2015/12/12

五年の紆余曲折

日本の金星探査機「あかつき」が、5年遅れで金星を周回する軌道に投入されたのだ!
実は、打ち上げ当時、メインスラスタの不具合により軌道投入に失敗していたんだよね・・・。
その後、人工惑星として、金星の内側を回る楕円軌道で太陽の周りを公転していたのだ。
ところが、このあかつきの軌道は、金星よりちょっとだけ早い周期で好転しているんだけど、楕円軌道なので、ちょっとだけ金星の軌道の外側を通るところがあるんだよね。
この外側を通過するタイミングでは、金星より速度が遅くなるので、一度周回遅れにした金星が近づいて来るのだ。
で、この外側を通るタイミングで金星がごくごく近傍に来たのが、今週の7日のタイミング。
金星が追いついたと同時に、「あかつき」を減速させてあげると、金星の周りを回る軌道に移れる、というものなのだ。
そのタイミングを合わせるために、何度か細かい軌道修正をしつつ、5年の歳月を待ったんだよね。

この「あかつき」、プロジェクト名はPLANET-Cというんだけど、Cがあるから、AもBもあるわけ。
PLANET-Aはハレー彗星を観測しに行った「すいせい」。
先行して打ち上げられていた「さきがけ」とともに、無事に欧米と共同のハレー彗星観測ミッションを遂行したのだ。
その次のPLANET-Bが火星探査機「のぞみ」。
「のぞみ」も火星への軌道投入がうまくいかず、さんざんあがいたのだけど、最終的には火星への軌道投入を断念し、火星近傍を通過して終わったのだ・・・。
でも、このときの経験が、後の小惑星探査機「はやぶさ」の運用に貢献しているんだよね。
そして、もちろん、今回の「あかつき」の5年遅れの軌道投入成功にもこの経験が活きているのだ。

「あかつき」のメインスラスタは耐熱性に優れたセラミック製だったんだけど、これは宇宙探査機には初搭載のものだったんだよね。
それがうまくいかなかったのだ(>o<)
でも、「はやぶさ」の運用でかつてやったのと同様に、姿勢制御用のスラスタを最大限駆使して、徐々に徐々に軌道を制御して、軌道を修正していったのだ。
その集大成として、7日に20分間のスラスタ噴射を行い、無事に金星周回軌道までたどり着いたわけ。
このためには膨大な量の軌道計算が必要で、綱渡りの探査機のコントロールが必要だったのだ。
新聞などの報道でも、軌道計算をした女性研究者が取り上げられているよね。

今回投入した金星周回軌道は、高度300kmから80,000kmの高度で30時間周期で金星を周回する楕円軌道。
かなりつぶれた楕円だけど、金星の気象観測などを目的としている「あかつき」は、様々なデータをとりたいので、高度が大きく変わる楕円軌道からいろんな観測をしようというわけなのだ。
金星には多くの探査機を遅れないからね。
当初計画では、欧州の金星探査機がほぼ同時期にいたので、共同観測もできたはずなんだけど・・・。

とりあえず軌道投入は無事に終わって、調べている限りでは観測機器も大丈夫そうなんだけど、ここから2年間の観測がしっかりできるかどうかには不安があるのだ。
金星は地球より太陽に近いだけあって熱条件が厳しくて、太陽光を浴びている間は超高温になり、惑星などの影に入るとものすごく冷えるのだ・・・。
5年間金星のほぼ内側で太陽の周りを公転していたんだけど、この間にもかなり厳しい熱条件にさらされていたので、不安が残るんだよね。
一番耐熱性が高い面を太陽に向けていたらしいけど。

何はともあれ、金星の観測はできそうなので、活きている観測機器を最大限活用してデータをとるしかないのだ!
一度の失敗を乗り越えて、5年の臥薪嘗胆の末に金星までたどり着いて美談になっているわけだけど、やっぱり観測できてなんぼの世界だからね。
先行して取得されている欧州のデータと合わせて、なぜ地球には水と生命があるのに金星や火星には水も生命もないのか?、などの疑問の解明に貢献することが期待されるのだ。
前進日焼けして疲労困憊の状態だろうけど、無事に金星観測ミッションも成功させてもらいたいものなのだ。

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