2023/02/04

ねばーる

 最近はスーパーやコンビニですり下ろして味付けしてあるとろろが売られているよね。
これがけっこう便利。
1人前のとろろそばとか山かけ丼とかって、とろろ芋をすり下ろすところからはなかなかなしないから。
ボクはこどものころからけっこうとろろが好きなので、時々買っているのだ。

で、よく知られてはいるけど、2種類のとろろ芋があるのだ。
ひとつは自然薯。
最近は栽培もできるようになったらしいけど、基本は秋以降に山に堀に行くのだ。
縦にまっすぐと伸びているので、掘るのが大変(>_<)
途中で折れないように掘るのも一苦労で、それで高級品なんだよね。
水分が少なめで、すり下ろすと極めて粘性が高く、とろっというより、どろっとした感じ。
多めの出汁で溶かないと伸びずに、スライムのようにかたまり状になるよ。

この自然薯は生物種としてはヤマノイモと呼ばれるもので、なんと日本原産。
記紀にも出てくるので古代から日本人に親しまれてきているのだ。
ちいっても、それは高貴な人だけ。
芥川龍之介の「芋粥」に出てくる芋がこのヤマノイモで、高級品だから貧乏貴族はなかなかな食べられない、というあこがれのものなのだ。
ちなみに、あの話に出てくる芋粥は米と芋を一緒に炊いたものではなくて、ヤマノイモを短冊切りにしたものを甘葛(あまづら)の煮詰め汁(サトウキビがまだ入ってきていない当時としては最高級の甘みのあるシロップ)で炊いたもので、お菓子に近いものだそうだよ。
砂糖がない世界なので、発芽玄米や麦芽から作る水飴や干し柿以外に甘いものっていうのはそうそうなく、貴重なものだったのだ。
削り氷(ひ)に甘葛をかけて、なんてかき氷もあったことが枕草子に出てくるけど、こっちは氷も貴重なので、最高級品だったようだよ。

これと似て非なるものが山芋。
生物種としてはナガイモなのだ。
中世以降に大陸から入ってきた、と言われているけど、現在日本で栽培されているナガイモは中国には全くないので、日本に来てさらに品種改良されたものが食べられているのか、大陸三と似たものが日本にもあったのかはよくわからないみたい。
こちらは畑で栽培するのが比較的容易で、スーパーなんかで売られているとろろ芋は基本はナガイモだよね。
水分が多めで、すり下ろしてもさらっとしているので、こちらは濃いたれで溶いた方がよいのだ。
また、そのまま千切りにして鰹節と醤油をかけて、なんて食べ方もされるよね。
自然薯だとそれはきついのだ・・・。

ナガイモにも種類があって、棒状に長く伸びたものがよく出回っているけど、手のひら状に広がったものもあるのだ。
こちらは銀杏芋とか、関東でヤマトイモと呼ばれるもので、いわゆるナガイモより水分が少なめで粘りけが強く、とろろ汁に向いていると言われるよ。
関西にはつくね芋とか大和芋と言われているごつごつしたかたまり状の芋もあって、こちらはかなり自然薯に近く、粘りけが強いので、和菓子材料に使われるみたい(薯蕷饅頭やかるかんなど)。
ちなみに、奈良の伝統野菜にもなっているのだ。

どちらの芋もヤマノイモ科で、これはいわゆるヤムイモの仲間。
ヤムイモは熱帯から温帯にかけて広く分布するけど、多くの場合は火を通して食べられるんだよね。
熱帯産のヤムイモなんかはバナナの葉に来るんで比の中に入れて蒸し焼きにするとほくほくになるのだ。
でも、これらのいもは珍しく生食されるんだよね。
かつてはアミラーゼを多く含み、デンプンが酵素の作用で分解されるので吸収されやすく生食可能、とか言われていたんだけど、最近になって、これってあんま関係なくない?、疑問視されているみたい。
多くの場合は生食しづらい理由があって、熱で分解されるような苦み成分がある、熱で変性させないと消化できないなどなんだよね。

こんにゃく芋にいたっては、すり下ろして熱を書けてさらにアルカリ性にしてかためないと食べられないのだけど、それでもカロリーはゼロなんだよね・・・。
おいしいからいいけど。
こんにゃく芋がそのまま食べられないのはシュウ酸カルシウムを多く含むからだけど、自然薯でかぶれるのもこのシュウ酸カルシウムのせい。
なので、シュウ酸カルシウムが多くなければ、生でもなんとかいけるのだ。
あとはそのまま食べておいしいかどうか。
ということは、ナガイモや自然薯の場合は、シュウ酸カルシウムが多くなく、かつ、そのまま食べてもおいしかった、ということなんだろうね。

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