2018/11/10

前は寒気、後は痛み

体調を崩してカゼっぽくなったのだ(>_<)
いやあ、突然来たからびっくりした!
いきなりおなかが痛くなって、その後に寒気・・・。
これは熱が出るかなぁ、と思っていたら、ちょっと微熱っぽくて(図らなかったからよくわからないけど)、その後全身のだるさと筋肉痛。
完全にカゼの症状だぜ。
ちょっとこらえきれなかったので、薬局で非ステロイド性消炎鎮痛剤のイブプロフェンを買って飲んだのだ(フランスだと単剤で打っているからね。)。
そうしたら、効果覿面、その症状はすっとおさまったよ。

このカゼの時の寒気や筋肉の痛みの主な原因は自分の防御反応なんだよね。
ウイルス性にせよ、細菌性にせよ、多くの感染症の場合、免疫機能を高めるために発熱という選択肢がとられるのだ。
実際、平熱の36~37度よりも、高熱の38~40度くらいの方が免疫反応は活発になるので、それだけウイルスや細菌を駆逐できるのだ!
でも、たまに熱が上がりすぎて42度を越えると危険なんだよね。
というのも、それ以上の熱だとタンパク質が変性してしまうので、体自身が壊れてしまうのだ(>_<)
なので、寝て休んでいられる場合は、40度未満の熱ならそのまま寝て過ごした方が治りが早くて、40度を越えるようだとまずいので、その時点で解熱するのがいいと言われているよ。
でも、実際には休めないから、熱でつらいと薬で下げたくなるよね。

この発熱に一役買っている生体内物質がプロスタグランジンというもの。
細胞膜の中にあるアラキドン酸という脂から作られるんだよ。
プロスタグランジンを作る酵素がシクロオキシゲナーゼと呼ばれるもので、この酵素の活性を阻害するのが非ステロイド性消炎解熱鎮痛剤(NSAIDS)と言われる一群の薬。
有名なところだと、よく総合感冒薬に入っているアセトアミノフェン、ボクの服用したイブプロフェン、頭痛薬によく使われるエテンザミド、筋肉痛の薬としてメジャーなインドメタシンなどなどだよ。
そして、最も有名なのは、アスピリン。
もともとアスピリンは商品名で、化合物名ではアセチルサリチル酸というんだけど、第一世界大戦でドイツが負けて、バイエルが持っていたアスピリンの証票が取り上げられたので、それが一般名称にもなっているのだ!

このプロスタグランジンにはいろんな種類があって、それそれいろんな作用があるんだ。
血管拡張、血圧低下、血小板凝集、発熱、胃粘膜保護などなど。
で、選択的な薬もあるんだけど、多くの場合はいろいろな作用に影響を及ぼしてしまうのだ。
その結果、NSAIDSの有名な副作用として、胃腸へのダメージというのがあるんだよね。
なので、空腹時には飲まないで下さい、必ず食後に、と書いてあるんだよ。
胃粘膜保護作用が弱まるので、どうしても胃腸にダメージが行くのだ。

ちなみに、風邪を引いたときなんかに起こる炎症反応に関与しているのは、シクロオキシゲナーゼでも2型と言われる方で、炎症が起こると増えてくる誘導型の酵素。
マッチポンプで炎症反応をまさに「炎上」させるんだよ。
一方、胃粘膜保護作用を司っているのは1型。
こちらは通常の体のメンテナンスの機能を担っているので、炎症を抑えようと1型にも2型にも作用する薬を使うと、そっちに影響が出るというわけなのだ。
これはたいていの薬で似たり寄ったりがあることで、それが副作用の根本原因なんだよね。

発熱に関与していると言われているのはプロスタグランジンの中でもE2と言われるもの。
全身の筋肉に作用し、筋肉を細かく収縮させることで発熱させるんだ。
この前段階で多くの場合「寒気」を感じているよ。
寒気を感じるとぶるっと震えるのは筋肉を動かして発熱するため。
鳥肌は立毛筋という筋肉が収縮して起こるけど、これも同じ。
人間が発熱する際には筋肉を動かすのだ。

そうすると、これがだるさや痛みの原因にもなるんだよね。
しかも、プロスタグランジンE2の主な作用の一つに、痛覚の伝達を増強する、というありがたくないものがあるのだ!
痛みそのものの原因ではないんだけど、少しでも痛みがあるとそれを増強してしまうわけ。
なので、余計に痛みを感じるんだよ。
歯痛や頭痛にNSAIDSが使われるのはこの作用を弱めるためで、痛みという感覚自体を取り除いている麻薬性鎮痛剤や麻酔とは異なるメカニズムなのだ(麻薬や麻酔の場合は痛覚自体を遮断しているよ。)。

なので、カゼなどで発熱していて体がだるかったり、痛かったりするとき、NSAIDSは非常に良くきくのだ。
特に、高熱が出るインフルエンザの時にはそのありがたみがわかるよ。
最近はウイルス自体を撃退する抗ウイルス剤(いわゆる「タミフル」など)が使われることが多いけどね。
でも、対症療法として解熱や鎮痛が必要な時にはNSAIDSは非常に有効なのだ。
抗ウイルス剤はウイルスの増殖を阻害する薬なのですぐには効果が出ないんだよね。

というわけで、NSADISはけっこういろんな副作用がある薬なんだけど、解熱や痛みの緩和という点では重要な薬なのだ。
日本では単剤で打っていることはまずなくて、総合感冒薬や頭痛薬などなどの形で他の薬剤(副作用を軽減するためのものや他の症状に対応したもの)と混ぜられた形で市販されていることが多いよ。
本当は余計なものが混ざっていない方が使いやすいんだけどね。

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