2017/05/13

どっちが起源

フランスに来てから、豚ひき肉が手に入らなくて困っていたんだよね。
ところが、実は普通にスーパの精肉コーナーになったのだ!
でも、それをよくよく見てみると・・・。
「ファルシ用」豚肉と書いてある!
そうか、ファルシに使うものか、ってファルシってなんだ?、となったわけ(笑)

ファルシというのは、いわゆる肉詰め料理。
日本ではピーマンの肉詰めがおなじみだけど、フランスでは、トマトのファルシをよく見かけるよ。
ナスやズッキーニなんかもあるのだ。
さらに、葉ものでひき肉のたねを包んだものもファルシ。
つまり、ロールキャベツもファルシで、フランスでは、シュー・ファルシというのだ。
フランスってあんまり豚肉を食べないみたいなんだけど、ファルシには使うんだね。

で、このファルシとうのは「farcir(詰める)」という同士から来た名前で、もともと「詰め物料理」ということのようなのだ。
西欧では、古代ローマの時代だから、ウサギや鶏などの内臓を除いて、そこにハーブや香辛料を詰める料理があったそうなのだ。
そう、韓国の参鶏湯(サムゲタン)のようなイメージ。
内側に香りのものを詰め込んで、おいしく食べようというものなのだ。
これがファルシという料理の起源だと言うのだけど・・・。
あれ、なんか今のものと違う。

むしろ、ギリシアにあるブドウの葉で肉などのフィリングを包む料理の方が近いよね。
これはドルマというのだけど、実は中東生まれの料理。
現在のギリシア料理はトルコ料理を通じてアラブ世界の影響を強く受けているのだ!
ギリシアだけでなく、東欧で、トルコの影響があったような国には似たような料理が残っているらしいよ。
今のフランスの野菜の肉詰めのファルシは、これがさらに西欧まで伝播してきたものじゃないかと思うんだよね。
同じ「詰め物」料理だから、名前がファルシになっただけで。

中東のドルマはと言うと、トルコ語の「dolmak(詰める)」の過去分詞(=「詰められた」)から来ているんだって。
そう、語源もフランス語のファルシと同じなのだ!
これはますますあやしい。
ちなみに、アラビア語でも「詰められたもの」を意味する「マハシー」という名前なんだって。
日本語の「肉詰め」も同じだけど、どこでも同じような名付け方なんだね。
ちなみに、英語で肉詰めピーマンは「stuffed pepper」なので、やはり「詰められたピーマン」だよ。

中東のドルマは、すでにササン朝ペルシアの時代にあったようなのだ。
6~7世紀くらいみたいだよ。
このときの料理法は、まさにブドウの葉で何かを包む、というものだったみたい。
中世になると、イスラム世界ではすでにマハシーは一般的な料理になっていて、それがトルコ帝国によってさらに幅広く伝播されたんじゃないかと思うんだよね。
野菜と肉の取り合わせというのが万国共通で好まれているんだろうね。

一方で、古代ローマの肉にハーブなどを詰める料理法も現代に生き残っていいるよね。
今でもローストチキンを作るときは、内臓を除いた腹腔にハーブなどをつめるし、サンクスギビングの七面鳥もそうなのだ。
ジビエ料理では、臭みをとるためにこういう料理が特に大事なのだ。
英国料理として名高いハギスは、羊の胃の中に羊の他の内臓の詰め物をするものだけど、詰めるという発想は同じかもね。
詰める中身が斜め上の発想なだけで(笑)

でも、こうやって考えてくると、不思議なのは、フランスで売られているファルシ用の肉が豚肉であること。
中東から来たものなら、豚はダメだよね。
フランスのファルシも必ずしも豚ではないのだけど、スーパーで売られるくらいメジャーな詰め物用の肉であることは確か。
素材との相性の問題で、クセが比較的弱い豚肉の方がおいしい、ということなのかな?
これは、ムスリムでない国の発想だよね。

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