2013/05/18

世界帝国の味

某都知事による変な発言もあったけど、2020年のオリンピック招致の関係でトルコの話がよく出るようになってきたのだ。
もともとトルコは世界有数の親日国として有名だし、カッパドキアやイスタンブールは観光地としてもかなりメジャーになってきているよね。
名物の鯖サンドも認知度が高まってきているのだ。
そんな中、やっぱり注目されているのがトルコライス♪
ま、こっちは長崎の御当地B級グルメとして話題になっているんだけど(笑)

一般的な長崎のトルコライスは、ピラフ(多くはカレー味)とスパゲッティ(大概においてナポリタン)がさらに一緒に盛られ、その上にデミグラスソースをかけたとんかつが載っているのだ。
ピラフがサフランライスになって、とんかつにカレーが係っているようなものもあるよ。
基本形は味のついた米料理と具のほとんどない炒めスパゲッティ、ソースのかかったとんかつから構成されているのだ。
最近は食堂とかでも定番メニューになってきているし、ファミレスのロイヤルホストなんかはメニューに入れていることもあったよ。
ボクも最初に食べたのは学生の時で、大学の食堂で食べたはず。
なんでトルコなのかはわからないけど(笑)

ボクが最初に聞いたトルコライスの名称の由来は、西洋と東洋をつなぐ存在を表している、という説。
ピラフ(チャーハン)やカレーは中国やインドで、スパゲッティは欧州、それをとんかつが橋渡ししているので、まさに西洋と東洋をつなぐトルコのような存在だ、というもの。
これはけっこうよく言われているよね。
「トリコロール(三色)」がなまった、という説もあって、これはピラフ、スパゲッティ、とんかつで三色ということなのだそうなのだ。
中にはトルコ発祥なんて説もあるけど、トルコでは多くの人がイスラム教徒で豚肉は禁忌だから、トルコから伝わったっていうのはそのままではいただけないよね・・・。

でも、案外トルコ伝来説というのは侮れないようなんだ。
というのも、明治期の料理本に、米を肉や野菜などの具とともにスープで炊いてからバターで炒める料理が「土耳古(トルコ)飯」として照会されているんだ。
おそらく、土耳古料理のピラフ(ピラヴ)を紹介したもので、ちょっと日本風にアレンジされているのだ(本当のピラフは生米を炒めてからスープで炊くのでもっとぱらっとできる。)。
こういったピラフ風料理が「トルコ風ライス」と呼ばれて提供されるようになり、それがトルコライスにつながっている可能性があるのだ。

そうなると、スパゲッティととんかつはどこから出てくるのか、という話になるけど、どうも付け合わせだったんじゃないか、ということになるのだ。
具のないスパゲッティは洋食の付け合わせの定番だけど、トルコライスのスパゲッティはその量が増えてメイン的になったもの。
とんかつの方はおそらくボリュームを増すためにやはり洋食の定番だったとんかつがおかずとして加わったんじゃないか、と考えられるのだ。
本場トルコ料理のケバブでは、ピラヴとサラダ、肉をひとつの皿に盛ることがあるそうで、あながち肉料理を一緒にするのは外れていないみたい。
そういえば、トルコライスには千切りキャベツがついていることも多いね(これもスパゲッティと同じ洋食の付け合わせの定番だけど。)。

こう考えると、もともとはピラフ的な料理だったトルコ風ライスが現在のトルコライスになったのもうなづけるのだ。
比較的安価でボリュームがあることもあるけど、お子様ランチ的な盛り合わせも魅力なのだ。
いろんなものをちょっとずつでも食べたい、っていうのがあるからね。
そんな欲求を満たす料理として定番化していったんじゃないかなぁ。
もはやまったくトルコとは関係なくなってきているような気がするけど。

実は、トルコライスには大阪風や神戸風というのもあるのだ。
大阪風はチキンライスにオムライス的に薄い卵焼きをかけ、その上にデミグラスソースのかかったとんかつを載せたもの。
神戸風はケチャップ味でない炒め飯の上にカレーをかけて生卵をトッピングしたものなんだとか。
どちらも長崎風のトルコライスと比べるとだいぶ違うけど、もともとトルコライスがピラフ的なものだった、と考えると、それぞれがそれぞれの地域で独自に派生していったと納得できるかも。

ちなみに、米をスープで炊くピラフという料理は、古くはアレクサンドロス大王の時代の文献にも登場するんだそうで、非常に古いものなのだ。
そのときは中央アジアの料理で、マケドニアに伝えられてから東欧に広まったとか。
中央アジアからは自然に中東地域にも広がっていって、ムガル帝国の時代にインドまで広がったようなのだ。
まさに、世界帝国並みに広がっている料理だったんだねぇ。
それが文化の最果ての日本でトルコライスになったのだ!
今度は東京五輪を通じてこの料理が世界に広まるとおもしろいのだけど(笑)

0 件のコメント: