2009/12/19

マスのサケ

クリスマスが過ぎると、一気に年末っぽくなるねぇ。
今年ももう1週間をきっているのだから当たり前だけど。
で、クリスマスケーキやローストチキンが消えた後に出てくるのが、お正月の定番のお節料理の材料(特にかまぼこ、数の子など)や切り餅などなど。
そして、かつてのお正月の定番と言えば、冷蔵庫がなくても保存できる新巻鮭なのだ。
産卵期に川を上ってきて脂が落ちきったサケの内臓をぬき、そこに塩を詰めて保存食にしたのものなのだ。
でも、最近では、塩抜きが大変だし、そんなにたくさん食べられないから、雰囲気だけと普通にサケを買うことも多いみたいだよね。
なぜかスモークサーモンなんかが一緒に並んでいたりするのだ。

で、このところ注目を集めているサーモンと言えば、一気に知名度が上がってきたトラウトサーモン。
サーモントラウトとも呼ばれるけど、「トラウト」は「マス」、「サーモン」は「サケ」だから、本来はどっちつかずの不思議な名前なのだ。
そうなると気になってくるので、とるものもとりあえず(?)調べてみたよ。

正体から言うと、このトラウトサーモンというのは、子どものころによく川でつかみ取りをしたニジマス!
そのニジマスをチリやアルゼンチンの南の「冷たい海」で養殖して大きく育てたものを輸入しているんだよ。
もともとニジマスはカムチャッカから北米大陸北部の寒い地域の原産で、サケ・マス類ではあってもそのほとんどの個体は海に降らずに淡水域にとどまるのだ。
たまに海に出て大きく育つやつが出てくるらしいんだけど、それがスチールヘッドと呼ばれるものなのだ。
よく食卓に上るベニザケは逆で、ほとんどの個体は海に降って大きく育つんだけど、一部が淡水域に残るとヒメマスと呼ばれるんだよね。
で、その降海型のスチールヘッドと比較的大きなニジマスとを交配していってできあがったのが、大きく育つドナルドソン・トラウトという系統で、米国ワシントン州立大学のドナルドソン博士が作り上げたんだそうだよ。
で、そのドナルドソン・トラウトを完全海洋養殖したのがトラウトサーモンというわけ。
でも、生物種としては完全にニジマスなのだ。

海流が比較的早い冷たい海で養殖することで、脂がのりすぎることもなく身も引き締まるのだ。
また、サケ類は寄生虫がいるので生食せずに燻製にしたりするわけだけど、北極海を回遊中に寄生虫に寄生されることが知られていて、養殖する場合は寄生虫フリーになるんだって。
つまり、スモークサーモンやルイベ(サケを冷凍してから薄く切ったもの)にしなくても、お刺身でいけるんだよ。
輸入物だけど安価に手にはいるので一気に人気が出てきたのだ。
アトランティックサーモン(タイヘイヨウサケ)やギンザケも養殖物が出回っているらしいけど、成長が早く安くできるのでここのところトラウトサーモンの流通量が増えてきているんだって。
(通常ムニエルやスモークサーモンなどの洋風の料理に使うサケは欧米で一般的なアトランティックサーモンだよ。)

川にいるニジマスも流通しているのはほとんど養殖物で、どうも日本では放流してもほとんど定着しないみたい。
知床半島の一部で定着している例もあるそうだけど、多くの場合は釣りなどの目的で放流されているものを見かけているのだ。
最初に日本に移入されたのは1877年というから明治10年。
さすがにそのころからのおつきあいだから、養殖ものだろうとは思っていても、日本にむかしからいるのかと思っていたよ。
一部の例外を除いて、あまり定着しないから今でも盛んに放流しまくっているのかもしれないけどね。

ニジマスはエラから尾びれにかけて赤~赤紫の模様があって、これが虹色の光沢があるのでニジマスと言うのだ。
これが海に降って大きくなると頭部が黒くなるのでスチールヘッド(和名ではテツ)と呼ばれるんだって。
淡水域に生息しているものでは成熟後に数年にわたって複数回の繁殖が可能で、サケの川上りのように一生に1回の繁殖というわけではないのだ。
サケ類としては比較的高温でも生息可能だけど、それでも冷たいくらいの水温が好きで、もともと流れが急なところに住んでいるので、溶存酸素量(水の中に溶けている酸素の量)も多い方がいいみたい。
なので、ニジマスの養殖場にはよく水車があって、それで水をよくかき回しているらしいのだ。
トラウトサーモンを海流のある海域で養殖するのも同じだね。

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