2010/05/29

Sail away to the Universe

5月18日に金星探査機「あかつき」(Planet-C)と一緒に、小型セーラー電力セイル実証機「IKAROS」が打ち上げられ、現在のところ、順調に航行しているようなのだ。
宇宙で帆を拡げて太陽風を受けて広い宇宙を航行しようというものなのだ。
太陽系大航海時代の幕開け?
とにかく、これから幕を展開して金星を向かうようなので、動向が気になるのだ。
で、もうひとつ気になるのが原理。
ということで、調べてみたよ。

まずは普通のヨットが進む原理から。
ヨットも帆を拡げ、そこに風を受けて進むわけだけど、大風の日に背中を押されて前のめりになる、なんていう単純な原理ではないのだ。
ヨットは、風が吹いてくる方向に対して斜めにしか進めないんだよ!
風に後ろから押されているのではなくて、斜め前から吹いてくる風を帆に受け、そこに発生する揚力を推進力としているのだ。

ヨットの帆は、風を受けるとふくらむけど、そこがミソ。
すると、ふくらんだ方とふくらんでいない方で流れる空気の速度が変わり、密度の差が生まれるわけ。
ふくらんでいる方はより長い距離を空気が進むことになるのでそれだけ速く、速度が速いと空気の密度は低くなるのだ。
すると、密度の高い方から低い方に対して「揚力」が発生するわけ。
※俗に飛行機が翼に発生する揚力で浮いている、と言われるのと同じ原理だよ。

帆は風を受けているので、基本的に風が吹いていく方向にふくらむため、風向きと逆の方向に揚力が発生するのだ。
そのままだと風が吹いてくる方向に進みそうだけど、そうではないのだ。
ヨットの船底には進行方向に立て板が差し込まれていて(センターボードと言うのだ。)、これによってヨットの進行方向以外の揚力の成分(つまりヨットを「横」方向に動かそうとする力)が打ち消されるんだ。
そうすると、揚力の進行方向成分のみが残って、前に進むというわけ。
さらに、センターボードの船尾側はいわゆる「舵」になっていて、ここを動かすと進行方向が少しだけ変えられるんだよ。
でも、ヨットの場合は帆で風を受ける向きを変えれば進む方向が変えられるのだ(ウィンドサーフィンだと帆の向きだけで進行方向を変えることになるよ。)。
帆は風が吹いてくる方向に立てなければ帆がふくらまないから揚力が発生しないだけど、完全に風向と並行にしてしまうとまったく揚力が発生しないので、こういう仕組みが必要なんだ。

ヨットがわかったところでIKAROSのソーラーセイルにもどると、実は全然原理が違うんだよね(笑)
ソーラーセイルは強風の日に後ろから押される、というのと全く同じで、太陽風による光圧によって押される力を利用して前に進むのだ。
帆はいわゆる鏡みたいなもので、これに太陽風である光が当たると反射するんだけど、そのときに帆を後ろに押す力がかかるのだ。
進行方向の後ろ側に光を反射させるとスピードアップするし、逆に進行方向に光を反射させるとスピードダウンする仕組みなんだよ。
ヨットのように帆がふくらんでそこに揚力が、というわけではないんだね。
単純と言えば単純。
地上では太陽の光が当たってもあたたかいなぁ、当たっているなぁ、くらいにしか感じないけど、宇宙空間ではそれなりに強い力みたいだよ。
太陽の近くにいれば、という話で、当然太陽から遠く離れれば弱くなるけど。

光圧という概念が発見されてから、構想自体はあったようなんだけど、軽量でありながら広く拡げられ、それなりに強度もある薄膜の鏡面というのが技術的に難しくてずっとできなかったのだ。
それが炭素繊維などの材料技術が進んでIKAROSにつながったというわけ。
さらに、IKAROSの場合は、その膜の表面が太陽電池になっていて発電もできるのでソーラー電力セイルと言うんだよ。
将来的にはそこで発電した電気で「はやぶさ」で使っているようなイオンエンジンをふかそうという構想もあるのだ。

今でも発電した電気は姿勢の制御に使っているのだ。
膜の表面には電気を通すと「曇る」機能がついた箇所があって、そこを曇らせると光が鏡面反射でなく乱反射をするようになるので、光圧が弱くなるのだ。
例えば、右側だけ曇らせると、左側により強く光圧がかかることになるので、左に傾くことになるんだ。
これで光の反射方向を制御できるので、加減速ができるようになるんだ。
なかなかかしこいよね。
これを使うことで、一切推進剤を使わず、太陽の光の恩恵だけで宇宙を旅しようというわけ。

とは言え、まだ帆が開いていないのでなんとも言えないんだけど(笑)
できれば、ばっちり帆を拡げ、広い宇宙を太陽の光だけで航行してほしいものなのだ。
ツイッターでたまにつぶやいているようなので、関心のある人は応援しよう♪

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