2016/10/22

冬の果物

フランスのスーパーで、オレンジ色の小さな果物を見かけるようになったのだ。
米国では日本のみかんが「サツマ・オレンジ(カリフォルニア産)」として売られていたので、フランスにもあるのかな、と思って近づいてみると・・・。
それはみんかんではなく、クレメンタイン!
フランス語の発音だと、クレモンティーヌ(この表記だと、日本では歌手の名前の方がメジャーかな?)。
クレメンタインは欧州産のマンダリンオレンジで、タンジェリンと植物学分類上は同一種。
栽培品種としては、より色が濃い(オレンジ~赤)がタンジェリンで、より色が薄い(黄~オレンジ)がクレメンタインだって。
どちらも皮が手でむきやすく、ほどよい酸味と高い糖度で生食に適しているのだ!
日本のみかんに比べると、果汁の量は変わらないけど、袋の皮が薄いのでよりジューシーに感じるよ。
味も日本のものより少し酸味が強く、さっぱりした感じかな。

もともとミカン類はインドのアッサム地方が原産と言われていて、それが東洋と西洋に伝播しているのだ。
東洋に渡ったのが日本の温州みかん(ウンシュウミカン)で、中国経由。
中国のものは「橘」とか「桔」と呼ばれるけど、いわゆるマンダリン・オレンジなのだ。
マンダリンというのは、中国清朝の官吏のことで、当時紫禁城では官吏は濃いオレンジ色の服を身につけていたのでそう呼ばれるようになったみたい。
一方、中東を経て地中海沿岸に渡ったのが地中海マンダリン。
品種改良がなされて、クレメンタインやタンジェリンになるのだ。
タンジェリンの名称はタンジール人(モロッコ人)から来ているそうで、北アフリカで生まれたことがわかるのだ。

クレメンタインについては、諸説はあるようだけど、1906年にアルジェリアのクレマン神父が地中海マンダリンとスイートオレンジを交雑させて作ったと言われているのだ。
この神父さんの名前が取られているというわけ。
基本的にあたたかい地方で育つものなので、フランスで流通しているのは、北アフリカやスペインのもの。
ボクが食べたのはスペイン産だったよ。

フランスでは、オレンジは主にジュースやマーマレードなどの加工食品にするのが一般的なようだけど、このクレメンタインは皮が簡単にむけることもあって、日本のみかんのようにテーブルに置いておいて生で食べるみたい。
日本のみかん同様、ほぼ種がないというのも生で食べられることが多い理由の一つ。
やはりビタミンCが豊富で、どんどん寒くなる秋口に出始めるので、風邪の予防で食べられるようなのだ。
これはこたつの上に置いてあってもまったく違和感がないね(笑)

ちなみに、今ではおなじみの温州みかんは、実は江戸後期から明治になって普及したんだって。
紀伊国屋文左衛門さんが江戸に運んで大もうけしたのは紀州みかん(キシュウミカン)というやつで、中国浙江省から伝来した小さいミカンを日本で改良した品種。
かつては「高田(こうだ)みかん」と呼ばれていたのだ。。
温州みかんは種がないので、武士社会では縁起が悪いとされていたようなんだけど、栽培の利便性や食べやすさから広まることになったんだって。
でも、伝統的に日本で食べられてきたのは、タチバナの系統を引くキシュウミカンなので、こっちが「ホンミカン」らしいのだ。
朝廷にも献上されていたんだそうだけど、今では温州みかんに押されてしまってまず見ないんだよね。

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