2013/04/20

その審議を進められることを望みまーーーーす!

今年度も昨年度と同様に暫定予算で始まったのだ。
前は5日間で終わったけど、今年は最大で50日間。
とりあえず25年度予算案は4月16日(火)に衆議院で可決されたから、30日間ルールで5月中旬には予算は自然成立するのだ。
暫定予算は5月20日(月)までだったからかなりぎりぎりだけどね。

で、暫定予算になっているのは国会での議論が収束しなかったから。
通常は年末までに政府予算案ができて国会に提出され、年明け、通常国会が始まってから審議をして3月中には成立させるんだよね。
25年度予算については、12月に総選挙が入って政権交代もしたので、予算の中身の見直しなんかをしたりしているうちに遅れたのだ。
例外的に長い暫定予算になったけど、必ずしも国会がサボっているわけではないんだよ(笑)

その証拠のひとつが、衆議院で提出された予算の修正動議とか編成替え動議。
むかしの野党はただただ反対するだけだったような気がするんだけど、近頃は「こう直すべし」みたいな政策提言をするんだよね。
自分たちにも十分に政権担当能力がある、ということを政治的にアピールしたいのだ。
ま、民主党政権ができてからの「お金(財源)がない!」の騒動が記憶に新しいから、それとこれとは別のような気も・・・。
それでも建設的にこう変えたらよい、とカウンタープロポーザルができるようになったのは進歩なのだ。

ここで気になるのが、修正動議と編成替え動議の2種類があるということ。
修正動議はそのままで、政府予算案に国会が修正を加えようとする際に出される動議で、国会法第57条の2「予算につき議院の会議で修正の動議を議題とするには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」に基づいて提出されるもの。
仮に可決されるとその修正案どおりに予算が修正されるのだ。
ま、そういう事態はほとんどないんだけど・・・。

もう一つの編成替え動議というのは、一般的な議案のひとつとして扱われるもので、国会法第56条第1項「議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。」という一般的な規定に基づくもの。
その内容も修正動議とは違って、政府に予算案の撤回と修正の上での再提出をい求めるものなのだ。
通常は提案理由と修正の方針が動議の中で示されるよ。
ただし、こちらは予算を修正するのではなく、あくまでも直した上での再提出を求めるものなので、可決されても再び再提出された予算案について議決をする必要があるのだ。
もちろん、動議で示した理由や方針と照らして修正が不十分ならここでまた突っ返すことも理論的には可能だよ。
国では聞いたことないけど、地方議会の場合は与野党が合意した上で編成替え動議に基づき修正した予算案を再提出することもあるようなのだ。

で、わざわざ国会法に定めがあるのになんで修正動議でなく、編成替え動議を出すかというと、そこには憲法が関係してきているんだ。
日本国憲法では第65条で「行政権は、内閣に属する。」とした上で、第86条で「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」としているのだ。
つまり、予算を作成するのは内閣の専権であって、国会は審議・議決するのみなんだ。
ちょっと修正するくらいならいいけど、大幅に変えてしまって元の案とはまるで異なる予算を目指す場合、これがひっかかってくるそうなのだ。
立法府の越権行為なのかどうかは実際のところなんとも言えないんだけど、これを形式的に回避するために、撤回させた上でこれこれこういう方針で直して持ってこい、という編成替え動議が出されることになるんだ。
実際に24年度予算に対してみんなの党が出した動議を見てみると、
http://www.your-party.jp/activity/gian/001183/
 ・歳入では、消費税の全額地方移管、法人税率の半減、政府保有株の売却、公債発行額の削減
 ・歳出では、子ども手当・高校無償化の地方移管、交付金・補助金・負担金等の20%カット、教員・地方公務員の給与カット
などで、歳入・歳出両面で抜本的な見直しを行うものなのだ。
これだとほぼゼロから作り直す感じになるから、「修正」という言葉では入りきらないのかもね。

ちなみに、憲法では「内閣は予算を作成する」となっているので、国会に提出するのもあくまで「予算」であって「予算案」ではないそうなのだ。
「予算案」と呼び慣らされているけど、正式には「案」がつかないそうだよ。
確かに、国会法でも「法案」は「法律案」と「案」付で書き分けているから、意味があるんだろうね。
法案が行政府、立法府の双方で提出できるのと違い、予算は内閣しか出せず、国会はあくまでも修正しかできないというしきりになっているから、わざと変えているんだろうなぁ。

日本の場合は憲法の段階で法律と予算が分けられているんだけど、これはある程度米国の反省から来ている可能性があるんだよね。
米国の場合、予算も法律の一種で、歳入法と歳出法が議会で作られ、大統領が署名することで効力を発揮するのだ。
一応大統領府で予算要求をまとめて議会に提出するけど、それはあくまでも参考資料扱いで、議会で予算をつめていくんだよね。
そのための議会スタッフも充実しているし、場合によっては行政庁にデータの提出や細かい積算をやらせたりもするみたいだけど。

それでも、議会が主導するので、どうしても声の大きな議員の地元の要望というのが多かれ少なかれ入ってくるのだ。
こういうのは取捨選択も難しいから、議会に任せるとたいてい肥大しがちなんだよね・・・。
それに、実際に執行する行政府の思惑とは異なるコンセプトで作られるので、使いづらい場合があるのだ(何かと議会に報告と制約も多いしね・・・。)。
で、実際に執行責任を持つ行政府がやりやすいように予算を作る仕組みとして、予算と法案を分けて規定したんじゃないかなぁ、と思うのだ。
すると、予算は安定性が増すけど、硬直性も生まれるので、果たしてどっちのシステムが優れているかはにわかには言えないけど。

暫定予算についても、日本では政府が必要な予算を積算して作るのに対し、米国では、「Continuing Resolution」というのを議会で可決し、大統領が署名するだけなのだ。
基本は、前年度予算額を上限として、新規事業は開始せず、必要な継続事業のみを実施する、というもので、そこに必要に応じて特記事項がつくもの。
ぎりぎりまでもめても、すっとつなげられるところは利点だけど、そもそも議会が紛糾したり、大統領との間で合意が得られないと、延長に延長を重ねて予算が成立しないまま会計年度が終わることもあるから、それもどうかと思うけど・・・(その場合はその会計年度は新しいことがまったく始められないことになるよ!)。

0 件のコメント: