2015/09/19

神出鬼没の赤い花

この前散歩しているときにヒガンバナを見たのだ。
もともと今年は残暑をあまり感じなかったし、めっきり秋っぽくなってきたけど、ヒガンバナを見るともう彼岸かぁ、と思うよね。
季節を感じさせる花のひとつなのだ。
ボクは割ときれいな花だなと思うけど、それ以上に、この花はその妖しさから忌避する向きもあるんだよね。

その大きな原因は、いきなり茎が伸びてきて花だけが咲くからだと思うんだよね。
そのために「幽霊花」なんて名前もあるし。
芽が出て、葉が増えて、やがて花が咲く、という一連の流れが見えず、いきなり花だけ出てくるので気持ち悪く感じるのだ。
確かに、この植物に特有の大きな特徴ではあるんだけどね。

これはボクもよく知らなかったし、実際に見ていても気づかなかったんだけど、花が終わって、茎も枯れた後に、細い葉が放射状に広がってくるんだって。
秋から冬にかけて葉が広がり、春には枯れて地上にはまた何もなくなるのだ・・・。
そして、秋口にまたいきなり茎が出てきて花が咲く。
ヒガンバナはデンプン質を多く含む鱗茎があるので、春~夏に葉で光合成をしなくても、秋~冬にためた栄養で花を咲かせられるんだよね。

ヒガンバナの妖しさは、その鮮やかな赤い色と特徴的な花の形もあるんだけど、この鱗茎には独があるというのも一役買っていると思うんだよね。
リコリンなどの有毒なアルカロイドを含んでいて、食べると嘔吐や下痢を引き起こし、場合によっては中枢神経が麻痺して死に至る場合も・・・。
その毒の効果を狙ってあぜ道に人為的に植えられたとも考えられるんだよね。
ネズミやモグラ、虫などの田を荒らす動物が独を嫌って近づいてこなくなる、というわけ。
墓場にも植えられるけど、これは土葬していた時代の名残で、動物が埋葬した死体を暴いて食べたりしないように、ということのようなのだ。

ただし、この有毒成分は水溶性なので、長時間水にさらすと抜くことができるんだって。
実際に太平洋戦争中は食べていたこともあったらしいよ。
ちなみに、この鱗茎は生薬の一つでもあって、むかしから使われていたようだよ。
有毒なものなので民間療法で使うには危険なんだけど。
もしどうしてもという場合は、必ず長時間水にさらした方がよいのだ。

このヒガンバナ、どうも日本には人為的に持ち込まれた帰化植物みたいなんだよね。
というのも、日本全国で見られるヒガンバナはすべてクローンで、遺伝情報が同じなのだ!
つまり、一株のヒガンバナが増やされて広まっていったということ。
北海道から沖縄まで分布しているのに、たったひとつの鱗茎から始まったのだ。
触れたように、農作物を荒らす動物への対抗手段として田のあぜ道なんかに植えられたので、そういう有用性が評価されていたんだね。
なお、日本のヒガンバナは三倍体になっているので、もともと種子では増えないんだって。

でも、そうなると気になるのは、山の中とか、人の住んだ形跡がないところにもヒガンバナが咲いていること。
でも、誰かが植えない限りは勝手に生えてくるわけではないので、かつてはそこに田や墓場など、人が暮らしていた形跡があると言うことなんだよね。
なんらかの形で鱗茎が山中などに持ち込まれた可能性もあるけど、そういう目で見てみると、人の住んだ形跡が発見できるかも。
今度思わぬところで見かけたら、よく観察してみようっと。

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