2018/04/07

国鉄改革

フランスでは、マクロン大統領が目指しているフランス国鉄(SNCF)の改革案に反対して大規模なストライキが始まったのだ。
現在のフランス国鉄は「商工業的公施設法人」というもので、特別の法律で設立される公的性格を有する企業体なので、日本で言う「特殊会社」に近い形態みたい。
今回の改革では、フランス国鉄職員に認められている様々な優遇措置(年金、家族は無料で鉄道が利用できるなど)を徐々に廃止していこうというもの。
既得権益が侵されるということでストにつながったみたい。

日本でも国鉄こと日本国有鉄道が分割民営化されるときも大きな騒ぎになったよね。
日本の国鉄は、戦前鉄道省が直接運営していた「省線鉄道」が戦後の1949年に役所から離れた公共企業体である日本国有鉄道として分離したのだ。
これが1987年に中曽根内閣の行政改革の目玉として分割民営化され、JR各社が生まれたのだ。
ちなみに、JR各社は公共性を有しているということもあって、まずは独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(当時は日本国有鉄道清算事業団)を介して日本国政府が株式を有する特殊会社の形で分割民営化され、その後、運営状況が健全な会社から完全民営化に移行しているのだ。
現在までに完全民営化に移行しているのは、東日本、東海、西日本、九州の4社だよ。

実は、この日本の民営化路線は世界でも先行した取組で、このときの教訓を活かす形で各国の民営化が行われているようなのだ。
英国なんかは日本と同じような分割民営化のようなんだけど、ドイツは1社のままの民営化だって。
更に大きく異なるのは、欧州連合(EU)加盟国の場合、EU指令に基づいて、いわゆる「上下分離」が行われているのだ。
すなわち、インフラとしての鉄道網を保有し、管理する会社と、実際に鉄道を運行する会社に分離するというもの。
多くの場合、インフラ会社は政府又は公的な主体が運営し、運行会社が路線使用料を支払ってそのインフラを使わせてもらう、という形式になるよ。
「オープン・アクセス」なので、理論上は鉄道運行については競争が生まれることとなり、新規参入もできるのだ。
実際に、貨物路線では新規参入も見られるみたい。

これは電力やガス、電気通信の民営化でも見られるもので、インフラを公的なものとしつつ、そのインフラを活用するビジネスは自由競争とするのだ。
日本でも、電力は完全自由化したし、携帯電話も仮想移動体通信事業者(MVNO)が出てきているよね。
インフラのオープン・アクセスを確保して、競争原理に基づく適正なビジネス環境の整備を目指すものなのだ。
実際に電気、ガスなどの公共料金が安くなると言われているよ。

逆に、インフラと運用を切り離さずに一体化しておくのが「垂直統合型」。
サービスの利用形態の変化によりインフラも改善していかないといけないんだけど、インフラと運用を切り離してしまうと、そこに不備が出てしまうので、一体不可分であるべき、とする考え方だよ。
フランスでは、いったん上下分離がなされたんだけど、インフラ会社の方がダイヤを組むところに運行会社が不満を持ってもめ、けっきょく垂直統合型になった、という経緯があるそうだよ。
ただし、インフラ会社と運行会社はそのままあって、その上に統括・調整を行う上位の会社を作ったということみたい。
それが2015年のことというから、つい最近なんだね。

そんなにフランスの鉄道を利用しているわけではないんだけど、かなりサービスは悪いんだよね・・・。
そもそも、どのプラットフォームから発車するのかは10分前にしかアナウンスされないし。
運行の技術的問題でそうしかできなとか言っているらしいけど、日本なんかではもっと複雑なダイヤで時刻表に何番線から発車なんて情報を載せているんだから、やろうと思えばできるはずだよね(笑)
このほか、やっぱり非効率にしか見えない部分がたくさんあって、万年赤字を解消するため、そういうのを解消したいというのがマクロン政権の意思なんだよね。
今回のストの実施でそれが変わるのかどうか。

0 件のコメント: