2012/10/06

揚げたら別物

ボクはもともと豆腐が好きなんだけど、その加工品も好きなのだ。
そう、厚揚げとか、油揚げだよ。
夏の暑い間は冷や奴がいいし、冬の寒い時期は湯豆腐がうれしいけど、春や秋なら少し焼いて温めた厚揚げなんかは最高なのだ。
生姜醤油で食べるとおいしいよね。

厚揚げと油揚げって、単に揚げる前の厚さの違いだけと思っていたらさにあらず!
厚揚げは水切りをした豆腐を一丁そのまま、又は半丁に切ってから、表面がきつね色になるまで揚げたもの。
仲間で火を通すことはせず、外はかりかり、中はなめらかな豆腐のまま、というものなのだ。
豆腐の食感が残ったまま香ばしくなっているのがポイントで、だからそのまま食べてもおいしいんだよね。
江戸時代には、厚揚げを網で焼いて縞状に焼き色を付けたものが酒の肴の定番で、青ネギをちらした「竹虎」、大根おろしをそえた「雪虎」として親しまれていたそうだよ。
表面を揚げてあることで煮くずれしづらく、味もしみやすいので、煮物にも使われるんだ。
しっかりと煮込まなくても表面に味が染みこむので、小松菜と炒め煮にしたりしてもおいしいよね。

一方、油揚げは専用の豆腐を作ってから、それを薄く切って揚げたもの。
仲間でしっかり火が通っていることがポイントで、独特の食感が出るのだ。
豆腐とはまったく違うよね。
厚揚げが高温の油でさっと揚げるのに対し、油揚げは低温で揚げて膨脹させてから、高温の油でもう一度揚げてかりっとさせるんだって。
よく膨脹するように、揚げる前の豆腐はもともと薄めの豆乳でしっかり堅めに作るようなのだ。
よく揚げることで中までスポンジ状になって、味がしっかりと染みこむわけ。
いなり寿司やきつねうどんの揚げなんかはおいしい汁を吸ってなんぼだからね(笑)
袋状に開くことができるのもミソで、それでいなり寿司や巾着などが作れるのだ。
でも、厚揚げに比べると油がよく染みこんでいるので、しっかりと油抜きをしないとしつこいよ。
ここで手を抜くとおいしくないのだ(>o<)
ちなみに、新潟名物の栃尾揚げは油揚げと厚揚げの中間のように感じるけど、中までしっかり火が通っているので、分厚い油揚げという位置づけなのだ。

豆腐の伝来自体は奈良時代と古いけど、食材として広く使われ始めるのは室町時代の終わりから。
実際に庶民の食卓に並ぶようになるのは江戸時代からで、そこから全国的に普及したみたい。
肉食をあまりしなかった江戸時代の人にとっては重要なタンパク源で、納豆や豆腐といった大豆加工品は重要な食材だったのだ。
油揚げはすでに江戸時代初期の文献にも登場しているそうで、同時期に料理として発達した天ぷらからの着想ではないか、という説も。
おそらく、もともとは豆腐をそのまま揚げてみて厚揚げが生まれて、その後、薄切りの豆腐をしっかり揚げて油揚げができたんじゃないかと思うのだ。

油揚げと言えばおいなりさんの好物だけど、もともとキツネが好きだったのはネズミを油で揚げたもの。
でも、そんなものはお供えしづらいので、精進ものの豆腐を揚げた油揚げが供えられるようになったんじゃないかと考えられているのだ。
さらに、そこから油揚げがキツネの好物に変わり、それで市にメタ油揚げが入ったうどんはきつねうどんとなっていくのだ。
でも、本当は稲荷神はインドの荼枳尼天(だきに)天なので、乗っているのは野干(やかん)。
野干は野狐などとも言われるけど、本来はジャッカルのことなのだ。
日本にはジャッカルが生息していないので似ているキツネが当てられただけ。
そういう意味では、稲荷と油揚げは実はそんなに関係していないのだ。

また、油揚げで巻いたものを信田(しのだ)巻き、きつねうどんの別名をしのだうどんなどと呼ぶことがあるけど、この信田というのは「葛の葉」伝説から来ているのだ。
平安時代に安倍保名(やすな)が信田の森を訪れた際、猟師に追われていた白狐を助けるのだ。
実はこのキツネを年を経て妖力を持つに至ったキツネで、「葛の葉」という女性に変じて、その際にけがをした保名の見舞いにやってくるのだ。
やがて二人は結ばれ、生まれた子どもが後の安倍晴明。
安倍晴明が5歳になる年に保名に正体を気づかれ、葛の葉は森へと帰っていった、という話だよ。
天下に名だたる陰陽師の安倍晴明の力の源を空かすエピソードとして有名なのだ(けっきょく人外の力、という整理なんだけど。)。
で、その連想で、キツネ=>信田、となるわけなのだ。

こういった言葉遊び的な名前が付けられるのも、それだけポピュラーな食材だったという証拠なんだろうね。
肉を食べるのもよいけど、たまには揚げでヘルシーにすますのもよいことなのだ♪
ただし、豆腐って意外とカロリーが高いし、油揚げや厚揚げは油で揚げた分さらに高いので、そんなにダイエット効果は期待できないよ(笑)
コレステロールなんかはだいぶ抑えられるけどね。

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