2009/04/04

当たるも八卦、当たらぬも八卦?

北朝鮮の衛星実験が大きな話題になっているけど、今日はついに「ミサイル発射」の誤報さわぎまであったのだ。
すぐに官房長かが誤報だったと発表したようだけど、かなり混乱があったみたいだね・・・。
その前には官房副長官からミサイル防衛は迎撃できない、なんてきわどい発言もあったし、今、ミサイル防衛が非常に大きな注目を集めているのだ。
というわけで、今回はミサイル防衛について調べてみたよ。

ミサイル防衛の構想はなんと1960年代、米ソの冷戦時代にさかのぼるのだ。
原子力爆弾、水素爆弾ができた後、これにロケット技術が加わってできてのが核ミサイル。
宇宙空間を通過して世界の端から端まで届く大量破壊兵器が開発されてしまったのだ。
で、これを防ごうという発想から出てきたのがミサイル防衛の考え方だよ。
ようは、核ミサイルが着弾する前に無効化しようというわけで、そのために検知する技術と迎撃する技術が開発されることになるのだ。

レーガン大統領時代の戦略防衛構想(SDI:Strategic Defense Initiative)は、宇宙空間を飛行する核ミサイルを人工衛星に搭載したレーザー兵器やミサイルで破壊しようとするもので、スターウォーズ構造なんて呼ばれたよね。
宇宙空間に機雷のように配備される小型のミサイルのブリリアント・ペブルなんてのもあったし、そのまま機雷のように触れるものを巻き込んで爆発する宇宙機雷のスペース・マインなんてのもあったのだ。
でも、開発に巨額な投資が必要であることや、宇宙空間にそういう兵器を置く是非もあってこれはキャンセルされたんだよね。
最近よく話題になっているスペースデブリを大量に発生させる可能性もあるんだよね。
で、そのレーガン大統領のあとを継いだパパ・ブッシュの時代になると、今のミサイル防衛構想が始まるんだよ。
日本では、平成10年に、ミサイル防衛に関する日米共同技術開発を行う方針が閣議決定されたのだ。
ここから防衛省/自衛隊が我が国のミサイル防衛の枠組みである、弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)システムの構築が始まったのだ。

現在のミサイル防衛は三段階にわかれているのだ。
ミサイルが発射されて宇宙空間に出るまでに打ち落とすブースト・フェーズ、宇宙空間を弾道飛行している間に打ち落とすミッドコース・フェーズ、最後再突入から着弾の間に打ち落とすターミナル・フェーズがあるんだ。
ブースト・フェーズでは、ジャンボ機の先端にレーザー兵器を搭載したABL(Airborne LASER)や弾頭のついていない地対空ミサイル(運動エネルギー兵器)で迎撃するんだ。
日本では航空自衛隊がABLに関する基礎的な技術開発を進めているけど、これって発射されたのをすぐに検知してそこまで駆けつけないといけないから、ほぼ不可能なんだよね・・・。
いくら発射段階では速度は速くないとは言え、地対空ミサイルをピンポイントで衝突させるのも難しいのだ(>_<)

一番有望視されているのがミッドコース・フェーズの迎撃で、これは弾道ミサイルをぶつけて打ち落とすのだ。
日本でそのために配備されているのがSM(Standard Missile)-3だよ。
弾道飛行の軌跡をあらかじめシミュレーションで予測して、そこに合わせて衝突させるんだけど、ぶつける方のミサイルも高度に制御しないとぶつけられないし、シミュレーションで予測してうまく衝突するように計算するのも大変なのだ。
で、宇宙空間を弾道飛行しているミサイルの速度は音速をはるかに超える超高速なので、官房副長官が言ったように、銃弾に銃弾をぶつけるような感じで、とても大変なのだ。
でも、通常は1発じゃなくて、複数の迎撃ミサイルを発射するので、バックアップはとれているんだよ。
でも、かつて米国が実験したときでもなかなか当たらなくて、かえってその難しさが実証されてしまったのだ。

最後のターミナル・フェーズでの迎撃は地対空ミサイル。
日本で配備を進めているのがPAC-3だよ。
再突入からターゲットへの着弾まではかなり飛行経路も予測しやすいので、弾道飛行中に当てようとするミッドコース・フェーズよりは当てやすい、と言われているんだけど、それでも速いことには変わらないから難しいのだ。
それと、もっと大きな問題があるんだよね。
ターミナル・フェーズで迎撃する場合は、どうしても日本上空で核ミサイルを爆発させることになるので、放射能の影響は防ぎきれないのだ!
放射能のある破片が地上に降り注ぐ可能性があるんだよね。
直接的な被害は防げるけど、間接的な放射能による影響は出てしまうかもしれないんだよね・・・。

というわけで、迎撃するのは相当難しいんだけど、それ以上に大事なのは核ミサイルの発射を検知する方なんだよね。
迎撃は技術が進化すれば当てられなくもないけど、それにはまず発射を速やかに検知して、すぐに迎撃できる体制をとる必要があるんだよね。
日本の場合は、この部分を米国にかなり依存しているので、一部で問題ではないか、と言われているんだ。

平時においては、人工衛星による画像を分析しているんだよね。
ミサイルが発射台に置かれたとか、燃料が注入されているとかいうのは、だいたい米国の偵察衛星や商用のリモートセンシング衛星が撮った衛星画像を分析した結果だよ。
日本でも平成10年に最初のテポドン事件を契機として情報収集衛星(IGS:Information Gathering Satellite)を導入することが閣議決定され、平成14年から運用されているのだ。
内閣情報調査室に置かれた内閣衛星情報センターが運用し、撮像された画像を分析しているのだ。
でも、その画像や分析結果は一般には公表されないので、どの程度わかっているのかもよくわからないんだよね。
確かに米国の商用衛星の画像しか出て来ないけど、やっぱりインテリジェンスの話なので不透明なんだよね。

で、実際に発射されたかどうかを検知するのは早期警戒衛星。
低軌道や超楕円軌道、静止軌道なんかに複数置かれた赤外線監視衛星で、ミサイルが発射されたり、核実験が行われたときの巨大な熱反応を監視しているのだ。
もともと画像でミサイルが配備されているかどうかの情報はあるので、そこで大きな熱反応があればそのミサイルが発射された、ということがわかるわけ。
日本はこの早期警戒衛星を保有していないので、米国に完全に依存しているんだよね。
で、この発射されたという一番大事な情報が米軍経由になるため、初動が遅れるんじゃないか、というのが一部の人が心配していることだよ。

ミサイルの発射が確認されると、今度はその飛行経路を分析することになるのだ。
そのときに活躍するのがイージス・システム。
日本でも「こんごう」などのイージス艦に搭載されているけど、これは大きなレーダーで、Xバンド(8~12GHzの周波数のマイクロ波だよ。)と呼ばれる波長の電磁波で上空を飛行しているものを捕捉するのだ。
その早さや発射情報から、ミサイルを特定し、その飛行経路を予測するというわけ。
ちなみに、イージスというのはギリシアの戦いの女神アテナが全能の神ゼウスから授けられた、あらゆる魔を祓い、攻撃を防ぐというアイギスという防具の名前から来ているんだよ。
FFには「イージスのたて」なんてのが出てくるけど、まさにそれだよ。

で、日本の場合は、イージス艦による捕捉システムを整備するとともに、実際の迎撃手段としてミッドコース・フェーズ用のSM-3とターミナル・フェーズ用のPAC-3の配備を進めているというわけ。
こういうのは使われないにこしたことはないけど、あの国は脅しなのか、本当にやってしまうのかがよくわからないから、牽制の意味も込めてある程度は用意しておく必要があるかも、なんだよね。
でも、当然安いものではなく、多額の税金が投入されるものなので、早くこういうものがなくてもすむ平和な世の中になってほしいものなのだ。

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