2009/02/22

黒くなってしまったら・・・

アルミの鍋でゆで卵を作ったら、鍋が黒ずんでしまった・・・、という相談を受けたのだ。
なんとなく、理系出身のボクは、卵の中の硫黄と反応したかな?、と思ったんだけど、その黒ずみをとる方法は思いつかなかったんだよね(>_<)
そこで、さっそくネットで調べてみるとけっこう有名な現象であることが判明。せっかくなので、この件をもう少し掘り下げて調べてみることにしたのだ。

最近は軽いこともあってよくアルミの鍋が使われるけど、実は、けっこう扱いが難しいんだよ。
多くのアルミの鍋はちょっとくすんだ感じの色合いで、あんまりぴかぴかではないけど、これには意味があるのだ。
流通したての1円玉がぴかぴかなのに、いつの間にか白っぽくくすむのと同じで、あれは1円玉の表面に「さび」ができているのだ。
この「さび」は酸化アルミニウムで、アルミニウムはとても酸素と反応しやすいので、すぐに表面がさびてしまうんだよね。
でもでも、一度表面がさびて、酸化アルミニウムの皮膜ができると、それ以上は中がさびなくなるのだ!
で、これを利用したのがアルミ鍋で、あの鍋のくすんだ感じの加工はわざと厚めに酸化アルミニウムの皮膜を表面にほどこしているんだよ。
これをアルマイト加工というのだ。

鍋とかの場合はほうっておいてさびさせているわけではなくて、電気分解を利用してアルミ板の表面に厚めの酸化アルミニウム(アルマイト)の皮膜を生じさせるんだよ。
これを発明したのは、戦前の理化学研究所。
第3代所長の大河内男爵の時代はとかく実用的な発明が相次いで、理研発ベンチャーが数多く生まれたのだ。
アルマイトもその一つで、昭和の時代に小学生だった人には給食のアルマイト食器もおなじみだよね。
他にも、理研からは色んなものが出てきていて、合成酒の製造方法や鈴木梅太郎博士が抽出に成功したビタミンAの製造なんかも手がけていたのだ。
こうして、「科学者の楽園」と呼ばれた理研から生まれた技術は次々と産業に移転されていって、理研コンツェルンと呼ばれる企業群になったんだよ。
リコー(理化学光器)、理研ビタミン(麻婆ナスでおなじみだよね。)、科研製薬などは今も有名だよね。
アルミ鍋の話にもどると、このアルマイトの皮膜が鍋を防護しているんだけど、これはいくら厚いといっても強くこすったりすると傷ついてとれてしまうのだ。
なので、たわしなんかで強く洗ってはダメで、よく水ですすいでからスポンジで軽くこするのが正しい洗い方。

それに、あまり強い酸やアルカリを煮たりするのもよくないのだ。
酸味の強い果物、お酢をきかせた料理、こんにゃくのアクぬき、重曹を使ったものなんかも化学反応を起こしやすいので注意が必要だよ。
で、アルマイトの皮膜にキズがついてしまうとアルミニウムの表面が一部むき出しになるんだけど、そこに黒ずみができるのだ。
卵の場合は、たんぱく質中に硫黄を含んだアミノ酸のメチオニンが多く含まれていて、ゆでているとそこから硫化水素が分離してくるんだよね。
で、この硫化水素とアルミニウムの表面が反応すると硫化アルミニウムになって黒く見えるのだ!
他にも、水酸化アルミニウムができた後に水に含まれるミネラル成分と複雑な反応をして黒い沈着ができるみたい。
黒ずみをよくよく見てみると、こすった跡なんかがよくわかるよ。

で、硫化アルミニウムなんかは水に不溶なのでほうっておいてもあんまり害はないらしいんだけど、とりたいよね(笑)
一生懸命こすればとれるけど、そうするとかえってキズが増えてしまってまた黒くなる原因となるのだ。
なので、化学的にとる方がよいわけ。 ボクがネットで調べたものは、レモンやリンゴなどに含まれる弱酸性の有機酸(クエン酸、リンゴ酸とか)を使ってとる方法で、鍋にレモンの薄切りやリンゴの皮と水を加えて、よく似るというもの。
黒くなった部分は水には溶けないけど、弱い酸には溶けるのだ。
でも、黒いのはとれても、そこはアルミニウムがむき出しのままなので、そのままではまたすぐに黒くなってしまうみたい(>_<)
ほうっておいても酸化されて皮膜はできるけど、野菜くずなんかを水にすると、多少皮膜が強くなるそうな。
とは言え、最初から気を遣って使うのが一番だろうね。

ちなみに、黒くなるといえば銀食器。
銀は酸化されるだけで黒ずんできて、それがいわゆる「いぶし銀」なわけだけど、さすがに食器だとぴかぴかにしたいよね。
練り歯磨きに含まれる研磨剤で磨くというのもあるけど、化学的に対処する方法もあるのだ。
それは、レモン汁を少し入れた水にアルミ箔と一緒に煮るという方法。
イオン化傾向の違いで、銀よりもアルミニウムの方が参加されやすいので、そうすると酸化銀が電気分解され、酸化アルミニウムができるのだ!
ま、それだけアルミニウムは酸化されやすいってことなんだよね。

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