2015/02/14

あの聖人はどこへいった!?

2月14日と言えば、「ふんどしの日」。
じゃなくて、バレンタインデー。
日本では女子が気になる男子に告白する日みたいな感じだけど、本場(?)の欧米では、単に恋人たちの日として受け止められていて、男性から女性に花束を贈ったりとかの方が多いようなのだ。
チョコレートを贈るというのも製菓業界に躍らされている、という説もあるよね・・・。

諸説はあるけど、その起源で有名なのは、古代ローマでの聖バレンタイン(ウァレンティヌス)の伝説。
時のローマ皇帝クラウディウス2世は、ローマ兵士の士気が下がらないようにと兵士の結婚を禁止したんだけど、ウァレンティヌスはその命令に逆らい、兵士たちに結婚の秘蹟を授けた、というもの。
これにより帝国の怒りを買ったウァレンティヌスは、2月14日に処刑され、殉教するのだ・・・。
そこから、2月14日が聖ウァレンティヌスの祝日とされ、恋人たちの日として祝われるようになった。
と言うんだけど、これはどうも後付けの話で、まったくもって真実ではないようなのだ(笑)

そもそも3世紀のローマではキリスト教は迫害されていないし、ローマ皇帝が兵士の結婚を禁止した、という事実も確認できないのだ。
むしろ、皇帝は兵士長に結婚を奨めたみたいな話は残っているようなので、前提からしておかしいんだよね。
さらに、そのころの殉教した人の名前を探しても、ウァレンティヌスの名前は見つからないようなのだ・・・。
なぜか5世紀になると名前が登場し、そこから聖人として信仰されるようになるみたいなんだけど、それも「恋人たちの守護聖人」ではなく、むしろ「てんかんの守護聖人」といったものだったとか。
「恋人」と結びつけられたのは15世紀になってからで、イングランドの詩人、ジェフリー・チョーサーさんの創作からなんだって。
バレンタイン反対派のみなさんにはうれしいお知らせだね(笑)

日本人からわかりづらいのは、結婚が禁止されたときに、結婚の秘蹟を授けた、という部分。
キリスト教では、信者同士が結婚するときは、司祭が間に入って昇任となることが必要なのだ。
今でもキリスト教式の結婚式だと司祭の前で結婚の誓いを述べたりするけど、あれは本来は正式な宗教儀式なんだよね。
法制度としての戸籍がない時代だから、事実婚も内縁も何もないような気がするけど、キリスト教社会においては、教会に認められることが結婚の条件だったんだね。
一夫一婦制で不特定多数を対象とした姦淫を認めないキリスト教としては、特定のパートナーをオーソライズすることが必要だったんだろうね。
ちなみに、相手がキリスト教信者でない場合は秘蹟にならないので、司祭がいようがいまいが関係ないのだ。
ただし、キリスト教社会では正式に結婚したとは見なされないんだろうけど・・・。

話をもどして、バレンタインデーの起源なんだけど、すでに世界中に広まっている聖名祝日なんだけど、今ではカトリックの正式な祝日ではないのだ!
戦後にバチカンで聖人の整理が行われて、実在があやしい聖人は聖人暦から除外されてしまったのだ。
ウァレンティヌスはすべてがあやしいので、当然外されてしまい、今では教会とは関係ない世界で祝われているんだよ。
ウァレンティヌスの遺骸を保存している教会もあちらこちらにあるんだけど、すでに聖遺物ではないということなんだよね・・・。
ちなみに、西方教会では2月がウァレンティヌスの日なんだけど、東方教会では7月又は8月なんだって。
もちろん、恋人とかは関係なく、一殉教聖人ということみたい。

では、なぜ2月中旬にウァレンティヌスの祝日が設定されたか、が問題になるよね。
関連づけられているのは、古代ローマのルペルカリア祭。
結婚の女神ユノや豊穣の女神マイアを祭る豊穣と健康を祈る祭典なのだ。
これは、2月には立春があって、冬の終わりが見えて徐々にあたたかくなっていく、という季節であることに関連しているんだよね。
東洋の旧正月も同じ考えで2月を旧正月(新春)と設定しているけど、春の訪れを祝う季節なのだ。
(ちなみに、マイアは5月=Mayの、ユノは6月=Juneの語源だよ。どちらも春の女神なのだ!)
なので、ユノというよりは、むしろマイアが大事だったんじゃないかと思うんだよね。
結婚の女神も子孫繁栄という意味で広くは豊穣につながるんだけど。

で、この土俗の祭りをキリスト教に取り込むとき、この聖ウァレンティヌスが使われたと考えられるのだ。
クリスマスやハロウィンももともとはキリスト教徒は関係ないとこから取り込んだものだけど、同じだよね。
でも、元来のバレンタインデーはよくわからない祝日だったし、後に全く関係なかった恋人たちの日なんていう属性が与えられてしまったがために、カトリック教会も取り込んでおく必要性がなくなったんじゃないかな。
今となっては、キリスト教から離れた方が逆によかったのかもしれないけど。

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