2022/11/19

か~べ~ぬ~り~

ミラノに行ったとき、世界遺産にも登録されている、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院のレオナルド・ダ・ヴィンチ作「最後の晩餐」を見たのだ。
欧州の協会の壁画って、基本的にはフレスコ画で、壁表面に漆喰を塗ってそれが乾く目にその上に顔料を載せたもの。
これはわりと長持ちするのだ。
でも、フレスコ画は塗り直し不可、色重ね不可、漆喰が乾くまでのごく短期間に描き上げないといけない、などの制約があって、「この「最後の晩餐」は別の手法で描かれているよ。
壁の表面に薄く樹脂の膜を塗って、その上に卵白で絵の具を溶くテンペラ画で描かれているんだ。
これだと、板やキャンバスに描くのと同じで、時間をかけて描けるし、塗り直しも色重ねもできるのだ。
ただ、問題は耐久性。
膜の上のテンペラ画はいいのだけど、壁から膜がはがれるのだ・・・。
これで修復が大変なんだよね(>_<)
やっぱりフレスコ画っていうのは先人の知恵の詰まった装飾法だったわけだね。

漆喰は、消石灰(水酸化カルシウム)を主成分とした建築材料で、洋の東西を問わずに使われているもの。
基本的にはペースト状にして壁に塗るんだけど、乾いていく過程で空気中の二酸化炭素を吸収し、消石灰が石灰(炭酸カルシウム)に化学変化するのだ。
これは石灰水に息を吹き込むと水に不要な石灰が生じて白濁する、という小学校でよくやる実験の反応と同じ。
さらに過剰に二酸化炭素を供給すると炭酸水素カルシウムになるので再び透明に戻るよね。
でも、漆喰の場合は、最初の石灰化が乾燥過程でゆっくり進んでいって、その後はもう水が少ないので次の炭酸水素カルシウムが生じる反応はあまり起こらないのだ。
なので、壁の表面に卵の殻のような水をはじく高いコーティングができあがるんだよね。
これが壁の防水性の向上、耐火性の向上などにつながるので、建築材料として使われてきているというわけ。

漆喰という材料自体は洋の東西を問わずに使われるんだけど、西洋のものと日本のものでは使い方が違うんだよね。
これは、建築本体をどの材料で作るか、というところが大きいのだ。
西洋の場合、基本は石積み・レンガ積みで作っていくので、その石やレンガはモルタルなんかを接着剤にしてくっつけるんだよね。
で、そうした作った壁の表面に漆喰を塗るわけだけど、こういう壁は、従量があるので縦方向には強いのだけど、横方向の力には弱くて、どうしても瀬tっや区部分が割れて崩れてしまうのだ。
そこで、表面に割と分厚く漆喰を塗ってコーティングすることで強度を増すわけ。
さらに、石積み・レンガ積みそのままでも味はあるのだけど、その表面をなめらかに漆喰でコーティングすると装飾性も高まるのだ。
教会建築なんかだと大きな壁にはフレスコ画なんかも描いたわけ。
立体的にレリーフなんかを浮き彫りにする装飾もあるよ。


一方、日本の壁の骨組みは木造。
骨組み自体はきっちりしているので、それが壁や塀になるように漆喰を塗るのだ。
なので、防水性や耐火性は重要なんだけど、コーティングによる強化、ということではないので、むしろ木造の骨組みに均一に塗りやすくする方が重要なわけ。
このため、日本の漆喰は消石灰に「すさ(麻やわらなどの植物繊維)」や海藻(ふのりなど)を加えるんだ。
消石灰が石灰化して固まると少し体積が減るので、収縮が起きるのだ。
これを防止するために「すさ」を入れるんだけど、こういう繊維質のものが入るとひびが入っても崩れにくくなるので、壁材としての強度も増すのだ(コーティングでなく、壁そのものだからこの強度が必要なんだよ。)。
海藻の方は、保水性を高めることでゆっくり乾くようにしているのだ。
表面コーティングではなく、木造の骨組みに塗り込めていくのでわりと時間がかかるので、すぐに乾いていくと作業上まずいんだよね。

日本の漆喰の装飾については、レリーフと同じように立体的に顔料を入れて色をつけた漆喰を立体的に塗る「こて絵」もあるけど、そこまでメジャーではないのだ。
なまこ壁のように、壁の方面に瓦を貼って、その間の目地の部分を盛り上げて幾何学模様にする、みたいな装飾のほうがメジャーだよね。
でも、実は高松塚古墳の壁画は漆喰の上に描かれているんだよね。
なので、古代日本では漆喰の上に絵を描いていたのだ。
でも、こういう古墳の壁画はカビたり、漆喰がはがれたり野損傷が問題になっているので、日本の風土では漆喰の上に絵を描く、というのはあんまり保存性がよくないのかも。

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