2024/10/26

パンを先に食べるにあらず

 今更ながら、という気がしないでもないけど、さんざんあれだけ推奨してきた「ベジファースト」が否定され始めたのだ。
厚生労働省の作成している「食品摂取基準」にも、「野菜から食べるとよい」という記述があったんだけど、それが最新版では削除されたことがきっかけ。
実は、意味がないことではないんだけど、言葉の独り歩きと拡大解釈で「デマ」が蔓延してしまったという不幸な話なんだよね・・・。
問題は、きちんとその効果を理解することなのだ。

もともとこの話は、とある実験結果に由来するのだ。
それは、食べる順番が血糖上昇にどういう影響があるかを調べるもので、野菜を食べてから10分後にお米を食べた場合と、お米を食べてから10分後に野菜を食べた場合の血糖値の刑事変化を調べたもの。
お米から先に食べると一気に血糖値が上昇し、その後インスリンが分泌されて急激に血糖値が下がっていくんだよね。
一方、野菜から食べると、血糖値の上昇が緩やかで、乱高下がない、ということがわかったのだ。

血糖値の急激な上昇にひどいものは「血糖値スパイク」と呼ばれ、ぐんと上昇した後にがくっと下がるんだけど、、この時反動で下がりすぎてしまい、低血糖状態になることがあるのだ。
こうなると、急激なふらつき、眠気などの症状が出てくるよ。
ネットでは「ドカ食い気絶部」なんてのがあるし、最近話題の漫画「ドカ食いダイスキ! もちづきさん」は大量に食べた後に恍惚の表情を浮かべているけど、その原因がまさにこれ。
サウナの「ととのう」以上にやばい状態なので、本当は避けなければいけないんだよ。

一般に血糖値の乱高下は体に負担があると言われていて、特に血管系にダメージを与えるので循環器系の生活習慣病のリスクを高めると考えられているのだ。
なので、できるだけ血糖値の上昇を穏やかにするために食べる順番を工夫しましょう、という話だったわけ。
もちろん、一口目に野菜、二口目にお米、というのではあまり意味がないわけで。
コース料理や懐石料理のように、料理ごとに多芯たーばるを開けて食べる場合において、まずは炭水化物があまり入っていない、野菜中心のメニューから食べるといいよ、ということ。
日本では給食をはじめとして「三角食べ」が推奨されているので、実は本当の意味での「ベジファースト」はやりづらいのだ。

この「ベジファースト」は、野菜に含まれる食物繊維が糖の吸収を抑制するので急激な血糖上昇を抑える、と説明されてきたんだよね。
これが単純化されて独り歩きし、かつ、拡大解釈されたのが、「ベジファースト」は「やせる食べ方」という受け止め。
難消化性デキストリンなんかを含むトクホ製品でも「糖の吸収をだやかにする」と書かれているけど、量的に糖の吸収を大きく減らすわけではないのだ。
っていうか、糖尿病の治療に使われるSGLT2阻害薬は実際に腎臓での糖吸収を阻害するんだけど、そこまで作用の強い薬なので当然処方せん薬。
それと「同等の効果が食べ方の工夫や普通に誰でも買えるトクホで実現されるわけはないのだ。

なんだけど、血糖値スパイクを防いで生活習慣病リスクを下げる、というのは忘れ去られ、糖の吸収をyるやかにする=>糖の吸収を抑える=>食べても糖が吸収されないから太りにくくなる、とどんどん拡大解釈が広がっていったわけ。
で、町医者なんかも、厚生労働省の指導もあって、生活習慣病リスクを下げる効果があって、非常に単純にできること、ということで、「ベジファースト」を勧めることが多かったのだけど、最近では、医師であっても「ベジファーストはやせる食べ方」という認識を持ってしまっている場合があるようなだよね・・・。
きちんと理解したうえで実践するのはよいのだけど、さすがにこの状況は看過できず、ということで、厚生労働省は食品摂取基準から記述を削除したようなのだ。

で、この「ベジファースト」のほかにも、わりと簡単にできる血糖値スパイクを抑える食べ方というのはあるのだ。
もっとも単純なのはゆっくりよく噛んで食べる、ということ。
もう少し気にしたい人は、GI値ことグリセミック指数の低い食品を積極的に食べる、ということ。
このGI値というのは、食後どれだけ血糖を上昇させるかの指標になっていて、野菜や豆類、肉類は低く、でんぷん質の白飯、パン、うどんなんかは非常に高いのだ。
なので、白飯ではなく玄米、食パンではんく全粒粉パン又はライ麦パン、うどんではなくそば、とすることで、けっこう血糖値スパイクは避けられるよ。
若いうちはあまり気にしなくてよいのだけど、ある程度の年齢になったらこういうのを気にしないといけないんだよね。

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