2017/12/16

後ろから、前から、どうぞ

ボクもニュースで知っているだけなんだけど、最近の小学校の算数の授業では、「かけ算」の順番にうるさいらしいね。
なんでも、「5×2」と「2×5」は意味が違うので、文章題では、答えである「10」を導き出すのに、どちらの計算法を使ったかで○×が変わるんだって!
っていうか、意味不明なんでけど・・・。
自分が小学校のころはどうだったかなぁ?

曰く、その理由は、「かけ算の順番には意味があるから」なんだって。
例えば、「2人にリンゴを5つずつ配る場合、リンゴはいくつ必要か?」という問題があった場合、リンゴ5つのセットが2人分なので、5×2=10にしないとダメなんだって。
2×5では同じ答えになっても×なんだそう。
え!?、って思うよね。

というのも、実際の日常生活では、2人に5つずつリンゴを配る場合、5個のセットを2人に1セットずつ配る場合もあれば、2つとって一人に1つずつ渡すのを5セットやって配る場合もあるよね。
っていうか、けっこう後者のやり方をする場合が多いんじゃないかな?
でも、この後者の場合だと、計算方法は2×5だよね。
だとすると、2×5でも間違いではないはずなのだ!

これは数学的には当たり前で、自然数、整数、有理数(分数で表せるもの)、無理数(平方根や円周率のように無限に小数点以下の数字が続くもの)、複素数(虚数iが入ったもの)に至るまで、足し算(加算)とかけ算(乗算)については、「交換法則」が保存されているのだ。
「交換法則」とかいうと難しそうだけど、ようは、「+」と「×」の前後を入れ替えても答えは同じになる、ということ。
5に2を加えるのも、2に5を加えるのも数学的には同じ。
同様に、5に2をかけるのも、2に5をかけるのも数学的には同じ、なのだ。
「かけ算の順序には意味がある」とか言われも、さっきのように配り方次第ではかけ算の順序が変わることもあるわけで、ほとんど意味がないんじゃないかなぁ、と思うんだよね。

前後を入れ替えても答えが同じになるというのはその後の数学ではけっこう重要なことで、複雑な足し算・かけ算をするときに、計算しやすいように並べ替えたりできるのはこのおかげ。
さらに、中学校に入って文字式が出てくると、a×bとb×aが同じであると理解できないと、(a+b)×(a+b)=a+2ab+bという展開ができなくなるのだ。
下手に「かけ算の順番に意味がある」なんて染みこませちゃうと、ここでa×bとb×aが同じであるということを改めて説明しないといけなくなるんだよね・・・。
かえって面倒なような気もするんだけど。

高等数学になって行列の計算が出てくると、そこではじめて乗算について交換法則が保存されなくなるんだよね。
それを先取りしているんだ!、とか言うのかもしれないけど、多くの人は行列の計算なんてしないわけで・・・。
むしろ、これまでの数学では一般的に成り立ってきた乗算の交換法則が行列では成り立たない、と教えて方がわかりやすいとも思うのだ。
実際に、ボクが教わったときはそうだったし。
ま、行列のかけ算なんてもはやイメージできないんだけど(笑)

それにしても、もうちょっと柔軟に教えられないものなのかなぁ、とは思うよ。
こういう教え方をしちゃうと、型にはまった頭になっちゃって、形式が整ったテストには回答できるけど、現実の課題に算数・数学を応用する力は衰えるような気がするんだよね。
むしろ、さっきのリンゴの例みたいな話をしながら、かけ算の場合は、前後を入れ替えても意味が同じ、というような説明をした方が、子どもたちの興味も引けると思うんだけど。

0 件のコメント: