立ちはだかる壁
三党幹事長合意というのがあったけど、けっきょく自民党税調は国民民主党の提案「178万円への引き上げ」について渋い回答を出したのだ。
合意がまとまったすぐ後に「目指すだけ」とか「いつまでにとは明言していない」とか日和った発言があったわけだけど、国民目線で見れば、萎えるよねぇ・・・。
もともと税調は「聖域化」していて素人は簡単に手が出せないとかなんとか言うけど、そういう古いやり方が限界に達していて前回の選挙結果になったんだろうから、多少は歩み寄りが必要と思うんだけどなぁ。
で、さんざん選挙の時から聞いている「103万円の壁」だけど、わかっているようでよくわかっていなかったので、自分でも調べてみたよ。
端的に言えば、所得税の控除の問題で、年間で103万円を越える収入があると所得税を支払う必要が出てくるので逆に手取りが減ってしまう、という問題なのだ。
なので、多くの場合は103万円を越えないようにパートやバイトを抑えて働く、ということになるんだよね。
そう聞いただけでも昨今の人手不足問題に影響がありそうだよね。
しかも、この「103万円」という数字はだいぶむかしに決めたきりで、その後の物価上昇率や最低賃金の上昇などの要素が加味されていないんだよね。
すなわち、むかしよりさらに働く時間を抑えないといけない状況になっているのだ!
これが批判される主な理由かな。
この所得税の控除については、所得税法で決まっているよ。
103万円の内訳は、48万円の基礎控除と55万円の給与所得控除に分かれるんだ。
基礎控除については、所得税法第86条第1項で「合計所得金額が二千五百万円以下である居住者については、その者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額を控除する。」とされていて、さらに場合分けで、「その居住者の合計所得金額が二千四百万円以下である場合 四十八万円」(第1号)となっていることに由来するよ。
これは全員がまず最初に控除される部分なので「基礎控除」というのだ。
休止世所得控除については、同じ所得税法の第28条第3項で「前項に規定する給与所得控除額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額とする。」となっていて、さらに場合分けで「前項に規定する収入金額が百八十万円以下である場合 当該収入金額の百分の四十に相当する金額から十万円を控除した残額(当該残額が五十五万円に満たない場合には、五十五万円)」(第1号)となっていることから来ているのだ。
実際に180万円の収入がある場合の給与所得控除は62万円で、そこから収入が下がると減っていくわけだけど、下限として55万円という数字が規定されているんだ。
103万円の収入だと、103×40/100-10=31.2となって55を下回るので、55万円が給与所得控除の額になるというわけ。
このように、法律の本文で規定されている数字なので、見直そうとすると法律改正が必要という非常にハードルが高いものではあるんだよね。
でも、今回は政治主導の話であり、実際に与党2党と国民民主党との間で合意があって、この3党合わせれば過半数を越えるのだから、普通は実現するものだと思うよね・・・。
けっきょく幹事長同士の合意をなかば反故にするような議論を党内でしていて、結論もそっちに持って行ってしまうのだから(少し引き上げることにしたので中的にはだいぶ譲歩しているつもりかもしれないけど)、さすがにこれ以上は議論できないと席を立たれてしまうわけだ。
これで来年度予算案は無事に国会を通るのか?
で、実際にどのあたりの数字が適正か、という問題もあるよね。
単純に二つの指標で計算してみるよ。
まずは物価上昇率。
総務省統計局の公表している統計データである消費者物価指数(2020年基準、全国平均、総合、年度平均)で見てみると、103万円のかべがせっていされた1995年は95.8で、これを最新のデータである2023年度の106.3と比べると、物価上昇率は11%増くらいになるよ。
そのまま103万円にかけると、114万円ということになるのだ。
でも、国民民主党が主張しているのはこの数字ではなくて、最低賃金なんだよね。
こっちは1995年当時は611円で、今は1,054円なので、73%増、103万円にかけると178万円という数字が出てくるのだ。
確かに、給与所得についてかある税金なので、その給与水準を示す司法である最低賃金で計算するのは妥当性があるよね。
でも、これってさらに政府は1,500円に引き上げたいんだよね・・・。
というこおは、103万円との関係で言うと、2倍以上にする計算になる。
そこまではやらないんだろうなぁ。