2010/04/23

立体視の偽

ついこの間デジタル・ハイビジョンが出てきたと思ったら、今度は立体テレビが出てきたねぇ。
これまでは専用のメガネが必要だったりしたけど、ついに裸眼でも立体的に見えるディスプレイが開発されたのだ!
なんでも、次世代型のDSではその立体視ディスプレイが装備されるのだとか。
なんだかむかしアニメで見たようなホログラフィーが浮き上がってくるディスプレイのようだねぇ。
で、こうなると気になるのが、なんで立体的に見えるか、ということで、さっそく調べてみたよ。

まずおさらいをしておかないといけないので、人間がどうやって立体視をしているかという話。
人間や多くの猿、一部の鳥では、目が顔の正面に並んで二つついているので、ものを立体的に見ることができるのだ。
これは、右目で見たときと左目で見たときでは入っている映像情報が異なり、その「差」(ずれ)を脳内で「奥行き」として処理しているからなんだ。
このずれのことを両眼視差と言っていて、近くにあるものであれば差が大きく、遠くにあると小さくなるのだ。
簡単にイメージしてみると、右目で見ればものの右側がより深く見えるし、左目だとその逆になるので、両目で見られる中心の共通領域と片目でしか見えない領域との見え方で奥行きを判断しているということになるよ。

草食動物や魚のように顔の側面に目がある場合はあまり立体視が得意じゃないんだよね。
目が顔の前方に並んでいると目だけで見渡せる範囲は狭くなるけど(そのために首の運動で顔の面を動かす必要が出てくるのだ。)、立体視ができるので奥行きや距離感をつかみやすく、遠近感覚に優れるのだ。
一方、目が顔の側面にある場合、立体視がしにくいので、対象が自分からどの程度離れているかは見える大きさだけで判断する必要があるんだけど、その分一度に広範囲を見渡せるんだよね(自然界では外的などは当然大きさがあらかじめわかっているものなので、さほど不自由はしないみたい。)。
これは進化の過程でどちらがその動物の生活環境に有利だったか、ということにつながるんだよね。

これが人間が立体視をしている原理なんだけど、逆に、左右の目にずれのある画像情報を送ることができると、脳内で勝手に「奥行き」があるものと処理して立体的に見えるようになるのだ!
これは一種の錯覚で、遠近法を使った絵に奥行きが感じられるようなものがさらに高度化されているようなものかな?
で、右目用の情報と左目用の情報をどうやってそれぞれの目に届けるかで、立体映像の方式が変わってくるわけ。

ホログラフィーのように三次元像を再現する技術もあるようだけど、ディスプレイに使う場合は、平面の画面に映し出された映像を見て、それを立体的だと錯覚するようにし向けているんだよ。
もっとも古典的なのは赤と青のメガネを使うもので、赤いセロファンを通すと青色の映像情報だけが目に入り、青いセロファンを通すと赤色の映像情報だけが目にはいるので、これを右と左に振り分ければよいのだ。
雑誌の付録にもよくついていたようなものだよね。
でも、このままだとモノクロ映像になってしまうのだ。
最近はカラー情報を残すこともできるようになっていて、それを使った立体映像のアニメなんかもあったよね。
でも、青と赤のフィルターを通すという原理を使う限り、どうしてもカラーバランスは崩れてしまうのだ。
その分技術的に簡単で安くすむようだけど。

ここからもう少し進化したのが偏光を使ったもの。
一般に偏光と呼ばれるのは、電場(又は磁場)の振動方向がそろった光のことで、直線的に振動するのが直線偏光、振動面が回転していくのが円偏光と呼ばれるのだ。
自然光の場合はいろんな方向に振動している光(=電磁波)が混ざっているんだけど、偏光子と呼ばれる素子を通すことで振動面をそろえて偏光に変換することができるんだ。
この偏光子は逆方向から見ると偏光フィルターにもなっていて、特定の振動面を持つ偏光しか通さない性質があるので、これを利用して左右の目に別の映像を振り分けることができるのだ。
右用・左用それぞれの映像を異なる振動面を持つ偏光で作っておいて、偏光フィルターのついたメガネをかけると片側の偏光の映像だけが目に入ってくるという仕組みだよ。
遊園地などにある立体映像のアトラクションは主にこの原理を使ったもので、入るときにわたされるサングラスのようなメガネが偏光メガネで、あれがけっこう高価なんだよね(笑)

最近出てきているのは液晶シャッターメガネを使うもの。
これは、画面上は右目用映像と左目用映像が高速で入れ替わっていて、それに合わせてメガネのレンズにシャッターが下りて片目だけに映像情報が入るという仕組み。
左目用映像を映し出しているときには右目のシャッターが下りているのだ。
実際には何かが物理的に下りてくるんじゃなくて、鋭気称になっていてそこに電圧をかけて一時的に見えなくするというメカニズムみたい。
すぐれた仕組みで、二重にぶれた映像を流していないので裸眼でそのまま画面を見ても気持ち悪くないのだ(笑)
ただし、メガネの方を無線で画面に合わせて駆動させなくてはいけないので、けっこう大がかりなものではあるし、けっきょくメガネが必要なのだ。

そこで出てきているのが裸眼で立体視できるもの。
現在報道などで出てきているのは2つで、メガネなしでも左右の目に別の映像を届けようとする手法と、そもそも普段目から入ってくる視覚情報のように映像情報を光線として再現する手法なんだって。
前者は、画面に細かなスリットが入っていて、二重に映像を映し出しても、スリットによる解説で右目用の映像は右方向に、左目用の映像は左方向に出てくるというもの。
まもなく量産も開始されるそうだけど、メガネがいらないとは言いながら、画面を正面から見ないとうまく立体的に見えないのが難点なのだ。

そこも解消する技術がNHK放送技術研究所なんかでやられているインテグラル立体テレビシステムというもので、屈折率の異なる複数のレンズを通して撮影し、それをやはり屈折率の異なる複数のレンズを通して映像として映し出すことで、普通に目に入ってくる視覚情報と同じような光線の波面が再現されるんだとか。
簡単に言うと、普通にものを見たときの視覚情報を擬似的に再現して映し出してくれということだよ。
これだと、側面から見ても、寝転がってみても立体的に見えるそうなのだ!
すごい技術だねぇ。

というわけで、立体テレビはどんどん技術が進歩していて、そのうちに浸透していくみたい。
ゲーム機にまで採用されれば、立体放送が標準化されるのも近いかな?
でも、地デジですら導入が遅れているのに、またすぐに立体テレビじゃなかなか浸透しないだろうけど。
とりあえずは、裸眼でその映像を見てもぶれて見えないけど、対応テレビで見ると立体的に見える、というのから始めるとよいのかもね。

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