2013/10/12

カラータイマー点滅?

夕ごはんにハンバーグを食べたんだけど、そこでちょっと不思議なことがあったのだ。
自家製ハンバーグだと、買ってきた赤い挽肉にタマネギなど具材とパン粉などを混ぜて、しばらく休ませてから焼くよね。
そうすると、ハンバーグの種の色は、混ぜた直後はピンク色だったものが、休ませた後は茶褐色になっているのだ。
これが普通だと思っていたんだけど、よくよく見てみると、スーパーとかで売っているできあいの(=焼くだけ)のハンバーグはきれいなピンク色のまま!

なんか危ない添加物でも入っているのかと思いきや、入っているのはせいぜい酸化防止剤やpH調整剤なんだよね・・・。
ハムやソーセージのように発色剤は入っていないようなのだ。
で、一体何が起こっているんだろ?、と思って、ちょっと調べてみたわけ。
この変色の原因は、筋肉の中で酸素を貯蔵する役割のあるミオグロビンが関係していたのだ。

ミオグロビンは筋肉に含まれる色素タンパク質で、通常は血液中のヘモグロビンから酸素を受け取って、筋肉がエネルギーを使うときにミオグロビンで貯めた酸素が消費されるのだ。
ヘモグロビンよりミオグロビンの方が酸素の親和性が高いので、自然に酸素が受け渡せるんだって。
よくできているものだよね。
このミオグロビンにも、ヘモグロビンと同様にヘム構造があって、その中心にある鉄イオンが酸素との結合に関係しているのだ。
ミオグロビンの色の変化は、血液の動脈と静脈の血液の色の違いと同じで、酸素との結合に原因があるみたい。

酸素と結合していない状態のミオグロビンのヘム鉄は、還元型のFe2+
になっていて、このままだと暗い赤紫色なんだよね。
ちょうど静脈の酸素結合度が低いときの血の色だよ。
ここに酸素イオンが配位すると鮮やかな赤色(鮮紅色)になるのだ。
動脈の真っ赤な血の色と同じ。
で、酸素が結合したままで放置されると、ヘム鉄の鉄イオンが酸化されてFe3+になるんだけど、これは鉄の黒さびの色で、暗褐色になるのだ・・・。
これは血痕の赤黒い血の色と同じだよ。

食肉の場合、切り出したばかりの状態だと、まだ酸素が結合していないので、少し暗い色をしているのだ。
これが空気中の酸素に触れると、ヘム鉄に酸素が配位して鮮やかな赤に変わるのだ。
これが肉屋さんなんかで並んでいる状態。
お肉屋さんでスライスを頼むと、肉の薄切りが重なった部分ではまだ空気に触れていないので、暗い色をしていることがあるのだ!
離してしばらく放っておくと赤くなってくるよ。

生体中だと酸素が結合してヘム鉄が酸化された後、まわりの酵素によりもう一度ヘム鉄が還元されるので色が元にもどるんだけど、食肉の場合は酸化されるとそこでおしまい。
なので、赤い肉は鮮度が落ちてくると茶色く変色してくるのだ。
通常は腐敗臭もしてくるからそれでも傷んでいることはわかるよね。
切りたての暗い色と、傷んでいるときの褐色では微妙に色も違うみたいだけど、普通は並べてみないからわからないよね・・・。
そういうときはにおいや味(酸味や苦みがあるかどうか)で確かめよう!

ハンバーグの場合、ただでさえ表面積が広い挽肉を使うので肉の中のミオグロビンが酸化されやすいんだけど、さらに空気を混ぜ込んでこねるため、ますます色が変わりやすくなるのだ。
なので、自家製ハンバーグで色が多少茶色くなるのは仕方がないことなんだ。
だけど、売り物で茶色くなってしまうと傷んでいるのと区別がつきにくいので、市販品の場合は酸化による着色をさけるために、酸化防止剤やpH調整剤を入れるのだ。
酸化防止剤でよく使われるのはビタミンC(アスコルビン酸)。
非常に酸化されやすい物質なので、代わりに酸素と反応し、身代わりになってくれるのだ。
pH調整剤に使われるリン酸塩は、pHを一定に保って酸化反応を起こりにくくするだけでなく、肉の結合材としても作用するので、こねたハンバーグがばらばらになりにくくなるのだ。
これが売り物のハンバーグは色も変わらないし、くずれにく理由だよ。

一方、ハムやソーセージなどの場合は発色剤が使われるんだよね。
よくあるのが亜硝酸ナトリウム。
ヘム鉄を化学的に修飾して、きれいなピンク色に発色させるのだ。
具体的には、-NO基(ニトロソ基)がヘム鉄に結合することで、ヘム鉄は安定化し、色も固定されるんだ。
ただし、劇物指定もされているし、危ない物質ではあるので注意が必要だよ(>o<)
スーパーに並んでいるハムやソーセージは、塩漬けにする(塩せきする)時に発色剤を入れるんだ。
これは色調を整えるだけでなく、獣臭さをなくし、雑菌の繁殖を抑えるため、と言われているよ。
最近では発色剤不使用のものもあるけどね(っていうか、もともとの伝統的なハムでは使わないんだけど。)。
日持ちをさせるためにはある程度仕方がないので、残存量で基準値が決められていて、それで規制されているのだ。
さすがに既製品ハンバーグでは使われていないみたい。

というわけで、肉の色にはカラーたーまーのような秘密があったのだ。
でも、通常は牛肉くらいしか色味はあまり気にならないよね・・・。
ブタやトリだとミオグロビンの量が少ないので、目に見えて色が違う、とは感じづらいみたい。
ヒツジとかウサギ、シカなんかだと赤身肉でミオグロビンが多いから違いがわかるんだろうけど。
ちなみに、この話はマグロの赤身でも一緒で、切り立てのマグロはちょっと暗い色で、空気に触れると鮮やかな赤になり、古くなると茶色くなるのだ。
ま、マグロの切りたての色なんて築地にでも行かないと見られないけど(笑)

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