2010/02/27

水は腐る?

よく「水が腐る」というけど、これって食品が腐敗する「腐る」とはちょっと意味合いが違うよね。
食品の場合は、脂肪が酸化したり、タンパク質が分解されたりしていって異臭を放ったり、糖分が酸化されてカルボン酸ができて酸味が出てきたりすることを指すけど、水はもともと元素記号でもHOなので、そんな分解をするわけはないのだ!
でも、なぜか「水は腐る」というし、実際に「腐った」と言われる水は変なにおいや味がするんだよね。
で、それはなぜかなぁ、と疑問に思ったので、少し調べてみたのだ。

端的に答えを言うと、水が腐る、といった場合、その原因は水自身ではなくて、水の中に含まれる不純物によるのだ。
密閉された容器に入っていない場合、空中からほこりなどが落ちてはいるし、いつのまにかアメンボがいたりするよね。
夏にはボウフラがわくこともあるのだ!
けっこう風に運ばれていろんなものが混入しているようで、水の中に不純物が増えていくというわけ。

その不純物の中に有機物が含まれていると、それが分解されて異臭・異味の原因となるのだ。
当然、有機物の分解が行われているので、そこにはバクテリアやカビなどの雑菌が繁殖しているわけで、そういう水を飲むとバクテリアやカビの毒素でおなかを壊したりもしてしまうのだ。
そういう細菌だけでなく、アオコといわれるらん藻が繁殖して水の色が緑色になることもあるのだ。
水が循環しない溜池などではよく発生するアオコだけど、水の表面がらん藻に覆われることで水中に日光が届かず、そのために水中に生息している緑藻や水草が光合成できなくなって水中の酸素が欠乏し、多くの生物が死滅するのだ。
そうするとそれらが分解されて異臭が出てくるわけ。
さらに、アオコの種類によっては独特の臭みを持つ物質を水中に放出するし、毒素を出すものもあるので、水の品質は格段に落ちてしまうのだ・・・。

これを防ぐためにも、公園にあるような大きな池では、水を循環させるように噴水などの装置があったり、用水路から水を流入させたりして溶存酸素を増やしてそういう事態が起こらないように気をつけているんだ。
また、洗剤などが含まれた生活排水が流入すると、その中に含まれる有機リンやカリウムが栄養源となってアオコが繁殖しやすくなるので、下水処理も重要なんだよね。
都心でどぶ川やヘドロ沼が減ったのもそういう努力が実ったのだ。
琵琶湖くらい大きいとなかなかその努力は実らないけど、むかしに比べたらかなり水質はよくなっているそうだよ。

でも、そういう開放系の水だけでなく、街中でネコよけ(?)に置かれているペットボトルに入った水も「腐っている」ことがあるよね。
上の話からすると、新たに浮遊物が落下して不純物が混入することはないので、「腐る」ことはないような気がするんだけど、そんな甘いものではないんだよね(笑)
水道水の場合、上水道の浄水では、沈殿・濾過、オゾン処理(オゾンにより化学物質を分解除去する。)、活性炭吸着処理(有機物などを活性炭が吸着除去する。)などをして水質を保っているんだけど、それでも微量ながら不純物は残っているのだ。
かつては東京の金町浄水場や大阪の淀橋浄水場の水道水はくさいと言われたけど、それは水道水中に含まれる不純物に由来しているんだよね。
水道水にはカルキ(次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カルシウム)が加えられていて、その強い酸化力で殺菌されているんだけど、カルキは煮沸で簡単に除去されるし、普通にそのまま放置しておいても徐々に抜けていくので、その殺菌力は持続しないのだ。
なので、そのまま水道水を放っておくと、不純物として含まれている有機物が分解され、結果、水が腐るという事態も発生するわけ。
特に水道水の場合は蛇口から出るときに細菌にふれる可能性が高いので、その後密閉容器に入れてもムダなのだ!
湯冷ましなんかはカルキが完全に抜けているので特に危険だよ。

一方、ペットボトルに入れて売られている天然水などは、目の細かいフィルターを通したりすることで雑菌を可能な限り除去しているのだ。
家庭用の浄水器も同じような原理だよ(家庭用浄水器はイオン交換カラムで水道水中の塩素を除いたりもしているのだ。)。
これによって、開けない限りは腐ることはほぼないのだ。
時々異物混入が問題になるけど、あれはペットボトルにつめる際の不手際だよね。

さらに純度が高いのは注射薬や点滴に使われる医療用の精製水。
これは完全に雑菌を除去した状態が求められているので、蒸留・濾過に加えてイオン交換などを駆使して無味・無臭の本来の水の状態にもってきているのだ。
それでも不純物としてのイオンなどは含まれているんだよね。
さらに精製を進めると化学実験に使う純粋になるけど、こうなると純度は99.999・・・%となるのだ。
IC工場のクリーンルームでチップの洗浄に使われる超純粋になると、小数点以下に9が10個以上も続くような純度だよ!
こうなると「腐る」なんてことは絶対にないのだ。

というわけで、「水が腐る」というのは水の中に含まれる不純物の問題なので、それをどう評価するか、というだけの話なんだよね。
自分でも蒸留とかして純度を高めることはできるけど、要は水道水の中にも「腐る」原因になる不純物はどうしても含まれるので、そのリスクを承知した上で取り扱う、というのが正しい姿勢のような気がするよ。
できるだけ腐らないように気をつけつつも、腐ること前提で取扱に注意するしかないのだ。

5 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

水道水のなかに有機物や雑菌があればのお話ですが、地域によって違うでしょうが水道水にどれほど含まれているでしょうか。雑菌が繁殖するほどなのでしょうか。定量的な実験がほしいとおもいます。私は冬期に2リットルペットボトルに2年保存した水を飲んでみましたが異常は感ぜられませんでした。沸かせば安心して飲用可能と思いました。

しろたん調査員 さんのコメント...

クリーンルームで移すなら別だけど、水道水中にもともと混入している分だけではなく、ペットボトルに移す段階で不純物が混入するおそれがあるし、ペットボトルの中にすでに有機物がある可能性もあるのだ。だからこそ現実に街で見かける「ネコよけ」の水は「腐っている」んじゃないかな?それと、煮沸すればたいていの細菌は死滅するけど、中毒の原因となる可能性のある細菌由来のLPS(リポ多糖)や真菌由来のカビ毒なんかは除去できないから、注意した方がよいと思うよ。色がついているような水なら論外だけど、透明なものでもないとは言い切れないから。これは雑菌が混入している地下水も同様で、煮沸すれば安全というわけではないのだ。

匿名 さんのコメント...

大きな水のペットボトルを開封してから一ヶ月経つんですけど、腐りますかね?ちなみに冷蔵庫には入ってないです。腐ると苦い味しますか?

匿名 さんのコメント...

さっきの者ですが、返信していただけると嬉しいです。助かります:)

しろたん調査員 さんのコメント...

口を直接つけて飲んでいたら雑菌が混入している可能性は高いよ。
ジュースなんかの糖分を含むものと違って、水の中でどこまで雑菌が繁殖するかはよくわからないけど、あえてリスクをとるかどうかかな?
ちなみに、すぐにわかるようなにおいや味がある場合はもうアウトだけど、無味無臭でも雑菌が繁殖しているおそれはあるので注意。そのまま飲んじゃいけない井戸水だって見た目はまったく問題なく見えるのと同じだよ。