2017/03/11

生搾りリンゴ

フランスに来てからよく見かけるようになったのが、リンゴのお酒のシードル。
ビールとともに、アルコール度数の低いお酒としてかなりメジャーな存在なのだ!
それに、ガレットを食べるときにはつきものなんだよね。
どちらもブルターニュの名産。
フランスではかつて水事情がよくなく、生水が飲めなかったので、アルコール度数の低いシードルは飲料として重要だったみたい。
アルコールに比較的弱い日本人にはなかなか理解しづらいけど(笑)

このシードル、製法はいたって簡単なのだ。
リンゴを皮ごとつぶして果汁を搾り、発酵させる。
これだけ。
リンゴの皮には天然でアルコール発酵を行う酵母がついているので、皮ごと果汁を搾ればいいんだって。
ただし、日本のように湿度が高いと、他の雑菌が繁殖する可能性があるので、そうは簡単にいかないけど。
それでも、それに気をつければ、家庭でも作れるものみたい。
実際、英や仏ではかつて家庭で作っていたみたいだし。
ただし、日本の場合は酒税法の関係で勝手にお酒を醸造しちゃいけないので、注意が必要だよ(アルコール度数が1%未満に抑えられればいいみたいだけど、市販のシードルは4~5%くらいみたい。)。

シードルの材料となるリンゴはそれ用のもので、しかも、甘みが強いもの、酸味が強いもの、少し渋みがあるものなどいろいろと種類があるみたい。
単純な製法なので、材料となるリンゴによりかなり風味が変わるようなのだ。
それと、発酵期間を調節することで、アルコール度数が比較的低くて甘めなもの、とか、アルコール度数が高くて辛口のもの、などなど種類も豊富なんだって。
フランスに来るまでそこまでバラエティがあるとは知らなかった・・・。

工業的な製法としては、生搾り果汁をそのまま発酵させるんじゃなくて、果汁を濾過したりして濁りを除いた後、人工的に酵母を加えて低温で発酵させるんだって。
発酵が終わった後に遠心分離・濾過して澱を取り除き、瓶詰めするのだ。
いわゆる「火入れ」はせずに発酵を熱で止めないので、瓶の中でも多少は発酵が進んで、発泡性のお酒になるよ。
シャンパンなどのスパークリングワインは、まずはベースとなるワインを作ってから、それに糖分と酵母を加えて二次発酵させ、同じように瓶詰めするのだ。
なのでアルコール度数が高いんだけど、シードルの場合は果汁を発酵させるだけなので、そこまでのアルコール度数にはならないのだ。

日本で本格的に発泡性リンゴ酒のシードルが作られ始めたのは戦後のようなんだけど、実は、戦前にニッカウヰスキーがアップルワインという名称でリンゴ酒を製造していたのだ。
朝の連続ドラマ「マッサン」で有名になったけど、もともと余市にウイスキー工場を作ったとき、ウイスキー製造には数年の時間がかかるので、まずはリンゴジュースの製造・販売から始めたんだよね。
そのリンゴ果汁を使って、非発泡性の醸造酒を造ったのだ。
そう言えば、ドラマにもアップルワインが出てきたような・・・。
今でもニッカのシードルは日本で売られているけど、これは戦後にアサヒ飲料が始めたシードルをニッカが引き継ぐ形で作っているものみたい。

シードルはアルコール度数が低いのだけど、これを蒸留してアルコール度数を高くしたのがカルヴァドス。
ただし、カルヴァドスはシャンパン同様に原産地呼称規制(AOC)の対象で、ノルマンディー産リンゴを基にしたもの以外はアップルブランデーと呼ぶんだそうだよ。
カルヴァドスを作るときには、いろんな風味のシードルを混ぜて作ることが大事なんだそうだよ。
さらに、リンゴだけでなく、洋なしが原料に使われることもあるそうなのだ。
このブレンドで蒸留酒になった後の風味がかなり変わるようなのだ。
これには熟練の技と知識が必要とされるみたい。
日本ではどちらかという製菓用のお酒のイメージなので、そこまでこだわりがあるとは思わなかったよ。

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