2009/08/21

辛麺

今日のお昼は、ラーメン好きのうちの職場の人が絶賛していた担々麺のお店に行ったのだ。
最近は辛いものがブームなのか、韓国料理屋やインドカレー屋なんかも増えてきているけど、担々麺を出す店も増えたよね。
本場風の激辛麻婆豆腐の店もよく見かけるようになったし。
で、ボクも辛いものが好きなので、けっこう食べるんだけど、ふと、本場の中国の「担担麺(擔擔麪)」は日本のものとは違うというので、ちょっと調べてみたのだ。

担々麺は中国は四川省の麺料理。
四川は亜熱帯でかなり蒸し暑いので、麻婆豆腐や回鍋肉などの辛みのある料理が多いよね。
つい最近はやっていた「レッド・クリフ」の世界、三国志の蜀の国があったところなのだ。
中国四千年の歴史とは別に、古代文明が栄えていたところとも言われているんだよ。
黄河文明とはまた別の文明があったと言われているのだ。
今ではパンダの育成と保護を行っている「パンダ保育園」でも有名なのだ!

そんな四川では、いわゆる「ぼてふり」と呼ばれる天秤棒でかついで売られていた麺料理なんだって。
担々麺の「担」はまさに「かつぐ」の意味で、天秤棒で担いで売り歩いたのでその名がついたそうだよ。
※「担担」で天秤棒という意味もあるんだって。
で、天秤棒で担ぐという性質から、重くなるスープを持ち歩けなかったため、汁気のない、辛いタレと薬味をからませた麺として売られていたのだ。
ゆで麺に唐辛子と花椒(麻婆豆腐の「麻」のしびれるような辛さの味のもとだよ。)の辛みとと芝麻醤(すり胡麻と油を練り混ぜた中華風の胡麻ペースト)の甘みをきかせたたれを少量入れ、そこにそぼろ肉、刻みネギなどの具や薬味を加えてできあがり。
今の日本で言う「汁なし担々麺」みたいなものだね。

天秤棒の片側は七輪、もう片側は鍋で、その鍋には仕切りがあって、半分は具、半分はタレだったんだって。
で、ゆでた麺にあたたかくしたタレと具をまぜ、小さなお椀に入れて提供したらしいのだ。
今みたいな「食事」という体裁ではなく、「おやつ」とか「軽食」といった扱いで、むしろ当時のファストフードだったみたい。
四川のものは本当に辛いんだけど、上海なんかでは辛いのが苦手な人も多いので、かなりマイルドになっているんだって。
日本と同じだね(笑)

こうして見ていくと近いのが、江戸時代の日本の屋台そば。
だけど、日本のそばの場合はいわゆる「かけそば」で、しっかりと汁も一緒に運んでいたんだよね。
軽食にしていたという扱いは一緒だけど、そこが大きく違うのだ。
おそらく、江戸と四川の違いは、飲料水にできるグレードの水がすぐに手にはいるかどうかだと思うんだよね。
日本のそばの場合、持ち歩くのはいわゆる「かえし」で、これにお湯を加えて「つゆ」にするのだ。
つまり、その薄めるお湯やそばをゆでるお湯は現地調達というわけ。
そうすると、四川の天秤棒と同じものだけを持ち歩いても、汁そばが提供できるのだ!

話を担々麺にもどすと、今みたいな辛いスープと肉そぼろの麺になったのは日本に導入されてから。
最初に日本に紹介したのは、何を隠そう、「四川の神様」こと四川飯店のオーナーシェフ・陳建民さん。
中華の鉄人・陳建一さんのお父さんだよね。
陳建民さんは、NHKの「きょうの料理」などの料理番組に出演して、自分のお店で出している日本風にアレンジされた四川料理を紹介していったのだ。
それで麻婆豆腐や回鍋肉、エビチリなどが一般的になっていったんだよ。
で、今はさらにそれにとどまらず、本場の味が志向されて、本場の四川料理が持ち込まれてきているわけ。

担々麺の場合は、激辛の少量のタレでゆで麺を混ぜたものだったんだけど、辛みの苦手な日本人にあわせてスープで薄めて辛みを弱くし、麺の量も増やして一食の「食事」になるようにしたのだ。
それが日本風の担々麺だよ。
食事に見合うものにするために、ここに野菜などの具がどんどん加えられていって現在のバリエーションがあるのだ。
最近は干しエビのダシをきかせたものとか、刻んだザーサイを入れたもの、豚のあばら肉の唐揚げの「排骨」をいれたものなど様々だよね。
さらに、ボリュームを増すとともに辛さを軽減させるためにごはんをサービスで提供するお店も多いのだ。
現在ではこうした日本風の担々麺が香港などに逆輸入されているんだそうだよ。
日本風のカレーライスがインドにはいるようなものなのだ(笑)

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