2016/02/20

そう言えば、なんか違和感を感じていた(笑)

米国の研究チームが、つに重力波の検出に成功したと発表したのだ!
重力波というのは、質量を持つ物体が加速度運動するときに生じる空間(重力場)のゆがみのことで、アインシュタイン博士が一般相対性理論に基づいて予言していたんだけど、長年直接的な観測ができなかったもの。日本もカミオカンデのある網岡鉱山跡に大型低温重力波望遠鏡(LCGT)「KAGRA」を整備していて、まもなく観測を始めるところだったのだ。
欧州でも観測をしていて、今後、米国以外のチームが重力波を観測することができるようになると、先の米国の発表は本当だったのかがまずわかり、その後、重力波の謎が徐々に解明されるかもしれないんだって。

実は、ボクたちも質量を持っているので、走ったりするとその周りの重力場はゆがんでいるんだ。
動くとなんか歪みを感じるよねぇ(笑)って、そんなわけはなくて。
この重力場のゆがみというのはものすごく小さなものなので、よほど大きな質量を持つようなものが動く場合でないと重力波として観測することは不可能なんだよね。
そこで、世界中の研究者は、ブラックホールやパルサーやらの宇宙空間にある巨大質量の天体の動きに起因する重力波を検出しようと競争していたのだ。
でも、それでも「さざ波」程度のものなので、技術的に観測が難しかったんだって。

間接的な証拠としては、互いに引き合いながら回転運動をしている連星パルサーという天体の周期を精密に観測することで、重力波というものがあるらしい、というのはわかっていたのだ。
連星パルサーは名前のとおり、ふたつのパルサーが互いに引き合いながら一体となってくるくる回転しているんだけど、どうも天体の間の距離が微妙に縮まっていて、それで回転の周期が変化していることがわかったのだ。
これは、それぞれのパルサーが共通の重心を中心に引き合いながら書いてぬんどうをするときに重力波が発生していて、その重力波の分だけエネルギーが失われることにより、徐々に近づいていく、ということのようなんだよね。
(仮に何もエネルギー損失がない場合には天体間距離は変わらないはずなのだ。)

で、この間接的証拠からエネルギーとしてどの程度の重力波が発生するかが予測できるわけだけど、これがごくごく小さなもの。
重力波は減衰することなく光の速さで伝わるんだけど、あまりにも小さすぎるのでノイズとの区別がつかず、観測できなかったみたい。
それを技術で工夫して、今回検出にこぎ着けたんだよ。

その検出方法の世界的なトレンドはレーザー干渉計(マイケルソン干渉計)を使ったもの。
光源から出たレーザーをビームスプリッターという装置でそのままの方向に進む光と、直角に曲がった方向に進む光に分けるのだ。
それぞれの光の進む先には鏡があって、レーザー光が反射され、その反射光を検出するんだけど、反射光もビームスプリッターで分離されてしまうので、実際には、もともとまっすぐだった光は反射してから曲げられた光が来て、先に曲げられた光は反射してからは直進する光が来るのだ。
何も起こらなければ光の進む距離の違いで干渉が起こるんだよね。
すなわち、光に「山」と「谷」の波があるので、「山」が重なれば強い光が検出され、逆に「谷」が重なると暗くなる。
「山」と「谷」が合わさると相殺してしまって光が弱くなるのだ。
これが「干渉縞」として観測されるんだよね。

重力波が到達すると、空間がゆがんでしまうので、それぞれの光の進む距離が伸びたり縮んだりするのだ。
理想的には片方は縮んで、片方は伸びるんだそうだよ。
でも、その大きさが、太陽と地球の距離に対して原子1個分くらいのゆがみ・・・。
なので、観測が難しいのだ。
KAGRAではレーザー光が進む距離が片道で3km、米国で重力波の観測に成功したLIGOの場合は4kmだよ。
地球が丸いので、どんなにがんばっても片道4kmとるのが限界なので、これ以上の長さでやるとなると、宇宙空間に出て人工衛星を使ってやるしかないんだけど、そういう構想もあるみたい(人工衛星の位置を精密に制御できないので実現はまだまだのようだけど。)。

我が国のKAGRAの場合は、工夫をすることで観測精度を上げているのだ。
ひとつは、地下深くに置くことで、地面の振動によるずれのノイズを下げること。
実は、国立天文台の三鷹キャンパスの地下にも小型の重力波望遠鏡のTAMA300というのがあるだけど、近くの産業道路を大型車両が通っただけで観測データがダメになるらしいんだよね・・・。
もうひとつの工夫は、徹底的に冷やすことで観測装置の熱振動を抑えること。
熱があると鏡も検出器も振動しているので、それがノイズとしてきいてくるのだ。
なので、KAGRAの場合は液体ヘリウムで冷やしながら観測するんだよ。

昨年ノーベル賞を受賞した梶田先生は、このKAGRAを整備している東京大学宇宙船研究所の所長だけど、米国の成果を賞賛していたよね。
初の観測実績は逃したけど、これからは国際共同で観測を進め、各地の観測装置でデータを集めることで、重力波の発生源の方向や距離などもわかる可能性があるので、まさに研究としてはこれから、ということのようなのだ。
なので、まだまだ挽回のチャンスがあるので、日本もKAGRAを使って研究をしてきたいってことなんだって。
本格稼働は来年になるみたいだけど、期待が高まるね。

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