2015/09/05

バスでつなぐ

最近知ったんだけど、東日本大震災で被災した東北の鉄道路線はほぼ復旧はしているものの、一部は「仮復旧」なのだ。
この仮復旧というのが何を指すのかというと、鉄道ではなく、バスで代行輸送をしているんだよね。
JR東日本のウェブサイトにあるにくわしいんだけど、具体的には、気仙沼を起点とする気仙沼線と大船渡線の2路線なのだ。
もともと線路がかなり海岸沿いにあったので、本格復旧をするにはもっと山側の高台に線路を敷設し直す必要があるんだよね・・・。
でも、正直この路線は赤字路線なので、JR東日本としても大きな投資をして線路を敷設し直すことには難色を示しているのだ。
地元も相応の負担をしてくれたら、というのが鉄道会社の見方だけど、被災地域は他にも復興需要があってそこまで手が回らないのも事実。

一方、鉄道事業者であるJR東日本は公益事業体なので、勝手に赤字路線を廃線にできるわけでもないんだよね。
あくまでもその公共サービスの享受者である地元の合意が必要なのだ(>o<)
なので、なんらかの形で輸送サービスを提供する必要が出てくるわけ。
そこで登場するのが、バスによる代行輸送という考え方。
臨時で運転見合わせになった場合や、短期の工事で運休する場合もバスでの振替輸送が行われるけど、今回の場合は、もともと鉄道路線だったものをバス路線に代えて復旧させるという措置なんだよね。
新たに線路敷設をしない限りはバスでの輸送サービスの提供になるのだ。

ここで使われているのはただのバスではなくて、バス高速輸送サービス(BRT)と呼ばれるものなんだよね。
バスだと道路の混雑状況によって定時性(時刻表どおりに運行できること)の確保が難しくなるんだよね。
かつ、一般道を走らせる場合はそんなに多くの本数を出せないので、輸送力にも限界があるのだ。
これを一部解消して、バスの短所を補っているのがBRTという交通システムなんだ。
具体的には、バス専用のレーン又はバス優先道路で運行させ、道路や交差点で他の車両の影響を受けづらくするのだ。
かつ、専用のプラットフォーム(駅)を用意して、車外で料金徴収を行うことで乗降をスムーズにしているんだ。
後払いでも先払いでも、バスだと運賃の支払いで列ができることがあって、出発できなくなるからね。
また、駅があると、乗降口と路面の段差を解消できるので、ノンステップになるのだ!

このあたりは路面電車のような軌道交通で解決されているんだけど、線路や軌道を敷設することなく提供できるところに大きなメリットがあるのだ。
線路や軌道は敷設だけでなくてメンテナンスにも多大なコストがかかるんだよね。
また、基本的には道路を走るだけなので、専用道路や優先道路が設定できれば、路線変更も用意なのだ。
今回の仮復旧でもここが大きくメリットになっていて、とりあえず前に線路が敷設されていたところに専用レーンを整備して、既存の駅を活用しながらバスを走らせているんだけど、有事の際はそこから一般道に出て避難でもできるのだ。
なので、起こるかどうかがわからない自然災害に備えて新たに線路や軌道を切り開く必要もなく、比較的安価な投資で復旧できるんだよね。
地元としても、高めの要求ばかりでことが動かなくてスタックするよりは、とりあえず「仮復旧」ということで今回の措置を受け入れているのだ。
今回は元線路だったところを専用レーンにしてバスを走らせるので、基本的には鉄道と同じようにほぼ時刻表どおりに運行できるはずなんだよね。
輸送力は落ちる可能性はあるけど、もともと赤字路線なので、すし詰めになるような事態もあまり想定されないのだ。

ところが、人の輸送はそれでいいとしても、このバスによる振替では貨物の輸送は代行できないんだよね・・・。
基本的には貨物営業はすでに廃止していたみたいだけど(基本は東北本線と常磐線が使われているのだ。)、まさに復興需要で物入りのときこそ、鉄道で大量に物資が輸送できるとメリットが大きいんだけどね。
JR貨物の場合、自分で持っている線路で走らせるのと、他の事業者(例えばJR東日本など)が持っている線路を走らせるのとで2通りの事業形態があるんだけど、仮に貨物輸送の観点でこの路線が特に重要だ、となると、JR貨物で整備することになるのだ(JR東日本はすでに人の輸送だけならBRTでいいと判断しているわけだからね。)。
ま、そこまでの需要はやっぱり見込めないんだろうなぁ。
地元としては鉄道路線の復活を望む声もあるようだけど。

ちなみに、このBRTというのは比較的安価コストで短期間に整備できる交通システムとして注目されていて、2020年の東京五輪の「足」としても計画があるみたいだよ。
ライトレールで路面電車を整備するのもあるけど、一度軌道を敷設してしまうと恒常的なものになってしまうので、まさにオリンピック特需のためだけに新交通システムを臨時で導入する、という場合はBRTの方が優れているんだよね。
今度のオリンピックでは臨海副都心が中心になるけど、東京駅などの都心部からのアクセスをよくする必要があるし、もともと勝どきとか晴海のあたりは交通の便がよくないところがあるので、その解消も含めて東京都が計画しているのだ。
実は、このあたりはもともと都電が縦横無尽に走っていたんだけど、自動車が増えたことで都電が廃止されていった経緯があるんだよね。
当時は地下鉄に振り返るとともに、地下鉄が通せないところは路線バスで対応ということになっていたんだけど、それがまたBRTという形で復活するかもしれないのだ。

0 件のコメント: