2015/02/21

ビリっでニョキっ

たまたまた知ったんだけど、「ほだ木」に菌糸を植えるキノコの原木栽培をするとき、この原木に電気刺激を与えるとキノコの収量が増えるんだそうなんだよね。
もともと、雷が落ちるとキノコがよく採れる、という俗説があって、それを実際に模擬してみると、確かに収量が増えることがわかったんだそうだよ。
古代ギリシアでもすでに言及されているくらい古くから知られている話なんだとか。
今でもキノコ栽培で使われている技術で、「キノコ増産装置」の名前で電気パルスをかける機械もあるようなのだ。

このメカニズムの詳細は不明な点も多いようだけど、一般的には、キノコ=菌類の防衛本能ではないか、と考えられているんだ。
キノコはいわゆるカビである真菌類の作る「子実体」で、胞子をまき散らすことがその役割。
カビとしては網目状に菌糸体が広がっていくんだけど、風に乗せたり、無視に運ばせる形で物理的に遠く離れたところに胞子を移動させたいときに、菌糸が立体的に絡まって子実体が作られるのだ。
カビは徐々に広がっていくことはできるけど、そのままでは別の場所に移動できないので、生育環境の悪化などの要因で、「もはやこれまで・・・」となったら、胞子を遠くに飛ばし、そこで新たな菌生を始めるということなのだ。
落雷のショックがまさにその生存本能・防衛本能に火をつけているのではないか、というわけ。

当然、菌に生死の瀬戸際を感じさせるような刺激であればいいわけで、実は落雷だけじゃなくて、熱でも光でも、物理的な衝撃でもなんでもいいのだ。
いろいろと科学的に試した実験もあるけど、熱刺激や光刺激、物理的刺激等々で子実体形成が活性化されることがわかっているのだ。
原木栽培では電気パルス刺激なんかがやりやすいわけだけど、キノコ農家によっては、原木に菌糸を植えた後、55度のお湯につけてから乾かすとか(いわゆる「ヒートショック」)、原木を木槌で思い切りたたく(物理的衝撃)などの方法を使っている例もあるみたい。
熱刺激や光刺激を加えたときに菌糸の中でどういうタンパク質が増えるかとか見ている研究もあるようだけど、まだよくわからないみたいだね。

キノコの人工栽培は、欧州ではすでに16世紀には始まっていたようだけど、これは堆肥の上にマッシュルームをはやすもの。
シイタケなどの日本式の原木栽培は、江戸時代になって始まるのだ。
ただし、このときは、クヌギやナラなどの原木を伐採してきて、なたなどで傷つけたものを林の中に放置する、というもので、自然に胞子が付着し、そこからキノコが生えてくるのを待つ、というものだったみたい。
なので、必ずキノコが生えるわけでもなく、きっと、生育条件やそもそもの場所などのノウハウが大きくきいてくるものだったのだ。
種菌をあらかじめほだ木に接種して、というのはもっと時代が下ってからの話。

現在では、温度湿度を管理したり、雑菌が混入しないように無菌室のような栽培室で栽培したりと、栽培環境がこうじょうしているのだ。
さらに、ホクトの力が大きいけど、これまで人工栽培できなかったキノコの栽培条件がわかってきたり、場合によっては、そのままでは人工栽培できないキノコを、他のキノコと細胞レベルで融合させて栽培できるようにしたり、とさらに進化しているようだよ。
最終的には、マツタケをなんとかしたくて、シイタケやヒラタケと融合させて、ということを試行錯誤しているみたいだけど、天然物のマツタケの風味や食感が再現できないみたい。

ただ、かつては「見つけたら小躍りして喜ぶ」と言われたマイタケの人工栽培は実現しているから、そう遠くない将来に人工栽培マツタケも実現するかもだよね。
そのときに、この電気刺激だとか、熱刺激なんてのもきいてくるかもしれないのだ。
マツタケが自然界でどういうきっかけで生えてくるかが何となくわかれば、それを模擬すればいいわけだからね。
希少だからありがたいのかもしれないけど、安くておいしいマツタケが市場に出回るというのも魅力的だよね。

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