2015/12/05

ドライなやつら

季節が冬に移り変わってきた!
どんどん寒くなってきているよね・・・。
でも、この時期にも少ないながら楽しみはあるんだよね。
それが干し柿。
子供の頃から好きなんだよねぇ。
もちろん、生のまま食べる柿もよいのだけど、干し柿には干し柿のよさがあるのだ。

日本でドライフルーツと言えばなんと言っても干し柿が筆頭で、あとはレーズンやら干し杏、ドライマンゴーが思い浮かぶくらい。
でも、海外では、干しイチジクがもっともメジャーなのだ!
なんと言っても、ローマ帝国時代に世界展開されているという歴史だからね。
中東が原産と考えられていて、すでに古代メソポタミアの時代に栽培記録があるという、世界最古の栽培品種なんだよ。
生食ももちろんするけど、乾燥させることで保存性が高くなり、ねっとりとした独特の甘さもあって、古代から愛好されてきたのだ。

レーズン(干しぶどう)もそうなんだけど、欧州や西アジアはかなり乾燥した気候なので、熟した果実を収穫しないでそのまま放っておいても腐ることなく「ドライフルーツ」化することがあるんだよね。
おそらく、それをたまたま目にして、食べてみて、加工するようになったと考えられているのだ。
干して水分を抜くことで、保存性を高め、甘みが濃くなるのだ。
プルーン(セイヨウスモモ)やクランベリーのように、生のままだと酸味が強すぎるものも、干すことで甘みが凝縮され、おいしく食べられるようになるんだよね。
デーツ(ナツメヤシ)のように、基本的に乾燥させてから食べるものもあるのだ。

これは東アジアの干し柿とは全く異なるんだよね。
おそらく発見は同じようにたまたま木になったままの状態で乾燥しているのを食べてみた、ということなんだろうけど、干し柿の場合は、食べるために乾燥させているのだ。
すなわち、干し柿にするのは基本は渋柿。
生では渋くて食べられないものを、乾燥させるという加工によって食べられるようにしているのだ。
この柿渋の正体は水溶性タンニンなので、これは不溶性タンニンに替えられれば「渋抜き」ができるわけで、焼酎に漬けたりしてもいいわけだけど、誰でも簡便にできるのが乾燥して干し柿にすることだったのだ。

ただし、東アジアで気をつけないといけないのは湿気。
湿度が高いので、気をつけないと腐ってしまうのだ・・・。
なので、雨に濡れないように、でも、風通しがいいように、軒先につるす、というのが日本の伝統的な干し柿の製法だよね。
さらに、ある程度水分が残った「ソフト」な状態で食べるために、半乾きのものを硫黄で燻蒸して腐敗しないようにする工夫も生まれたのだ。
これが「あんぽ柿」だよ。

西洋のドライフルーツの場合は、保存性を高め、水分を抜くことで軽量化して流通しやすくする、というのが基本。
ジャムにしてもよいのだけど、むかしは砂糖は貴重品だったわけだし、何より、ジャムだと水分が多くて重いので、流通には向かないのだ。
乾燥した気候で簡単に乾燥させられるので、ドライフルーツというのは作られるべくして作られた加工食品なわけだよね。
古くは中東から欧州まで陸路で運ばれ、後には大航海時代に貴重な食料として世界に運ばれたのだ。

中国の場合は、シルクロードを通じて西側のドライフルーツもあったし、独自の文化としての干し柿やクコの実などのドライフルーツもあったわけ。
ちなみに、中国の干し柿は丸くつぶれていてかぴかぴに硬いみたい。
つるすのではなくて、籠に並べて押しつぶしながら日干しにするからみたい。
できあがった干し柿は「柿餅」と呼ばれるのだけど、中国では円盤状に加工された食品を「餅」と呼ぶようなのだ。
さらに、サンザシのように、果実をすりつぶして砂糖や寒天と混ぜて棒状に固めたものまであるのだ。
サンザシの場合も円柱状に固めて十円玉大に輪切りにしたものは「山査子餅」と言うらしいよ。

現代では季節を問わずにいろんな野菜や果物が手に入るけど、むかしは乾燥させる、漬け物にするなどの加工食品にしたり、室の中や土の下で保存するなどの工夫で乗り切っていたんだよね。
でも、そうした工夫の中に、おいしく食べるこつみたいなのもあって、それは料理として今も生きているのだ。
こういう先人の知恵には驚かされることが多いし、いかに人類が生きるために、食べるために工夫を重ねてきたかがわかっておもしろいのだ。

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