2013/01/05

まつりごと

昨日、首相が伊勢神宮に参拝したのだ。
首相の伊勢神宮参拝は、佐藤栄作総理以降代々続けられているもので(途中村山富市総理だけは新年の参拝はせず)、通例は三が日の混雑を避け、仕事始めの1月4日に行われるんだよ。
これについては政教分離の観点から様々な意見があるみたい・・・。
一国の首相が特定の宗教行事に参加していいのかどうか、とか。
米国の大統領は聖書の上に手を置いて大統領に就任するための宣誓をするんだけどね(笑)

これと一線を画すのが、我が国の国家元首たる天皇陛下の祭祀。
日本国憲法においては、天皇は日本国の象徴で、内閣の助言と承認に基づいて国事行為(内閣総理大臣の任命、法律の公布、国会の召集などなど)を行うことになっているよね。
このほか、公的な行為として、国内各地への行幸、外国への公式訪問、園遊会の主催、国会開会式への臨席などがあるんだ。
ここまでは主に「政」の世界のお仕事だけど、一方で、明治以降、天皇には国家神道の主催者という「祭」の方の位置づけもあるので、私的行為として様々な祭祀を行っているのだ。
それが宮中祭祀と呼ばれるものだよ(宮内庁のHPでは「宮中のご公務など」と位置づけられているよ。)
午餐・晩餐の主催や新年祝賀・一般参賀なんかと同じカテゴリーなのだ。

戦前は祭祀についても天皇の公的な行為であって、皇室祭祀令という皇室令という旧皇室典範に基づく規則に基づいて挙行されていたのだ。
皇室が関与する祭祀は長らく途絶えていたものもあったんだけど、王政復古の理念の下、延喜式や大宝令などを再編して改めて整備したものなんだ。
天皇自らが祭祀を斎行する(=親祭)「大祭」と掌典長が祭祀を執り行い天皇が参拝する(=親拝)「小祭」があるんだ。
例えば、正月元日で言えば、四方拝と言って天皇が宮中三殿において伊勢の内宮・外宮に拝礼した後、四方の諸神(明治天皇陵、大正天皇陵、昭和天皇陵、武蔵国一ノ宮氷川神社、山城国一ノ宮上下賀茂神社、石清水八幡宮、熱田神宮、鹿島神宮、香取神宮)に拝礼する儀式を「親行」(=天皇自らが行う。)するのだ。
この大祭の後、掌典長の親行で宮中三殿で新年の祝賀を行う「歳旦祭」というのが続くよ。
正月3日には皇位の元始を祝ぐ元始祭が大祭として挙行されるのだ(皇室祭祀令上はこっちが新年最初の大祭で、四方拝は四大節のひとつで別格扱いだったのだ。)。
これに新年祝賀・一般参賀なんかもあるんだから、お正月からいそがしいんだよね。

現在、皇室とともに宮中祭祀を行っているのが掌典職と呼ばれる人たちで、この人たちは宮内庁の職員ではないんだよ。
戦前は宮内省の式部職に掌典部がおかれて祭祀を取り仕切っていたんだけど、戦後は政教分離の観点から、祭祀を司る掌典職は宮内庁から切り離され、天皇の私的行為を手伝う、「私的使用人」の立場になったんだ。
皇室の歳費のうち、内廷の皇族(皇后、太皇太后、皇太后、皇太子とその家族、未婚の皇子女)の日常の費用などをまかなうために内廷費というのが計上されていて、この中から掌典職の人件費を含む宮中祭祀にかかる費用が捻出されているのだ。
ちなみに、内廷費は一度皇室に支払われたら宮内庁の管轄外になる「渡しきり」のお金なので、余ったとしても国庫に不用額が返還されるようなものではないんだって。

最近では今上天皇陛下の健康問題から、宮中祭祀の一部が宮中三殿ではなく御所で執り行われたりすることもあるけど、今上天皇陛下はかなり祭祀にも積極的で、代理を立てることはしないんだよね。
明治、大正の時代は「親祭」の大祭といっても代理が立てられることが多かったみたいなんだけど、昭和天皇以降は積極的に参加されるようになったらしいのだ。
そういう意味では、昭和天皇以降宮中祭祀の制度が確立したのかもしれないね。
儀式の詳細は不明なことが多いけど、古代から継承されていうる儀式もあるみたいだから、伝統・文化というだけでなく、歴史学的にも重要である可能性が高いんだよね。
個人的にはこういうのは大事にしていきたいのだ。

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