2024/09/07

やめないのをやめて

 兵庫県知事の問題が連日報道されているのだ。
それにしても、よく毎日毎日新しエピソードが出てくるものだ。
知事本人は「記憶にない」とか「そのような認識はない」とか答えているけど、職員やまわりの人から見たらいろいろと「お世話」が大変な人みたいだね・・・。
しかも、都道府県において知事の権限は強いし。

今回はいろんなことがあってから、兵庫県議会が地方自治法に基づき、通称「百条委員会」を設置して調査を進めているんだよね。
これは名前のとおり、地方自治法第100条に規定されているものなのでそう呼ばれるんだけど、地方議会が地方自治事務について調査を行うことができる、と定めているもの。
これは、憲法第62条の国政調査権の地方自治版と言えるもので、憲法上の規定の「証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」に対応して、地方自治法では、「選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる」と規定されているのだ。
今回は知事はまさに「関係者」として議会から出頭を命じられているわけ。

で、呼ばれるだけなら適当にはぐらかす、ということもできないわけでないのだけど、この表情委員会の場合、地方自治法第100条第7項で「宣誓した選挙人その他の関係人が虚偽の陳述をしたときは、これを三箇月以上五年以下の禁錮に処する」と規定されているのがポイント。
裁判所と同様、この百条委員会の調査において嘘をついた場合、刑事罰があるのだ。
なので、今回の知事の対応でも、「事実無根」のような反論は一切していなくて、「記憶にない」、「そのような認識はない」と言っているわけだよね。
さすがに知事としても自分の行為が全く問題ないとは思っていないということだと思うのだ。

この百条委員会はあくまでも調査をするものなので、仮に、この調査によって「知事はパワハラをしていた」と結論付けられた場合は、その次の対応があるのだ。
議会としてそういう人物が知事としてふさわしくないと思えば、不信任決議を出すことができるのだ(地方自治法第178条)。
これも憲法第69条の内閣不信任決議と同じで、地方議会で首長の不信任決議が出た場合は、その議会を解散するか、解散しない場合は失職するかしないといけないわけ。
今回の兵庫県知事についても、すでに議会では不信任決議案を提出しようという動きが出ているみたいだね。
ちなみに、都道府県知事の不信任決議は過去に4件あって、議会は解散せずに失職しているみたい。
ただし、うち2件は失職した後に改めて知事選に「出直し立候補」をしていて、一人は当選(2002年長野県田中知事)、もう一人は落選(2003年徳島県大田知事)ということだよ。

もうひとつの可能性としては、県民による辞職請求(リコール)があるのだ(地自法自治法第81条)。
これは国政には該当する者のない、地方自治だけの制度だけど、原則として有権者の総数の1/3以上の署名があれば、選挙管理委員会に地方自治体の首長の解職を請求することができるのだ。
ちなみに、有権者の数が多い場合は、「(有権者数-80万)×1/8+40万×1/6+40万×1/3」という数式で必要な署名数を決めることになっていて、兵庫県は昨年12月時点で選挙人名簿上450万人の登録があるので、必要な署名数は662,500にんるよ。
普通に1/3とすると150万必要なので、その半分以下でよいみたい。
といっても、都道府県レベルで知事の解職請求が成立したことは過去になくて、今回はもう議会も動いているし、60万以上も署名を集めるのは大変だから、こっちの線はないね。
ちなみに、1954年に鳥取県知事に対してリコール運動が起こったことがあったけど、そのときは先に知事が辞職したみたい。
それと、これはのちに刑事事件になっているけど、2020年に愛知県知事にリコール運動が起こったときは、集められていた署名に大規模な偽造が発覚しているんだよね。

というわけで、今後の動きに注目だけど、これまでの対応を見ているとこの知事は相当メンタルが強いよね。
今のところ辞職の意向はないみたいだけど、議会の解散とか出直し選挙に行くのだろうか?
さすがにその選挙戦は辛そうだけど、対立候補がちゃんと出てくるかも問題なんだよね。
まだしばらく注目が集まりそうだ。

0 件のコメント: