2010/05/01

氷の国のハイじ

GW前になんとか回復したようだけど、アイスランドの火山噴火は欧州に大きな影響を与えたよね。
単純に噴煙で視界が悪くなる、火山灰が降ってくる、というだけでなく、航空機が飛べなくなるという大事に至ったのだ!
これにより人と物の航空輸送が止まり、短期間ながらかなりのインパクトがあったよね。
海外旅行者が取り残されたり、チーズやチョコレートなどの輸入品が品薄になったり。
で、気になったのが、その原因ともなる火山灰。
せいぜい鹿児島の桜島のイメージしかなかったんだけど、この際、ちょっと調べてみたのだ。

火山灰は「灰」とは言ってもものを燃焼させた後の燃えかすの「灰」とは成分的にもまったく違うもの。
定義としては、火山が噴火などをしたときに出てくる火山噴出物のうち、固体で直径2mm以下のものを指すのだ。
直径64mmまでが火山礫で、更に大きいのは火山岩塊というのだ。
火山礫以上のものが空から降ってくるとかなりの物理的ダメージになるよね。
このほか、気体として噴出する火山ガス(硫化水素のようないわゆる火山性のガスだけでなく、水蒸気もここに含まれるよ。)や液体の状態で噴出する溶岩(後に固まるけどね。)や熱水(これは温泉とも言うのだ。)も出てくるのだ。

燃えかすの方の灰の主成分は炭素だけど、火山灰の方はむしろ鉱物由来のもので、火山ガラス、鉱物結晶、古い岩石の破片に分けられるんだとか。
火山ガラスというのは噴火に伴ってできる微粒子のガラスで、地下で高圧力で保たれていたマグマが噴火によって上昇してくると一気に圧力が下がり、そこに溶解していた水や二酸化炭素などの揮発成分がガスとなって発砲するために、飛沫となって飛んだマグマが急激に冷却されてガラスとなるのだ。
まさに炭酸飲料の栓を抜いたときと同じで、シュワシュワと発砲するけど、その際、泡が破裂するときに出てくる飛沫が由来というわけ。
炭酸飲料の場合はそれが水だからちょっとぬれるだけだけど、火山の場合はもともと高熱で融けているマグマなので、一気にまわりを冷やされてガラスとして固化されてしまうのだ。
なので、顕微鏡で見てみると半透明できらきらとしているのだ。

鉱物結晶はもともとマグマの中で小さな核として結晶化していたもので、溶岩が冷えるとそのまわりから固まっていくのだ。
溶岩が急速に冷えると火山岩になるけど、そのときは、班晶と呼ばれる粒の小さな鉱物結晶のまわりにガラス質の石基がとりまいているのだ。
その班晶と火山灰の中の鉱物結晶はともにマグマの中ですでに結晶化していたものというわけ。
マグマがゆっくり冷えると深成岩になるけど、その際、この鉱物結晶が核となって徐々に結晶化していくことになるよ。
最後の古い岩石の破片はそのままで、火口をふさいでいた岩石が噴火の衝撃で細かく粉砕されてまき散らされたもの。
そんなに粉々になるのかとも思うけど、それだけの衝撃なんだろうね。

大きな噴火が起きると、今回のように火山灰が広範囲にまき散らされるんだけど、これが地質学的には年代を調べるひとつの大きな手がかりになるのだ。
浅間山や富士山のような大きな火山が噴火するとそれこそ本土全体に火山灰が降り積もることになるんだよね。
この火山灰は同時に勝つ均一に降り積もるので、この火山灰が出た層が同じ時期に積もったということがわかるので、そこが年代特定の決め手となるのだ。
このために「鍵層」とも呼ばれているらしいよ。
これがあると、地震や地滑りで地層がゆがんだりしても年代特定がしやすくなるのだ。

この火山灰、鹿児島の例を見るように、はっきり言って邪魔ものなんだよね。
栄養分に乏しくて水はけがよすぎる(保水性が低い)ので農業にはまず向かず、サツマイモやお茶などの特定の作物しか栽培できないのだ。
また、水分含有量が増えるともろくなるので地滑りしやすく、宅地としても向かないんだよね。
さらに、鉱物由来だけあって重いので、少し積もっただけでも屋根がゆがんだりするのだ。
雪でもひしゃげることがあるけど、そんなに積もらなくてもかなりの重量があるらしいよ。

さらさらはしているけど粒子の細かいガラスや鉱物なので、けっこうごつごつしていて、そのまま拭き取ろうとすると傷がつくのだ(特に「降りたて」はまだ角が取れていないので余計注意が必要みたい。)。
これが自動車などに付着したときに問題になるんだよね。
逆にクレンザーとして利用されることもあるようだけど。
古代ギリシアではコンクリートにも使われていたようなんだけど、すでにその技術は失われていて、現代には伝わっていないのだとか(またコンクリートの骨材としての使用が実用化に向けて研究されているそうだよ。)。
そのほか、エステでクリームに混入されたり、甲子園のグランドの土として利用されたり、焼き物の釉薬に入れられたりと利用方法はいくつかあるようだけど、そんなに有用というわけでもないんだね(笑)

そして、問題は航空機との関係。
航空機のジェットエンジンに火山灰が取り込まれると、致命的な損傷を与える可能性があって、それで欧州の航空便がストップしたのだ。
航空機エンジンの内部は1,000度を超えるような高温なので、取り込まれた火山灰の粒子は内部で溶解し、タービン翼や出口付近で冷やされてガラス質化してたまっていくのだ。
すると、そのためにジェット推進の推力が失われるんだけど、最悪の場合はエンジン停止もあり得るので、危険だというわけ。
粒子が細かいこともあってフィルターでも防げないし、困ったちゃんなのだ。
これはジェットエンジンだけでなく、プロペラ機(レシプロエンジン)でも同じで、空気と一緒に燃焼室に取り込まれてしまうと、中で融けて固まってシリンダーやピストンを痛めてしまうのだ。
同じことは自動車のエンジンでも言えるよね。

これが今回の騒動の原因だけど、航空機以外にもけっこう大変そうなのだ。
噴煙で日光が遮られると農作物の方も不安だし、まだまだその被害は尾を引きそうだね。
牧草が育たないと畜産にも影響が出て、チーズなどの乳製品にも影響が出るおそれがあるのだ。
飛行機は飛び始めたけど、これからも注視していかないといけないのだ。

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