2018/05/19

かたいクリーム

フランスに来てびっくりしたのが、けっこう「バタークリーム」を使ったケーキが売られていること。
日本では生クリーム(ホイップクリーム)ばかりであまり見かけなくなっているし。
でも、よく考えてみると、フランスのクリスマス・ケーキであるビュッシュ・ド・ノエルはバタークリームだし、ダロワイヨが開発したチョコレートケーキの「オペラ」も本来はバタークリームだよね。
フランスにはおいしいバターがあるから、バタークリームなのかな?、という気がしてきたのだ。
でも、ちょっと調べてみると、もう少し別の理由がありそう。

そもそもなぜ日本で最近生クリームばかりになったかというと、冷蔵・冷凍の技術が普及したから、なんだよね。
特に流通面でのシンポが大きいのだ。
キンキンに冷やしたまま運べるようになった、というのが大きいよ。
というのも、生クリームはバタークリームよりもとけやすいから。
むしろ、バタークリームはとけにくいので、冷蔵技術が発達・普及する前によく使われていた、ということなのだ。

生クリームが、中に小さな泡をたくさん包含している形状を保っているのは、乳脂肪が固まっているおかげ。
熱が加わって乳脂肪がとけてしまうと、この構造が崩れて液状になるのだ。
まさにホイップ前のクリームにもどるので、せっかくケーキをデコレーションしていても、それがぐちゃぐちゃになってしまうわけ。
熱いクレープやワッフルにのせられた生クリームはどんどん液状になっていくよね。
一方、バターに砂糖と卵白又は卵黄を混ぜて泡立てたバタークリームは、生クリームよりとけにくいのだ。
生クリームはより水分が多いので、30度なるとぐちゃぐちゃになるけど、バタークリームだと少しとけはじめるくらい。
つまり、春や秋であれば、バタークリームならちょっと冷やしておけばなんとかなるのだ。

ホイップクリームの場合、乳脂肪分の含有量は30~40%くらいだけど、バターは80%。
なので、常温でもかたいんだ。
でもでも、逆に、クリームにしてもやっぱりかたいんだよね。
アイシングとかにはむいているんだけど。
それと、ちょっとしつこいし。
そういうのもあって、日本では生クリームが使えるようになると使われなくなっていったみたい。

一方、フランスの場合、来てみて気づいたけど、パリのアパルトマンの部屋には基本冷房がない。
街中を見る限りあまり冷蔵車・冷凍車も走っていない。
ケーキ屋さんのショーケーキも中があまり冷えてなさそう。
つまり、生クリームではなく、バタークリームを使った方がよい環境がそろっているわけ。
さらに、フランスのバターはおいしいので、バタークリームにしてもそこまでしつこくなく、逆に、濃厚なバターの風味が楽しめるのだ。
なので、おそらくだけど、フランスの場合は、お菓子の味に合わせて意図的にバタークリームを使っていると思われるよ。

ビュッシュ・ド・ノエルは冬のものだけど、冷蔵庫が普及する前から作られている伝統的なお菓子なので、バタークリームで作るのが正解なんだよね。
オペラの場合も、生クリームのやわらかい、とろける食感よりも、バタークリームのちょっとかちっとした食感の法が会う気がするし。
それに、フランスではケーキを適当に包むので(箱がなくて紙でそのまま包むこともしばしば)、ある程度「リジッド」でないと持ち運べないのだ。
そうなると、バタークリームの方が有利だよね(笑)

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