2009/07/04

シンボルか、機関か

現在、天皇皇后両陛下はカナダを訪問されていて、その後にハワイに寄られてから帰朝されるのだ。
この海外への行幸啓がいつも以上に注目されたのは、陛下が海外に出られている間に衆議院の解散が行われる可能性があったため。
衆議院の解散は憲法に定められた国事行為として天皇陛下が行うことになっているのだ。
これに対して、麻生首相は「法律の定めに従って皇太子殿下が解散を代行できるので問題ない。」と発言して話題になったんだよね。
で、それまではあまり考えたことがなかったけど、改めて天皇の国事行為が気になったので、少し調べてみたのだ。
本当は小中学校の社会科で習っているはずなんだけどね(笑)

日本国憲法の第1章はまさに天皇について定めた部分で、天皇の位置付け(象徴であること。)や皇位の継承は皇室典範によること、そして、国事行為に関することが規定されているんだ。
戦後の連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の占領政策で一番重要だったのは天皇の扱いで、戦争の責任を追及して廃止してしまうのか、天皇制自体を残すのかは大きな議論があったところなのだ。
現在でも研究が進んでいるけど、けっきょくは国民感情を踏まえるとともに、あまりにも大きく日本の政治体制を変えるのもはばかられたので、立憲君主制をより強め、国家元首ではあるがあくまでも「象徴」という扱いで残すこととしたんだよね。
これで「天皇が人間になった」とよく言われるわけだけど、実際には戦前戦中の一部で「現人神」だと狂信的に教え込む教育があった以外は、「とても偉い人」とは思っても、本当に神様だと信じている人はいなかったと言われているんだよね。
だって、京都の人は別としても、明治直前の江戸時代の市井の人たちは、将軍様は知っていても天皇の存在は認識していなかったと言われるからね・・・。
平安時代に藤原氏が実権を握り、貴族政治が始まって以降、江戸幕府までずっと続いていた、国を統べるのは天皇であっても実際の政治的実権を握っているのは別の人、という状態にもどっただけとも言えるのだ。
むかしも元号を変える、叙位を行う、新嘗祭などの儀式を行う、というのが天皇の主な仕事で、政治は多くの場合別の人がやっているわけで、だからこそ天皇自ら政治を執ると「御親政」なんて呼ばれるんだよね。

歴史はさておき、日本国憲法もこの我が国の伝統とも言うべき(?)位置付けを踏襲するような形になっていて、天皇の国事行為は、憲法第3条で「内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ」とされているのだ。
さらに第4条第1項では、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」ともされていて、政治の中身には直接タッチしないものとされているんだよ(この解釈には学説がいろいろあるいたいだけど、通常は象徴天皇は一切の政治的機能を持たないと言われるのだ。)。
言わば、ひとつの「認証機関」として「お墨付き」を与えるような立場で、象徴であるとともに、美濃部達吉さんがかつて唱えたように、国家機関のひとつとしての側面も持っているのだ。

具体的には、まず憲法第6条第1項で国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命すること、同第2項で内閣の指名に基づいて最高裁判所長官を任命することを定め、次に第7条で残りの国事行為を定めているのだ。
その最初が、憲法改正、法律、政令及び条約の公布を行うことで、これは官報の法令の公布のところに見られる「御名御璽」というやつだよ。
公布に当たっては、必ず天皇の名前とはんこがついたものが作られるのだ。
その次が、国会の召集、衆議院の解散、国会銀の総選挙の施行の公示で、これが今話題になっている国会関係の規定。
解散のときは、陛下から内閣総務官が解散の閣議決定を奏上し、詔書に御名御璽をいただくのだ。
これが官邸にもどり、首相が副署した後、今度は官房長官がふくさに包んで国会に持ち込み、衆議院事務総長が確認してから議長にわたすのだ。
で、解散の詔書が読み上げられ、解散となるわけ。
なので、内閣総務官がモーニングを着ていると、解散かもしれないのだ(笑)

それから、国務大臣などの認証で、認証される公務員がいわゆる「認証官」でグレードの高い役職と言われるよ。
さらに大赦や刑の減免などの認証で、恩赦とか特赦と言われるやつだよね。
そして、毎年報道されるのが栄典の授与で、勲章の授与(叙勲)や表彰(褒章)をするのだ。
また、批准書などの外交文書の認証も行っていて、外交文書も御名御璽がないと発効していないことになるのだ。
外国の大使や公使の接受も重要なお仕事で、宮中の晩餐会や迎賓館での応対なんかがあるよね。
最後が儀式に関することで、即位の礼、大喪の礼、その他の儀式を挙行するのだ。
ただし、宗教的色合いが強い「践祚(せんそ)の儀(皇位を正式に継承する儀式)」や「大嘗祭(即位後最初の新嘗祭)」などは天皇家の行事として行われるそうだよ。

こうした国事行為も、憲法によって代理が立てられることになっているのだ。
それが第4条第2項と第5条で、第4条第2項では天皇が臨時に国事行為を行えなくなった場合(今回のような海外訪問なんかが主だよ。)には国事行為臨時代行を置くことができることとし、第5条では天皇の年齢が若すぎする場合や病気療養で国事行為が行えない場合は摂政が置くことができるとしているのだ。
摂政は、皇室典範の定めるところに従い置かれることになっているので、いつでも置けるようになっていたんだけど、臨時代行の方は昭和39年に「国事行為の臨時代行に関する法律」というのができるまでは、憲法上は置けることになっていたけど具体的な手続がなかったために置けなかったそうだよ。
この法律によって、臨時に国事行為ができなくなる場合は、内閣の助言と承認により、皇室典範で摂政を置く場合に摂政になる皇位の皇族を臨時代行とすることができるうようになったのだ。
現在は皇太子殿下がその皇位に当たり、内閣は臨時代行を立てる場合・解除する場合は公示することになっているので、官報をチェックしているとわかるよ。

というわけで、こうやって改めて調べてみると、なかなかおもしろいものだねぇ。
ボクはわりと皇室関係は好きなんだけど、こういう機会でもないと知らないことが多いのだ。
これで皇室ウォッチャーくらいまでにはくわしくなれたかな?

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