2014/10/11

くさいほどうまい

最近とても気になっている料理があるのだ。
それはスイスのチーズ料理のラクレット。
ハードチーズを火であぶって表面を溶かし、それをそぎ取ってパンやゆで野菜につけて食べるのだ。
よく眞鍋かをりさんがワインとともにテレビで紹介しているんだよね。
かつて、アニメ「アルプスの少女ハイジ」でも全国の子供を釘付けにした料理なのだ!

チーズには独特の臭気があるので、長らく日本では加熱した上で各種チーズをブレンドして成型したプロセスチーズが主流だったんだよね。
別途乳化剤を入れないと固まらないけど、加熱して発酵を止めるので、保存期間が長くなるし、くせやにおいもマイルドにできるのだ。
米国ではプロセスチーズをよく食べるから、そこから来たんだろうけど。
でも、この頃は百貨店とかでも高級な輸入物ナチュラルチーズを売っているよね。
ボクはチーズが好きなのでわりと平気だけど、苦手な人にはきつそうなのだ(>o<)

チーズは、牛乳などの乳汁を長期保存するために工夫された伝統的な乳製品で、加熱しながら凝乳酵素(レンネット)を加えることで、乳脂肪や不溶性・難溶性の乳蛋白を乳清(ホエー)から分離して作るのだ。
水分を絞っただけのものがフレッシュチーズ(カッテージチーズ)。
これをさらに発酵させて作るのが「くさい」チーズたちだよ。
基本は乳酸発酵させて、中に含まれている糖分を分解して乳酸にし、酸性度を高めて雑菌が繁殖しづらい状態にすることで保存性を高めているのだ。
さらに、表面にかびを生やしたりして独特の風味を与えたりするんだよね。
最終的に残存する水分量で硬さが決まって、かっちかちのハードチーズから、とろりとしたカマンベールチーズのようなやわらかいチーズまであるのだ。

この発酵段階においては、タンパク質が分解されてアミノ酸になるんだけど、これがうまみのもとの一つ。
これは多くの発酵食品と同じなんだけど、このとき、脂肪分も同じように分解されて、脂肪酸ができてくるのだ。
この中でも、炭素数の少ない低級脂肪酸があの独特の臭気のものなんだよね。
酪酸やイソ吉草さんがまさにそれなんだけど、これは足のにおいの成分と同じなのだ・・・。
足のにおいも、汗の中に含まれていた皮脂が足の表面で雑菌に分解され、低級脂肪酸ができることで発生しているんだ。
においの発生メカニズムだけ見たら似たようなもの。

納豆やくさやなんかの「くさい」発酵食品は数あるけど、やはり発酵過程でにおい成分の分子ができているのだ。
この脂肪酸だけでなく、硫黄を含むアミノ酸が分解されてできる硫化水素やチオール(あるコースの酸素原子が硫黄原子になったもの)だったり、そのものずばりのアンモニアが発生していたり。
ただ、これらにおい分子ができているということは、発酵も進んでいるということで、うまみ成分が増えている証でもあるのだ。
くさいものほどうまいというのにもそれなりに意味があるわけ。
日本の「くさい」名産代表のふなずしも、乳酸発酵でタンパク質が分解されてうまみ成分が増えていくんだけど、同時ににおい分子も増えているんだよね(笑)
糖を分解するだけだとアルコールや酢酸、乳酸ができるだけだけど、脂肪やタンパク質が分解されるととたんにくさくなるのだ。
お酒の発酵があまりくさくないのは主に糖が分解されているからなんだよね。

チーズのにおい成分は主に低級脂肪酸なんだけど、これらは油状の不揮発性の液体なんだよね。
なので、常温ではずっとそこにあってくさいんだけど、ちょっと熱をかけてやると少しずつとんでいくので、多少においがやわらぐのだ。
チーズを加熱しているときはくさいけど、生のままより加熱したチーズの方が口の中では臭気が広がらないのはこのため。
好きな人は生のままちびちびかじりながら一緒にワインを、ということなんだろうけど、ボクはやっぱり加熱してとろっとしたやつを熱々で食べるのが好きだなぁ。
お酒をあまり飲まないというのもあるけど(笑)

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