えらいこっちゃ
韓国で大統領が「非常戒厳」を発動して議会ともめて大変な騒ぎになっているようなのだ。
おとなりの国はこれから少し政治が不安定になるみたいだね。
それにしても、議会を止めるとか、街中に軍隊を展開するとかすごいことができるんだね、と改めて思ったよ。
各国でも似たような制度はあるんだけど、どこまで何ができるかはそれぞれ。
で、その中でも日本はかなりマイルドなようなのだ。
ま、それも戦前の体制を反省して、ということなんだろうけど。
戦前の日本では、帝国憲法において「天皇ハ戒厳ヲ宣告ス。戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム」とされていて、実際にその要件や効力を規定していたのは「戒厳令」という名前の太政官布告だったのだ。
憲法には「別に法律で定める」規定になっているんだけど、帝国憲法に先行していた太政官布告がその効力を有する、という解釈でいたみたい。
この戒厳令は11条しかな短いもので、その内容は第一条の「戒厳令ハ戦時若クハ事変ニ際シ兵備ヲ以テ全国若クハ一地方ヲ警戒スルノ法トス」にすべて語られているんだよね。
戦争や事変のような非常事態が起こったとき、全国又は一部地方で軍隊を展開して警戒に当たれるようにする、ということなのだ。
今回の韓国の例に近いのかも。
帝国憲法の規定にあるとおり、天皇が宣告するものなので、基本的には天皇の親裁事項(天皇が自ら裁定するもの)。
日清・日露両戦争の際は勅令により戒厳の宣告が行われたようなのだ。
時代が下ってからは「公式令」というのが整備されて、「戒厳の宣告」は「詔書」によって行うこととし、天皇の親署に御璽を押印して、内閣総理大臣が年月日を記入したうえで、内閣の前国務大臣が副署する、というように体裁が整えられたんだけど、こうなってからは正式には戒厳の宣告は行われなかったみたい。
でも、そうなると、太平洋戦争中は戒厳体制に入っていないということなんだね・・・。
治安維持法によりかなり締め付けが厳しく、特高なんかも跋扈したわけだけど、内地に軍が展開されたというわけではないのか。
で、戦後になって日本では「戒厳」について定めた法令は一切なくなってしまったんだよね。
当たり前と言えば当たり前なんだけど、新憲法において交戦力を放棄し、軍隊を持たないという整理になったので、軍隊を街中に展開するという事態は想定されないのだ。
その代わり、よりマイルドな統制強化の枠組みとして「非常事態宣言」というのが導入されているのだ。
「非常事態宣言」というとコロナの時を思い出しがちだけど、あちらは「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づく「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」のことで、「非常事態宣言」と通称されていただけなのだ。
正式に法律で「緊急事態宣言」を規定しているのは警察法で、第七十一条第一項で「内閣総理大臣は、大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域について緊急事態の布告を発することができる」となっているのだ。
警察法にあることからわかるとおり、ここで緊急事態の対処に当たるのは警察官だよ。
問題は、緊急事態になるとどうなるか、ということだけど、緊急事態宣言が出ると、内閣総理大臣が一時的に警察組織を統制することになっていて、警察庁長官は都道府県警の警視総監及び警察本部長に直接指揮できるようになるんだよね。
平時では、都道府県に置かれる都道府県警察本部は地方の組織になるわけだけど、緊急時だけは、それが国の機関である警察庁を頂点として指揮命令系統が一本化される、ということなのだ。
刑事ドラマではよく見るような都道府県警の縄張り争い(?)みたいなのがなくなるということかな?
でも、逆に言うと、警察法で定めているのはそこまでで、強制力を持って何かをする、というものではないんだよん。
軍隊が展開される瀬愛から、党勢が一本化された警察組織が展開される、というような大転換だよ。
コロナの時に「非常事態宣言」のときも問題視されていたけど、日本の現行法の世界では、強制力を持って国民の権利を侵して何かさせる、というのが最小限になるようになっているのだ。
それあ戦後の民主主義ということなんだろうけど、危険な地域から強制的に移住してもらったりとか、国の重要施設の整備に当たって用地に居座り続ける人たちを排除したり、とかいうのもできないんだよね。
海外では普通に行われるようなことでも。
それがいいのかわるいのかはいろいろと議論があるわけだけど、何か起こったときにちょっと心配ではあるよね。
日本人は災害の避難時にもわりと行儀よく行動するとは言われているけど、それを過信しすぎるのもなぁ、というところ。
乱用されないという大前提はありだけど、もう少し強制力はあってもいいように思うんだよなぁ
0 件のコメント:
コメントを投稿