2024/09/21

三番目のやつ

 確か中学校で習うのだけど、大気の構成で、一番多いのが窒素の役78%。
ついで酸素が約21%。
で、残りの1%の中に光合成に使われる二酸化炭素などが入っているのだけど、実は、堂々の三位は「アルゴン」なのだ。
アルゴンは約0.9%で、残りの1%枠のほとんどはこれなのだ。
で、アルゴンって何?って気になるよね。

化学的には、アルゴン(Ar)は不活性ガスである貴ガスの一つで、原子番号は18。
(ボクは「希ガス」と習ったけど、最近は「貴ガス」というらしい。)
第18族元素と呼ばれるもので、ネオン(Ne)の下、クリプトン(Kr)の上だよね。
この縦のラインは最外殻の電子殻のうちs軌道とp軌道が閉じている(電子がすべて埋まっている)ので、反応性が低く、「不活性ガス」とも呼ばれるのだ。
なので、基本は反応することなく、空気の中で孤高の存在として漂い続けているわけだよ。
でも、それってどこから来たんだって?、というのが疑問になるよね。

その出自も明らかで、こえは地殻中にあるカリウム(K)の放射性同位体であるK40が放射性崩壊することでできるのだ(半減期は12.48億年)。
40は、約9割がベータ崩壊で電子を放出してカルシウム(Ca40)になるのだ。
で、残りの1割が電子捕獲で、原子核中の陽子が最内殻のs軌道から電子を一つ取り込んで中性子になって電子ニュートリノを出すことでAr40になるんだ。
このAr40は安定同位体で、かつ、化学反応もしないので、そのまま空気中に残り続けるわけ。
ということは、ちょっとずつアルゴンの量は増えているのだろうか?
宇宙全体では同じ安定同位体でもAr36が圧倒的に多いみたいだけど、地球や火星のような岩石型惑星の場合、岩石中に多量に含まれるK40からの供給でAr40が増えるみたい。

ちなみに、地球全体の自然放射線としては、このK40の崩壊による寄与が大きいんだって。
エネルギー的にはトリウムやウランのような核燃料に使われる元素の方が大きいのだけど、存在量が半端ないので、これら二つと並んで自然放射線の約1/3を占めているみたい。
カリウムを多く含む鉱物は長石で、中でも、花崗岩は長石を6割ほど含むのでカリウム含有率が高いのだ。
というわけなので、花崗岩は比較的多くの放射線を出しているんだ。
花崗岩は墓石に使われることが多いので、ガイガーカウンターなんかで測ってみると、墓場は少しカウントが高いんだよね。
東日本大震災の後、福島の影響を見る、とか言って街中でガイガーカウンターをもってうろついていた人がいるけど、もれなく墓場付近でカウントが高くなっていたはずなのだ。
ちなみに、かつて(昭和から平成に代わる直前)東京大学病院の敷地内で不法投棄された放射性同位元素が見つかった、という事件があって、そのインパクトから、東京大学キャンパス内を反原発の運動家がガイガーカウンターをもってサーベイしまくったらしいんだよね、
そのとき、ここはカウントが高い、汚染されている、と騒いだ箇所にはやはり花崗岩が大量に使われていたらしいのだ。
バックグラウンドレベルから少し高い程度なんだけど、知ナマコになって探すとそういうことになるのだ・・・。

で、このアルゴンは、化学反応性が低いのでふっ活性ガスとして工業分野で割とよく使われるのだ。
空気から取り出すのも比較的楽で、空気に圧力をかけながら冷却していって液体窒素と液体酸素を作るんだけど、この液体酸素から分留することで得られるんだって。
古いデータだけど、2004年には約40万トン生産されていたというからけっこうすごいよね。
ちなみに、もっとよく見かける貴ガスのヘリウムは、天然ガスと一緒に算出するんだよね。
日本は長らくほぼ全量を米国からの輸入に頼っていたんだけど、米国の生産量が減ってからは供給源の多様化を図っているみたい(生産量が減って「ネズミの国」で風船が販売停止になったこともあったよね・・・。)。

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