではないか、というもの。
で、それを観測するために作られたのがすだれコリメーターなんだよ。

X線は可視光や赤外線なんかと違って、鏡で反射させたり、レンズで屈折させたりができないのだ。
なので、進んでくるものをそのまま観測するしかないんだよね。
で、特定の方向からどんなX線が来ているかを観測しようとしても、いろんな方向から来るX線が混じり合って観測されてしまうので、よくわからなかったのだ(可視光などの場合は鏡の反射やレンズの屈折で特定の方向の光だけ取りだして観測することができるのだ。)。
そこで、指向性を持ったX線観測装置としてすだれコリメーターという装置が出てきたんだ。

原理は比較的単純で、複数のスリットを組み合わせて、その後ろに観測機器を置くだけ。
スリットを組み合わせるところがみそで、正面から電磁波が来る場合は、すべてのスリットをそのまますり抜けてくるので比較的強度の強い電磁波が観測されるんだけど、斜めから入っている場合は、最初のスリットは通り抜けても、次のスリットは通り抜けられなくなったりするのだ。
すると、その分だけ強度が弱くなるわけ。
これにより、入射方向で強度が違うので、スリット付の観測機器を全方向に回転させながら周波数ごとのスペクトルをとっていくと、どの方向からどんな周波数の電磁波が来ているかがわかるようになるんだ。

これは屈折も反射も使わず、遮蔽効果しか使っていないので、X線にも応用可能なわけ。
で、このスリットがすだれのようなワイヤーを縦に並べてものを使っていたので、「すだれ」コリメーターと命名されたんだ。
これで日本は世界に先駆けてX線天文学を作り上げていくんだけど、このアイデアも、身近にすだれがあったから思いついたのかもしれないよね(笑)
でも、(当時の)最先端の科学機器に「すだれ」って入っているのはちょっとおしゃれだよね(^o^)/

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