2013/05/11

沈没した大陸?

海洋研究開発機構とブラジル政府が、かつて大西洋上に大陸があったことが判明した、と発表したのだ。
リオデジャネイロ沖の海底台地を有人潜水艇「しんかい6500」で調査したもので、「伝説のアトランティス大陸のような陸地が存在した極めて強い証拠」として、海底で花崗岩を発見したことを指しているんだ。
花崗岩というのはマグマがゆっくりと冷やされて固まってできる深成岩の一種で、通常は陸域でしか作られないのだ。
海底火山の噴火だったらマグマはすぐに冷やされてしまうので、深成岩でなくて火山岩になってしまうんだよね。
で、その深成岩の一種である花崗岩が大量に見つかったので、調査した海底大地はかつて陸地だった、ということが科学的にわかるのだ。
調査では、数千万年前に海底に沈んだと見られているので(化石から5千万年前くらいには地上にあったことが確認できていて、それから数百万年後に沈んだと考えられているみたい。)、当然人工物はないんだけど(人類の起源は数百万年前だし、アトランティスが沈んだとされるのは約1万2千年前。)。

で、にわかに伝説の大陸「アトランティス」に注目が集まるのだ。
日本ではむしろ太平洋上にあったとされる「ムー大陸」の方が人気があるようだけど、西洋世界ではアトランティスの方が身近なのか、いろいろと説があったり、創作に活かされたりしているんだよね。
古典としてはジュール・ヴェルヌさんの「海底二万マイル」がおなじみ。
日本だとやっぱりドラえもん「のび太の海底鬼岩城」かな?(リメイクもされたしね。)

このアトランティスの伝説、現在残っているものでおおもとになっているのはギリシアの大哲人プラトンさんの著作。
2つの作品の中で羽根井していたが改訂に沈んだ大陸があった、と記述されているのだ。
これらの作品の中でも、エジプトの神官から聞いた話で、エジプトでは文書の形でもその伝承が残っている、となっているらしいよ。
ギリシアは度重なる水害で古い文献が失われていたけど、古代エジプトには残っていた、というのだ。
アテナイ率いる欧州勢力とも争ったことがある、というんだよ。

これについては、他の作品に引用される形で広まっているんだけど、中にはプラトンさんの原文に載っていない情報もあったりして、本当にそういう伝承があったとは考えられるのだ。
でも、すでに古代ギリシア・ローマの時代にアトランティスの話はプラトンさんの創作した寓話であり、実在しなかった、なんて批判がなされたりもしているんだ・・・。
それでも、現在に至るまでアトランティスの繁栄と滅亡の伝説は大人気で、その直接的なモデルとしていろんなものが提唱されているのだ。
ただし、学術的には歴史的事実に基づくものではなく、単なる伝承か、プラトンさんによる創作と考えられているよ。
今回の発見も人類の登場以前に沈んだ証拠みたいだしね。

代表的な説としては、実は地中海にあった島のことを指しているというもの。
プラトンさんの記述には具体的な島の大きさなんかも書いてあるんだけど、年代や大きさは誇張又は誤記で、それ以外では合致している記述が多い、というのだ。
日本でも沖縄沖に海底に沈んだ遺跡があることが知られてるけど、地中海にもそういうのがあるそうで、それじゃないか、というんだ。
だとすると、アテナイと争ったのも頷けるし、古代エジプトで知られていたのも納得がいくよね。

それでもやっぱり大西洋にあった、という説も人気で、アゾレス諸島やカナリア諸島の当たりにあったんじゃないか、というもの。
氷河期の集結に伴う海面上昇や、海底火山の噴火によってできた空洞がつぶれることで島が沈んだ、なんて考えているみたい。
カナリア諸島沖にもやっぱり海底遺跡があるみたいで、そういうのから連想しているみたい。
今回の発見は南半球だけど、確かに大西洋上に今はない陸地があったことは確かみたいだけど、これらの地域でも海底を調べれば何かわかるのかな?
ちなみに、アメリカ大陸こそがアトランティスの正体で、沈んだわけではなくて通行ができなくなっただけ、とする説もあるそうだよ。
似たようなものに、実はインドのことで、かつて存在した運河が使えなくなって渡れなくなったので「失われた」ことになったという説も。

もう少し科学的なのはプレートテクトニクスに基づく、と称するもの。
もともとアフリカ大陸と南米大陸の海岸線がぴったりくっつく、ということから考え出されたものだけど、大陸が別れる前の超大陸の状態を仮想すると、どうしても欧州、北米、アフリカの集まる北大西洋あたりに大陸棚がうまくくっつかない空隙ができるんだって。
その空白地帯こそがアトランティスだ、とするんだ。
よく考えるねぇ。
これも今回と同じような海底の岩石を調査すれば、陸地が沈んだのか、もともとくぼんでいたのかはわかるんだろうけど。
ちなみに、今回見つかった海底台地も、南米とアフリカが別れたときに取り残された陸地が沈んだんじゃないか、と見られているので、場所の問題はあるけど、そういう考え方はなくはないらしいよ(笑)
もっと荒唐無稽なものには南極大陸がアトランティスで、ポールシフトにより極域となったので氷に覆われるようになった、なんてのもあるんだって。
南極の地下にはかつて緑の大地があって恐竜がいた痕跡もあるけど、それは大陸移動で説明できるので、大規模なポールシフトでいきなり極になるとは考えられないのだ(>o<)

いずれにせよ、地中海やカナリア諸島付近には文明が栄えた後に沈んだ島があること、ブラジル沖にはかつて陸地だった海底台地があることは事実なのだ。
文明が栄えた後に沈んだ島が実際にあったという歴史的事実は伝承の「もと」になることもあるから、そこから想像がふくらまされた可能性もあるよね。
創世記のノアの箱舟の話も、局地的な大洪水から連想されている可能性も指摘されているから、さもありなんというところかな(古代オリエント地域で大きな洪水があったことは地層の調査から明か。)。
さすがに人類登場以前に沈んだ陸地があったという記憶が伝承されているとは考えづらいから、今回の発見事態はアトランティス伝説とは直接的に関係ないだろうけど(笑)

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