2013/02/16

送電もコードレス?

もともとはとあるツイートが発端らしいのだけど、iPhoneを電子レンジで充電できる、というデマが出回っていて、しかも、それを試してみて壊してしまう人がけっこういるようなのだ(>o<)
むかしはネコを乾燥させようとして・・・、なんて米国の訴訟社会を揶揄する都市伝説もあったけど、今でもこんなのが出回るものなんだね。
なんでも、電子レンジの中で照射されているマイクロ波で急速充電ができて、1~2分でフル充電になるとか。
確かにそんなことができれば魅力的だけど、電子レンジに金属のものを入れると火花が出るのは有名な話で、それと考え合わせればデマだとわりそうなものなんだけど。

でもでも、マイクロ波で充電、と言うこと自体はあながちウソでもないのだ。
世の中には無線送電という考え方があって、その方法のひとつがマイクロ波による送電なんだよね。
特に、宇宙太陽光発電(SSPS:Space Solar Power Sysytem)の文脈で出てくるのだ。
日本では京都大学の生存圏研究所(旧宙空電波研究所)の研究が有名で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)でも基礎技術の開発を行っているよ。
やっている人たちからすると、日本の技術は世界をリードしているらしい。
実用化まではかなり遠いと思うけどね。

もともと無線で電気を送るという発想は、鬼才ニコラ・テスラの「世界システム」の構想の中に現れているのだ。
で、原理的には可能で、あとはどう実用化に移すかなんだけど、そこが大きなハードルなんだよね(笑)
無線で電気を送るには大きく3つの方法があって、ひとつはここで出てきているマイクロ波で送るもの。
発電した電気をマイクロ波に変え、それを受信してまた電気に変えるのだ。
当然送る側と受ける側に損失が発生するので、電線を使った送電損失とどっちがメリットが高いか、という話になるんだけど、宇宙での発電だったり、大規模災害への対応(送電線が切れて停電することがなくなる!)を考えると、無線送電には大きな利点がある、として研究者たちは研究を進めているのだ。

すでに実現されているのは電磁誘導を使った方法で、電気を流したコイルをもうひとつのコイルに近づけると、そのコイルにも電気が流れる現象を利用するのだ。
でも、相当距離を近づけないといけないので、無線送電というよりは、非接触電力伝送と呼ばれるんだ。
SUICAなどの電子マネーはこれを応用した技術だし、docomoのスマホの「おくだけ充電」もこれ。
すでにワイヤレス給電の国際規格として「Qi」というのもできているとか。
低電力・低容量で至近距離まで近づけられるならこの方法でよいのだ。
大電力・大容量向けの研究も進められていて、例えば、道路にコイルを埋めておいて、その上を電気自動車が走れないか、なんて構想もあるみたいだけど、人体への影響や電波への干渉などの問題もあって課題も多いみたい。

もう少し距離が離れたときに使うのが電磁界共振というもので、数m離れても大丈夫だし、電磁誘導のようにきっちり位置が合っていなくてもいいのだ。
イメージとしては、音叉が共鳴周波数で共振するように、コイルの半径や周波数を合わせて上げると、離れたところでも共振で電磁界が発生し、電気が流れるようになるというもの。
家電なんかへの応用が期待されていて、米国では関連特許もたくさん出ているとか。
実用化されているのは聞いたことがないから、やっぱり人体への影響や電波干渉が問題なんだろうなぁ。
テレビが映らなくなったりするかのうせいもあるしね。

で、もっとも遠距離に電気を遅れるのがマイクロ波送電。
でも、電波の強度は距離の二乗に反比例するので、そのままでは送電効率が極めて悪いのだ。
そこで、電波をビームの形に絞って、特定の位置にまとめて落とすことになるのだ。
受信側にあるのは平板のレクテナと呼ばれるアンテナで、マイクロ波を受けると電気エネルギーに変換するんだ。
電波を絞っているので広く影響を与えるわけでないけど、それだけ強力な電波を出すことにもなるので、人体への影響だけでなく、兵器への応用も懸念されるのだ(ToT)
下手すると、ラピュタから「インドラの矢」が降ってくるからね・・・。

宇宙太陽光発電の利点は、上空の天気に左右されず、かつ、大気で遮蔽されていない強い太陽光でいつでも発電ができることが上げられるよ。
で、マイクロ波は雲をすり抜けるので、いつでも電気を下ろせるのだ。
とは言え、宇宙に超巨大な太陽電池を打ち上げないといけないわけで、国際宇宙ステーションだけで四苦八苦している現状では現実味が薄いよね・・・。
しかも、宇宙空間に置かれた発電所やメンテもできないし、大きな太陽電池だと太陽風の影響も大きく受けるので、常に太陽にパネルを向けるように指向させるにはけっこうエネルギーが必要なようなのだ。
さらに、地上にマイクロ波で電気を降ろす場合も、人体への影響や兵器転用の懸念があるしね。
地上での伝送実験は成功しているけど、それを宇宙でやるかどうかはけっこう微妙なところだなぁ、というのが素人の感想。

ちなみに、宇宙太陽光発電では、レーザー光を使った方式もあって、こっちでは、太陽光を就航してレーザーで地上の発電パネルに落とす、という構想だよ。
この場合、レーザー光はおそらく可視光なので、雲の影響を受けやすいから、砂漠とかに発電所を作ると思うのだ。
もともと強いレーザー光が地上に降ってくるので、人が住んでいる地域の近くにはそんな施設は作れないと思うけど・・・。
こっちは落とす場所によってもろ兵器なので、なかなか研究を進めるのは難しいだろうね。

宇宙太陽光発電については、夢はあるんだけど、夢物語的な印象もぬぐえないのだ。
軌道エレベーターなんかと同じにおいがするんだよね。
一方で、ワイヤレス電力伝送自体は技術的な課題が解決できれば使えそうなので、そうなれば法規制の整備なんかも考えることになっていくと思うんだよね。
コンセントの位置を気にすることなく家電が使えるようになるとうれしいよね。
特に、掃除機なんかは便利になるのだ♪

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