2015/04/11

南洋の親日国

天皇皇后両陛下が、ミクロネシアのパラオ共和国を御訪問されたのだ。
パラオというとどうしても第二次世界大戦(太平洋戦争)時のイメージがつきまとうけよね。
今回も、両陛下は、戦後70年目の節目に、激戦地となって多くの戦死者を出したパラオに「慰霊の旅」ととして訪問された、と報道されているよね。
ペリリュー島の戦いでは、日本軍はゲリラ作戦による組織的徹底抗戦で米軍に大きな被害も与えたんだけど、当然自軍の被害も甚大で、戦死者1万人超、捕虜200名強。
実は、米軍の占領後もゲリラ的に戦っていて、最後の生き残り34名が投稿したのは昭和22年(1977年)になったからなんだって。

そうしてどうしても先導のイメージがつきまとうのだけど、日本との関わりはそれ以前に遡るのだ。
もともとは19世紀の終わりにスペインの植民地になったんだけど、衰退の一途をたどっていたスペインはグアム島を除くスペイン領ミクロネシアを一括してドイツに売却・・・。
19世紀末にドイツの植民地となるのだ。
ドイツは植民地獲得競争で出遅れていたこともあって、ここを拠点とするべく、ココナッツやタピオカの栽培、鉱石の採掘など産業振興を進めたそうだよ。
ただし、ドイツ式の植民地経営なので、このときには現地の水道や道路などのインフラ整備はほとんどなく、かつ、現地民への教育もほとんど行われなかったとか。

転機が来るのは第一次世界大戦の後。
英米とともに連合国軍に加わった日本が海軍を派遣し、ミクロネシアのドイツ軍を降伏させ、占領下に置いたのだ。
第一次世界大戦の戦後処理をするパリ講和条約により、パラオはドイツの植民地を脱し、日本の委任統治領になったんだ。
ここで日本の関わりが強くなっていくわけ。
旧首都のコロール(現在でもパラオ最大の都市)に「南洋庁」及び「南洋西部支庁(パラオ支庁)」が置かれ、周辺の植民地経営の中心地として栄えていくのだ。
日本からの移民も増え、パラオ支庁管内では住民の4人に3人が日本人だったそうだよ。

日本の統治が始まると、ドイツ時代とは打って変わってインフラの整備が進み、水道や道路のみならず、学校や病院なども作られていったんだ。
その結果、コロールは一気に近代的な都市に変貌していったそうだよ。
日本語による現地人への学校教育も開始され(ただし、日本人学校とは別)、今でもその名残で日本語を解する現地の方も多くいるみたい。
日本語由来の言葉も残っていて、有名なものでは、扇風機や電話はそのまま「センプウキ」、「デンワ」、ビールは「ツカレナオス」、おいしいは「アジダイジョウブ」、混乱するは「アタマグルグル」などなど。
第二次世界大戦までの委任統治時代の好印象が今でも残っていて、ミクロネシアで最大の親日国と言われているんだよね。

日本が国際連盟を脱退後も、パリ講和条約に基づく委任統治だということで日本の統治が続くんだけど、国際連盟を抜けたために「軍事施設を委任統治領に置いてはならない」という制約が外れ、海軍施設が作られるんだよね。
これが太平洋戦争で攻撃の対象となってしまうのだ・・・。
一部の現地民は軍属として従軍したこともあったようだけど、基本的にはペリリューの戦いでもパラオ民間人の支社は出ておらず、他省の反感はあっても、日本への嫌悪感のようなものは生まれなかったんだって。
なので、今でも親日が続いているのだ。

戦後は国際連合の委託を受け、米国の信任統治下に置かれることとなったのだ。
米国は教育や健康福祉には支援をするんだけど、基本的に産業振興はしなかったので、現在の主要産業が観光になっているんだよね。
食糧や燃料などでパラオの財政はかなりの入超になっているみたい。
しかも、米国との間の自由連合盟約(コンパクト)と呼ばれる協定を結んでいて、パラオは米国に財政支援を受ける一方で自らは軍隊を持たず、国防と安全保障を米国に委ねているんだ。
日米安保だと日本はお金を払っているんだけどね・・・。
当初のコンパクトでは米国の財政支援は平成21年までだったんだけど、改訂コンパクトが署名され、さらに平成22年から平成37年までの15年間の財政支援が決まったのだ。
で、けっきょく経済面ではずっと米国に依存する体制が残ってしまっているんだよね。
国としては自立しているんだけど、実際上は米国の強い影響下にあるのだ。

でもでも、先に紹介したように日本語由来の現地語も残っているし、現在のパラオの人口で見ても日系が25%ほどいるくらいで、日本に極めて好意的な国でもあるんだよね。
国旗も青字に黄色の丸で、版倉でっしゅと同じような日の丸方式の国旗になっているのだ!
今回は両陛下の御訪問に当たって更に互いの行き来が活性化しているみたいだし、できるだけ良好な関係を維持したいよね。
そのためにも、戦争の負の歴史も含めて、もっとパラオのことを知る必要があるんだろうなぁ。

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