2022/11/12

ふところあったか

寒くなってきた。
家にいるときは、こたつやおふとんから出たくない!
でも、出かけなくちゃいけない・・・。
そんな防寒対策のひとつが、「カイロ」なのだ。
今では使い捨てのカイロが多いけど、ハクキンカイロを愛用している人もいるよね。

もともと、江戸時代は、暖めた石を布などにくるんで懐に忍ばせていたらしいのだ。
これを「温石(おんじゃく)」と言うんだって。
「懐石料理」の「解析」がこの温石のこと。
懐を暖めて空腹をしのぐ、ということなのだそうだよ。
もともとは「会席」だったものが、おなじくわび・さびの世界の禅宗に由来する「懐石」の字が使われるようになったみたい。
戦国時代は、一汁三菜のわりと質素な食事で、おそらくは【たいしたものはありませんがこちらで空腹をしのいでください」くらいの話だったんだけど、茶の湯の発達に伴って徐々にもてなしが豪華になり、今のような尾高級な料理になったようだよ。

それはそれとして、この温石だとすぐに冷めてしまうよね。
長続きしないのだ。
そこで、江戸時代になると、金属容器の中に木炭灰を入れてゆっくりくすぶらせながら燃やして発熱させる「灰式カイロ」というのが出てきたようなのだ。
これは炎が出て燃えるわけではないけど、容器の中で火がくすぶっているわけで、扱いは注意しないといけないんだよね。
でも、これはあくまでも灰をゆっくりと燃やすものなので、発熱させるには着火する必要があるのだ。

この灰式カイロはその後も細々と続くんだけど、とってかわってシェアを奪ったのがハクキンカイロ。
「ハクキン」は白金=プラチナのことで、プラチナを触媒にして、その表面上で燃料と酸素を反応させ、ゆっくりと発熱させる、というもの。
反応自体は燃焼反応と同じだけど、触媒表面で反応させることで、ゆっくりと、火を出さずに反応するので、暖かさが持続するのだ。
燃料としてよく使われるのがベンジンで、効かしたベンジンがハクキン触媒に触れるようになると発熱開始するのだ。
発熱量がわりと高い割に長持ちするので、今でも利用者がいるわけ。
でも、この反応では二酸化炭素とともに水が出てくるんだよね。
なので、カメラの愛好家がレンズがくもらないようにあたためるのにはむしろ水を出さない灰式カイロが利用されるんだって。

ハクキンカイロは非常に優れたものではあるんだけど、液体燃料を補充しながら使う、というのは少し面倒なんだよね。
その燃料は火気厳禁のものなので扱いも気をつけないといけないし。
で、発熱量は高くないんだけど、とりあえず使いやすい、ということでメジャーになっていったのが使い捨てカイロ。
今では貼るカイロ、とか、靴底にしくカイロなんてバリエーションもあるよね。

この使い捨てカイロの原理は簡単で、鉄が酸化するときに出る酸化熱なのだ。
基本は鉄粉が不織布の中に入っていて、空気中の酸素と藩王して発熱するのだ。
この発熱反応を促すため、塩化ナトリウムとか活性炭とかも入っているみたい。
空気中の酸素とどんどん反応してしまうので、基本は窒素充填などで酸素と触れないようにパッケージされていて、そこから出すとまわりの酸素と反応しだして発熱するよ。
低温やけどどには注意する必要はあるけど、そこまでの発熱量ではないので、手でもめるし、春タイプなんてのもできるのだ。
なにより、すべての原料が安いというのも魅力的なんだよね。

ちなみに、使い捨てカイロの中でもメジャーな「桐灰」は、もともと灰式カイロを扱っていた会社。
それが新たな商品として使い捨てカイロを売り出し、かつ、貼るタイプというのを考案したのだ。
いまでは小林製薬の吸収されたので、ブランド名としてだけ「桐灰」が残っているよ。
こうして考えると、一度ハクキンカイロにシェアを奪われけど、新技術で奪い返した、という話なんだね。
なかなか面白い。

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