2016/10/15

鳥みたいなもの?

フランスのレストランに行くと、いちいち名前がわからないので、辞書を引きながらそれが何の材料を使った料理なのか調べるんだよね。
幸いにして、「○○を××した~~」とか説明口調の料理名が並んでいるので、これで十分(笑)
でもでも、やっぱり食材の違いがあるんだよねぇ。
魚介類なんかはむしろ日本よりは種類が少ないけど、肉類は日本より種類が豊富なのだ!
さすがは肉食の肉。

よく目にするのは、カモ、ウズラ、ハト、イノシシ、シカ、ウマ、そしてウサギ!
そう、フランス人はけっこうウサギを食べるのだ。
しかも、ウサギを伝統的に食べ続けてきただけあって、日本にはない種類分けもあるんだ。
すなわち、養殖物か、天然物か。
日本の場合だとブリとかがそうだよね。

フランス語では、養殖物のウサギ肉は「lapin(ラパン)」、天然物(ジビエ)のウサギ肉は「Lièvre(リエーブル)」と明確に区別されていて、ジビエは狩猟の季節にしか食べられない貴重なもの。
普段から食べるのはラパンの方だよ。
普通にソテーしたりもするんだけど、粘着性の高い肉質なので、ソーセージなどの加工食品の結着剤なんかにも使われるようなのだ。
背中から腿にかけての肉が食べられるほか、内臓も食べるみたい。
と言っても、大きくはないから、あまり食べるところはないんだよね。

実は日本もむかしはよくウサギを食べていたのだ。
誰でも聞いたことがあることだけど、ウサギを一羽、二羽と数えるのは、仏教的思想から肉食が厳禁だった時代に、ウサギは鳥の一種だから食べてよい、というロジックに基づいているんだよね。
つまり、その頃はウサギを貴重な動物性タンパク源として食べていたのだ。
でも、このとき食べていたのは、フランスで食べられているウサギとはちょっと違うんだ。

欧米で食べられているウサギはアナウサギ。
いわゆるラビット(rabbit)という種類で、耳が長いタイプのウサギなのだ。
でも、このラビットが日本に入ってきたのは16世紀前半というから、戦国時代より少し前。
オランダ人がペットとして持ち込んだと言われているみたい。
ペットとしてのウサギが飼われるようになるのは近世に入ってから、江戸時代中期のことのようなのだ。
でも、それ以前にもウサギを食べていたはず・・・。

そう、縄文時代から日本人が食べていたウサギは、ヘア(hare)、つまりノウサギの方。
耳が比較的短いウサギだよ。
待ちぼうけ♪の歌で、木の根っこで転んだウサギはこっちのノウサギであったはずなのだ。
海外から輸入されたアナウサギはペット用、むかしから日本にいるノウサギは食用というわけ。
並べてみるとけっこう違うからね。

明治になると、耳の長い外国ウサギのブームが来て、ジャパニーズ・ホワイトと呼ばれる品種も日本で生まれたのだ(いわゆる赤い目の白いウサギだよ。)。
当時は「南京兎」なんて呼んでいたんだよね。
そのブームの少し後、明治中期になると、食肉と毛皮用に農家が副業でウサギを飼育するようになり、かなり盛んだったようなのだ。
ウサギは軍事物質としても利用され、肉は兵站(レーション)に、毛皮は防寒具になったみたい。
今では家畜としてウサギが飼われているってあまり想像できないよね・・・。

戦後になると、家畜としてのウサギ飼育は衰退していって、手間のあまりかからない、しかも、鳴かないペットとして普及することになるのだ。
耳のたれたロップイヤーだとか、小さな個体のウサギを交配させて作ったミニウサギなんてのがあるよね。
情操教育の一環といって学校でもよく飼育されていたのだ。
そうなると、だんだんと食材としては見なくなるんだよね。
つい数十年前は食べていたはずなのに・・・。

というわけで、ウサギ肉を食べること自体は日本でも普通にしていたことなのだ。
本場フランスでも、ウサギ肉の料理は伝統料理で、あまり食べられなくなってきているというから、いつか同じようになってしまうかも。
でも、ジビエは珍重されているので、そっちの線では残るかな。
日本人が旬の魚や野菜・果物をありがたがるように、フランス人は狩猟時期のジビエをことさら愛しているみたいだから。

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