2010/02/20

滑り滑れば

冬季五輪真っ盛りだねぇ。
普段はフィギュアスケートくらいしか話題にならないけど、さすがにオリンピックだと他の競技も注目を集めているよね。
欧州では常にスキー競技は人気があるようだけど。

そんな中、ボクが気になるのはスキーやスケートの滑る原理。
長野五輪の時は、よく滑るようにとスケートリンクに特殊な氷を敷きつめていたけど、「滑る」というのは冬季五輪の競技の大きなキーワードだからね。
スピードスケートもスケート靴の刃(ブレード)の技術開発でけっこうタイムが変わってくるらしいし、スキーも板の材質・形状やワックスとの相性なんかでかなり違うらしいのだ。
というわけで、今回はそもそもの「滑る」原理を調べてみたよ。

ところが、ちょっと調べただけですぐわかるのは、スキーにしろ、スケートにしろ、一般的な説明はあっても、きちんと科学的には証明されていないようだ、ということ。
スピードが上がるとかきれいにターンできるとかの現象面が重要だから、そういった技術は向上していっても、なかなか原理的な部分を詳しく調べようとしないのかもね。
今はどうも経験則的にトライ&エラーで試しながら技術を向上させているようなのだ。
確かに、原理がわかってもなかなかそれが技術に結びつくわけでもないんだけどね。
とは言え、一般論としてわかっているのは、どちらも接触面に液体の水ができて、それで滑っているということ。

雪や氷の上では、タイヤだと滑ってしまってうまく前に進めないよね。
これは、タイヤの場合は、タイヤと地面との間の摩擦力を利用してタイヤの回転運動を直線的な前進運動にしているのだ。
タイヤの接地点が地面の上で滑ってしまうといわゆる「上滑り」になってしまって、前に進まないというわけ。
つまり、このときに重要なのは静止摩擦力で、タイヤ自体は地面の上を滑ってはいけないのだ!
摩擦が大きければ大きいほど回転力が推進力に効率的に変換されるのだ。

一方、逆にうまく滑ることで逆にそれを推進に使ってしまおうというのがスキー。
スキーの場合、ある程度面積のある板で接地しているわけだけど、それが地面の上で滑ることが重要なのだ。
よく言われるのが、スキー板が雪上を滑る際、その摩擦熱で表面の雪がとけて水になり、薄い水の膜ができて、その上を滑っていく、というもの。
自動車がぬれた路上で滑るハイドロプレーニング現象と同じようなイメージだよ。
このときは、静止摩擦ではなくて動摩擦で、摩擦が小さければ小さいほどよく滑るのだ。
なので、スキーの場合はよく滑るようにワックスを塗ったりして摩擦を小さくし、、タイヤの場合は滑らないようにタイヤの表面に溝を彫って摩擦を大きくするのだ。
ちなみに、ワックスは水をはじくので、「ぬれ」による摩擦の増加を防ぐのだ。
板の表面にべったり水がついてしまうと、水の粘性の分だけ摩擦が増してしまうんだけど、表面に水が付着しなければそれが防げるのだ。

接地面が少ないとスキー板が雪の中に埋まってしまうので、スキー板は細く長く作られているのだ。
こうすると、体重が分散されて雪面にかかるんだよね。
埋まらないようにするためにはかんじきのように面積を稼げばいいんだけど、スキー板のように細長くすると方向性が出てきて、直進性がよくなるのだ。
スキージャンプなんかは滑ってスピードも出るし、滑空時にも翼の役割をするので長いスキー板が使われるよね。
でも、実際には雪面は平らではなく、でこぼこしているので、小回りがきく必要もあるのだ。
そのためにモーグルの場合は小ぶりの板で、しかも、板自体に柔軟性があってこぶなどを飛び越えた後の衝撃を吸収するようになっているみたい。
ただ滑ればいいってもんじゃないんだよね。

これに対して、スケートは氷の上に溝を掘りながら滑っていくんだけど、そのとき、摩擦熱で溝に液体の水がたまり、それが潤滑油になって摩擦を小さくしているのだ。
固くなった窓サッシに油をさすとよく動くようになるのと同じ原理。
スキーは水の膜の上を滑るイメージだけど、こちらはあくまでも溝の中を滑るので、接地面は少ない方が摩擦が少ないのだ。
スキーと同じように使用目的でいろんな形があって、主要なのはフィギュア、スピードスケート、アイスホッケーの3種類。
フィギュア用はブレードもこぶりで、つま先にトウピックと呼ばれるギザギザのひっかける部分があるのだ。
ジャンプの時はここをひっかけるんだよね。
スピードスケート用は長いブレードでスピードが出るようになっているのだ。
アイスホッケー用は小回りがきかないと行けないので、ブレードは短いんだよ。

実は、カーリングも同じような話で、あれはストーンと呼ばれるとってのついた石を氷の上で転がしていかに正確に目的地点まで滑らせるか、という競技だけど、ここでも滑りが重要なのだ。
カーリングのストーンを誘導する際、一生懸命にブラシで氷をこするんだよね。
そうすることで、摩擦年で氷がとけ、でこぼこな氷の表面がなめらかになり、よく滑るようになるのだ。
さらに、こすったところだけが滑りやすくなるので、自然とストーンはこすった部分の上を滑っていくことになるわけ。
これで進行方向の修正なんかもできるようになるんだ。
で、ある程度行ったところでこするのをやめると、そこから急に摩擦が強くなるので、今度はブレーキがかかるというわけ。
つまり、滑りやすい「道」を作ってやって、その上でうまくストーンを誘導するのだ。

というわけで、いずれもキーワードは水と摩擦なんだよね。
でも、それぞれ滑り方に特徴があるのだ。
スキーの雪面はどうにもできないけど、スケートのリンクの氷は結晶を大きくして方向性をそろえることで「よく滑る」高速リンクを作ることができるので、そういった面で改良できたりもするんだ。
滑るだけと思っても、なかなか奥が深いのだ。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

スキーのが滑る理由は一般論は摩擦融解説だ。
最近は表面融解といって氷や雪はミクロの世界でみると表面が液状の水分で覆われている。したがって氷や雪はそのものが滑る物質である。
レーシングの世界でスキーソールにストラクチャー加工を施したりフッ素ワックスで撥水性を高めるのは流体摩擦を減らそうというもの。
自然が相手なんで、まったく同じ条件は2度ないわけで、そのあたりのさじ加減が技術の見せどころかな?
スキーワックスマンより。