2016/11/12

ジャンクなパリジャン

フランスはパンとハムとチーズがおいしいから、サンドイッチもめちゃくちゃおいしいのだけど、いかんせん、秋冬の寒い時期に冷たいものを食べる気にならないんだよね・・・。
そこで代わりに食べるのが、パリでは「グレック・サンドイッチ」と呼ばれるもの。
日本で言うケバブサンドなのだ!
通常は、単体だと5~6ユーロで、フライドポテト(ポムフリット)と缶ジュースがつくセット(menu)で6~7ユーロくらい。
イメージとしては、マックやサブウェイのようなジャンクフードだよね。
土日も夜遅くもやっているし、量も多めなので、若い人や男性に人気なのだ。
イタリア発祥のホット・サンドイッチのパニーニもあるけど、こっちは土日や夜には食べられないのが難点。

パリ以外では「グレック」とは呼ばないらしいんだけど、この「グレック」は「ギリシアの」という意味。
ケバブサンドはトルコのものと思いがちだけど、ギリシア経由で入ってきたから、とか言われているのだ。
でも、調べてみると、実はややこしいことがわかってきた・・・。
ケバブサンドに使われるのはドネルケバブで、「ドネル」は「回転」、「ケバブ」は中東地域でよく食べられる「串焼き肉」のこと。
長い串に羊肉や鶏肉を刺して大きな塊を作り、それを回転させながら焼くという今のドネルケバブは、トルコ発祥と考えられているのだ。
それをサラダとともにパンにはさんでサンドイッチにしたのは、ドイツのトルコ系移民のお店が最初と言われているんだよね。
でも、ギリシアにもケバブとほぼ同じ料理で「ギロ」というのがあって、これをピタにはさむ「ギロピタ」というのがあるのだ。
パリについてはこっちが伝わったってこと?

実際にはケバブサンドの正式な発祥はよくわかっていなくて、19世紀くらいにドネルケバブをサラダと一緒にパンにはさんで食べる習慣ができて、それが欧米ではファストフードとして広まった、ということみたい。
日本に広まったのは21世紀だからだいぶ時間がかかっているよね。
ちなみに、日本人にはきついスパイスや羊肉はあまりなじまないので、日本で食べられるケバブサンドは本場の味とはかなり遠いと言われているよ。
タコスなんかもそうだけど、相当日本風にアレンジされているのだ。
ボクがパリで買っているグレック・サンドイッチも、羊肉の臭さや強いスパイスを感じないから、やっぱりフランス人の口に合うようにアレンジされているみたい。
どうも、中東のケバブは肉自体に強めの味がついているので、サンドイッチにするにしてもあまりソースは使わないみたいだけど、欧米に広まっているものは肉の味が弱めなので、サンドイッチにするときにはケチャップやマヨネーズ、ハリッサと呼ばれるチュニジア風の唐辛子ソース、サムライソース(ケチャップとマヨネーズを混ぜてハリッサを加えたもの)などを使うのだ。
あまりチェーン展開されていなくて、中東系の移民が独自に店を開くスタイルが主流で、そこがハンバーガーとはちょっと違うみたい。

パリにおけるグレック・サンドイッチにもいろいろとメニューがあって、ドネルケバブを挟むだけではないのだ。
ケフタ(kefta)というのはトルコ料理でキョフテと呼ばれるミートボールをはさむもの。
ステック(steak)は、ハンバーガーにはさむミートパティを使うのだ。
ブロシュット(brochette)は、本来は串焼きの肉の意味だけど、たいていはスパイシーなタレに漬け込んだ鶏肉を焼いたものがはさまれるのだ。
エスカロップ(escalope)は鶏胸肉をカツレツにしたもの。
メルゲ(merguez)は、中東風の生ソーセージを焼いたものをはさむよ。
いずれにしても、ちょっとオリエントな味わいになるんだよね。
これに目玉焼きやチーズなどのトッピングもできるんだ。

ファストフードとしてはなかなかよくできていて、数分待つと温かいサンドイッチが食べられるよ。
店にある簡易なイス席で食べてもいいし(「sur place」)、持ち帰ってもよいのだ(「a emporter」)。
フライドポテトをつけるのはフランスの特徴みたい。
それと、飲み物(「boisson」)は基本は冷たい缶ジュースで、なぜかホットコーヒーとかは選べないのだ。
これはフランスのファストフード全体に言えることで、アジア系総菜屋(「traiteur asiatique」)でも、料理はレンジで温めてくれるんだけど、ついてくるのは冷たい飲み物なんだよね。
温かいお茶とかがあればいいのに、といつも思う。
っていうか、日本のように温かいソフトドリンクがあるのって逆に珍しいのかな?

0 件のコメント: