2010/05/08

もともと食べているんじゃなかったでしたっけ?

GW期間中だと普段見られないテレビ番組を見る機会があるけど、たまたまテレビ東京のレディス4を見たのだ(笑)
すると、ちまたでブーム(というか遅くない?)の「食べるラー油」を自宅で作る、という特集をやっていて、中華の神の子こと陳建一さんが家でも作れるおいしい「食べるラー油」の作り方とそれを使ったレシピを公開していたんだ。
それは八丁味噌、コチュジャン、豆板醤に砂糖、唐辛子、昆布茶を加え、ネギとショウガで香り付けした熱した油(ごま油1+サラダ油3)を徐々に加えて混ぜていくというもの。
最後に仕上げとして、ニンニク、レンコン、ゴボウ、干しエビを電子レンジで乾燥させてから軽く素揚げして作るチップを加えるんだそうな。
意外と面倒くさいね(>_<)

で、気になったのがラー油とはそもそも何か。
自分では餃子を食べるときに使ったり、時にラーメンのスープに入れるくらいしか接点がなかったので、辛い香味油という以外は実のところはよくわからないんだよね。
というわけで、ちょっと調べてみたよ。

ラー油は漢字で書くと辣油で、「辣」は辛いという意味なのでそのまま辛い油ということ。
ただの唐辛子入りのごま油と思っていたら、実はそうではないらしいのだ。
中国のラー油は、唐辛子や中華山椒(花椒)、八角、茴香(ういきょう)、桂皮、陳皮、丁子などの香辛料を油に入れて徐々に加熱して辛み成分や香り成分を油に移していくのだ。
化学的には香り成分や辛み成分の素である脂肪酸、エステル、高級アルコール、アルカロイドなどを油の中に抽出しているんだ。
実はアロマオイルと作り方は似ているんだよね(笑)
唐辛子なんかを入れるとカプサイシンが油に溶け出して赤く色がつくけど、まさにあんな感じで他の成分も溶け出していっているわけ。
で、香りと辛みが移ったら油だけを使ってもよいんだけど、中国では入れた香辛料の沈殿ごと使うことが多いみたい。
ちなみに、辛み成分はほとんど油に溶け出しているので、沈殿を入れた方が辛くなる、ということはあまりなくて、その他の苦みなどの味が増す可能性が高いのだ。

一方、日本でのラー油は最初は冷凍餃子についてくるような赤からオレンジ色の辛い油という認識で、そんなに香り成分も強くなかったみたい。
工業的には、唐辛子、山椒、ニンニク、ネギ、ショウガを高温の油にさっと漬けて一気にいろと香りをつけるんだとか。
ざるのようなものに香辛料を入れてさっと上げるので油だけが取り出せ、かつ、苦みなどの雑味も出てこないんだとか。
安価なものでは唐辛子も使わずに色素と香辛料を混ぜるだけ、というのもあるみたい!

でも、ちょっと本格化して中国のもののように沈殿があるものが出始め、現在では具材が入った食べるラー油になってきているのだ。
2000年に発売され、現在でも人気の石垣島ラー油が火付け役で、これまでのラー油と違って、島唐辛子などの香辛料や具材がそのまま沈殿して入れ、さらにそれを食材としても使ってしまう、というところが転換点だったのだ。
中国ではもともと具材の入ったラー油があって、その具材を食べるタイプのラー油を作ろう、ということで開発されたみたい。
これに触発され、桃屋が「辛そうで辛くない少し辛いラー油 」を発売すると、各社が一斉に「食べるラー油」を出し始め、一気に大ブームとなったのだ。
このタイプは、油よりむしろ具材が多めで、ニンニクやタマネギなどの具材が辛い油で漬けられているような状態なのだ。
素人でも使いやすいそのまま使える調味料として開発されたらしいんだけど、実際にはそのままごはんにかけて食べられる、ということで人気が出たのだ。
メーカー側は必ずしも想定していた使い方ではなかったようだけど。

こうして、日本でもラー油は独自の進化を遂げることとなったのだ。
四川料理に欠かせない調味料として中国で広く使われていたラー油が、日本では「ふりかけ」的に使える調味料として生まれ変わったわけだよね。
でも、それに伴って、味の方もだいぶ変わっていて、中国ではむせかえるほど辛いものが多いのに対し、日本の「食べるラー油」はマイルドな辛さのものが多いみたい。
食の好みの問題もあるけど、ごはんにちょっとかけて食べるという使い方だと、辛すぎると困るからね。
というわけで、中国のラー油とはかなりかけ離れてきたので、そろそろ日本独自のものとして別の名前をつけてもよいのかも。
いわゆる餃子のたれに入れるラー油とも使い方が変わっているからね。

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