2023/05/13

ぴき、ばし、べき、みし

夜中にいきなり家がきしむような音がしてびびることがあるのだ。
海外で言うところのラップ現象だけど、日本では「家鳴り」と読んでいるよね。
「家鳴り」という怪異は、海外のポルターガイストに比されているんだけど、伝統的には、音だけ出なくて物理的に揺れるそうなのだ。
なので、鳥山石燕が「画図百鬼夜行」で描いた絵は、子鬼が家の柱を揺らそうとしているイメージなのだ。そこから派生して、絵によっては大きな木槌を持っている場合もあるよ。
畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズではかわいらしい子鬼として描かれているけど、家屋を壊すようなものではなく、あくまで揺らしたり、大きな音を当てるだけなんだよね。
なので、実害はそんなにないのだ。

夜中にいきなりなる音については、木造建築である日本家屋の宿命的なところがあって、使われている木材の乾燥具合によっては、さらに乾燥が進んでひびが入ったりする場合があるのだ。
このとき、みしっ、とか、ぴきっ、とかそういう泳がするんだよね。
そういう木材のひび割れだけじゃなく、比較的築浅の場合は、まだしっくりと柱や梁がかみ合っていなくて、それが気温や湿度の変化でゆがみが出ると音を発することがあるのだ。
これは超常現象でもなんでもないんだけど、家の中にいる人からすれば、柱や梁の状態がどうなっているかなんて当然わからないから、あるときとつぜん音がしてびっくりする、というわけなのだ。
東日本大震災の後なんかは、地震の揺れでひずみが入ったので、しばらくこういう現象が多かったような気がするよ。

音はそれでよいとして、問題は揺れ。
日本家族はそこまで頑丈な作りではないので、風で揺れるなんてのは当たり前だけど、風が強いときにゆれるのを怪異だと見なす人はいないわけで。
一見何もないのにいきなり揺れるから怪異なのだ。
その原因はおそらく一つではなくて、いろんなケースがあるんだろうけど、ひとつは、錯覚。
何らかの理由で自分の近くの方がおかしくなっているケース。
風邪を引いて高熱が出ると、まわりが回っているように感じて目が回る、というようなことがあるけど、それと同じで、何らかの理由で揺れていないのに揺れているように感じた、ということ。

実際に揺れるケースとしては、最近になってそういうのもあるかも、とわかってきたのが、低周波振動が増幅されてそういうのが起こることがあるということ。
その振動自体は微弱なので人間は感じることはできないんだけど、何かの拍子で共鳴現象が起こってものが揺れたりするケースがあるのだ。
これがわかってきたのは、工場などの大型機械がある施設が近くにあると、不思議な揺れが発生するという現象があって、それを調べてみると、その大型機械由来の低周波振動が家の中のものと共鳴してそういう現象が起きていることがわかってきた、というもの。
特命リサーチ200Xで紹介された例は、地中に埋まっている水道管が共鳴していた、みたいなのもあるみたい。

まだまだ未解明な点もあるけど、そうはいっても、世の中のことは基本的に起こるべくして起こっていて、それがはっきりと説明できない場合に、怪異とか超常現象ということで「納得」しようとするわけだよね。
これはまったくわからないものを受け止めがたい、という心理で、わかってないんだけど、なんだかわかったように受け止めたい、ということなんだよね。
それは人間の性なのか。
でも、子鬼みたいな家鳴りという妖怪を考えてしまうというのはなかなかユニークだよね。
こういう発想は大切にしたい。

0 件のコメント: