2016/06/11

煙にまく?

日本の研究グループに命名権が付与されていた113番元素について、国際純正・応用化学連合(IUPAC)は、日本から提案していたニホニウム(Nh)という名称・記号の案で意見公募を開始したのだ。
5ヶ月間も意見を求めるらしいけど、よほどのコメントがない限りはそのまま決まるそうで。
でも、この名前の場合はちょっと危ないような・・・。
3月中旬に提案が行われてからやっとオープンになったわけだけど、わかってしまうと、まあそうだよね、というネーミングではあるよね(笑)

で、この113番元素の名前についてはいろんな予想がされていたんだよね。
新聞報道等で人気があったのは「ジャパニウム」。
日本で初めて、世界で二番目にサイクロトロンを作った仁科芳雄博士にちなんだ「ニシナニウム」なんてのもあったのだ。
でもでも、その中にまったくわからない名前が。
これは科学誌Natureの関連のブログの中の予想にあった名前なんだけど、「Enenraium」というもの。
中身を読んでみると、妖怪の「煙煙羅」にちなんでいるんだって。
って、なんで!?
正直、エントリーの理由は不明なんだけど、機械的につけられる仮称が「ウンウントリウム」だったので、音が似ているというので選ばれたんじゃないか、と予測している人はいるよ。

この「煙煙羅」という妖怪は、字の表すとおり煙の妖怪で、江戸時代の画師・鳥山石燕さんによる「今昔百鬼拾遺」という作品の中に出てくるのだ。
実は、これ意外に伝承などが残っていないので、鳥山石燕さんの創作妖怪と考えられているよ。
蚊遣り火の煙がくすぶりゆらゆらゆれていて、怪しい形をなすことがある、それが羅(うすもの)が風にたなびくように見えるので、「煙煙羅」と名付けたか、といった旨のキャプションがあるんだ。
雲でもそうだけど、じっと見ていると何かの形に見えてくることはあるよね。
きっとそういう感覚が反映されたものなのだ。

これだけなので、怪しく見える、という意外に特徴がないわけ。
なので、113番元素とはほぼ関係はないはず。
実態はつかめないけど何かある、という点では、10年で3個しか作ることができなかった113番元素につながる部分はあるけど(笑)
でも、この妖怪との並びだったら、怪しく見えるけど、それはそう見えているだけ,と言うことになっちゃうから、113番元素は幻になっちゃうね・・・。
だとすれば、名前としてあまりふさわしくないね。

また、煙っていうのは、燃え残ったものや燃えにくかったものが燃焼時に発生する熱に煽られてエアロゾルとして浮遊しているものなんだよね。
黒や灰色に見えている色は、エアロゾルとして浮遊している「すす」によるものなのだ。
「すす」だけなら汚れがつく程度なんだけど、場合によっては、その中に一酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物、金属酸化物なんかの有害なものも入っている場合があるので、注意が必要だよ。
「煙煙羅」のもと(?)の蚊遣り火は、ヨモギの葉や松・杉・榧の青葉を火にくべてけぶらせるもので、今で言う蚊取り線香に近いんだけど、殺虫成分が入っているわけではなく、あくまでも煙で虫を追い払うものなのだ。
植物中の精油成分などが含まれるので、通常の煙に比べて目にしみたりすることはあるけど。
そういう意味では、ごくごくありふれた「すす」の中に、微量に何か性質の違うものが紛れ込んでいて、という状況は、113番元素を作っている時に似ているかもね。

まあ、煙煙羅について調べてみても、やっぱり名称として提案される理由はわからないね(笑)
そういうのがあってもいいかもだけど、さすがに日本発、アジア初の元素名でそれはないよなぁ。
じゃ、もう一個命名権がとれたら候補に入れるということで!

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